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緑の拳士~ゴブリンハーフは魔法が使えない~  作者: ハンドレットエレファント


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245/256

245.古文書とヴァレリアと約束と

「選べ」

魔法障壁の展開に脳すら焼き切れそうな状況に陥っていたヴァレリアの前に、突如としてそれは現れた


これは少し前……神代王がヴァレリアとエタノーの街を見捨てるばかりか囮に使った直後の出来事


もはや放出する魔力の一欠けらもまともに残っておらず、意識を飛ばしながらその椅子にしがみつくヴァレリアの前に

黒づくめの男が何か大きなズタ袋を担いで立っていた



『し、死神……? 格好といいベタすぎだろ……』


ヴァレリアはかすむ視界でその男を眺めながらそんなことを思い、命がとうとう事切れる時はこんなものが見えるのかと変な関心をしていた


「エタノーの大将殿、時間がないのだろう? 選べ このまま死ぬか私に力を借りた上で私の望む物を与えるか」

「お、お前誰だよ……! 死神に知り合いはいな……いぞ……!」

「死神ではない、私は神の子 我が神以外に神を持たぬ」



命と街が消し飛びそうな緊急事態など知った事ではないかのようにその男は淡々と会話を繰り広げる

そんな事を言っている間にも障壁は削り落ち、今にも消失しそうだというに……!


この男が何かをしようと、若しくはしでかそうとしてもこの状況に変化はないとヴァレリアは頭を沸騰させながら考えた

今更コイツが何かを企んだところでこの力は街を呑みこみ、血みどろの戦闘は街を完膚なきまでに叩き壊すだろう 


『最後くらい……都合のいい、今際の夢に浸るくらいは許されるか……』


ヴァレリアはそんなことを思いながら、今にも立たれてしまいそうな意識でフッと笑う

だがそんな状況においてなお、ヴァレリアは一つだけその黒づくめの男に問うた


「お前の神は……何だ?」

「貴様にそれを告げる義理はない、だが」

「だ、だが……?」




「神の代理などを騙る不届き者は私の敵だ、度し難い」


その言葉にヴァレリアは血を吐きながら笑った



「私が渡せるものなら何でもくれてやる……! 力を貸してくれ!」

ヴァレリアは笑いながらその男の誘いに乗ることにした



その言葉に黒づくめの男が表情を変えることなくズタ袋をひっくり返す

そのボロボロの袋の中からけたたましい音を立てて何かが零れ落ちる


その鉱石の様な何かはぶつかり合って美しい音を響かせた

とても美しい、輝く鉱石……


「そ、それは……魔鉱石……? 真っ青の魔鉱石だと……?」

見たこともない色味の魔鉱石に目を奪われるヴァレリアを見ながら、黒づくめの男……




ガルドは邪悪な笑顔を浮かべた


「よかろう、必ずよこせ……私の望む物をな!」






――――――――――――――――――――――――――――――――――



「あ、あの時はありがとうね ガルドリック君……さん……」

肩を掴まれたまま目を合わせようとせず半笑いでヴァレリアは取り繕ったお礼を言った

だがそんな空気を読む気も合わせる気もないガルドは邪悪な笑顔をしたままブンブンとヴァレリアの肩を揺さぶる


「さぁ! 言っていたこの街に古くから伝わる古文書を寄こせ! 今だ!すぐだ!一刻を争うんだ!さぁさぁさぁ!」

「あ、あの時は朦ろ」

「朦朧としていたなどとは言わせんぞ! その言質を取るためにわざわざ魔鉱石を潰して回復魔法をかけたんだからな!意識レベルは十分だった! ここに貴様のサインだってあるぞ!」


ガルドは言葉を濁してごまかそうとするヴァレリアの眼前に紙きれを押し付けてなおも叫び続ける


「え、お前サインまでしたの?」

「だ、だって…… サインしなきゃ力を貸さないっていうから……」

呆れながら聞くファルネウスに、半笑いで答えるヴァレリア



その紙切れには「この約束はエタノー領主として守ることを神ルミナスに誓う」とヴァレリアの字で殴り書きされており、ご丁寧にヴァレリアの魔力を込めた指紋まで押印されていた

紙切れを決して視界に入れようとしないヴァレリアになんとしても見せつけようとガルドは執拗に紙切れを押し付けた






「やめろガルド!ヴァレリアさんが困ってるじゃないか!」

事情を知らないリンファがガルドに向かって怒鳴る


だがその声を聞いて

「いや、これはしょうがないよ」

と、ファルネウスがリンファをたしなめた


「み、味方しろよファルネウス!毛玉!」

「うるさい眼鏡!割れてんだよレンズが! ……古文書ってあの古文書だろ? 渡してあげればいいじゃないか 私としてもコイツを全面的に信用する気にはなれないがそれくらいの約束は守ってやればいいだろ」


古文書の事を知っている風なファルネウスが半ば呆れながらヴァレリアに渡すように促す

だがヴァレリアはそれでもなお視線を泳がせながら心底困った顔を浮かべていた



「さぁお仲間もそういっておられるぞ! 私が命を助けてやった毛玉風情もそう言っているんだ!おとなしく古文書を差し出せ!」

「感謝したいんだけどイチイチ引っ掛かるんだよなぁ」


ガルドが血相を変えてヴァレリアに迫る様子にファルネウスがため息をつく

『何をそんなに渋っているのか…… どうせ渡したところで役にも立たんだろうに……』


古文書がこの街に残っていることは以前にヴァレリアから聞いたことがある

確かに貴重な王都建国前から残る古文書ではあるし、歴史的価値はあるだろう、だが……





「さぁ渡せ! 約束通り!」

「あ、えっと……渡すのは……いいんだけど……」


ガルドの圧に負けて渡すことを明言するヴァレリアだったがその表情は未だに冷や汗に塗れたまま

ファルネウスはそんな二人を呆れながら半目で見つめる


しかし、次の言葉にファルネウスの目がわずかに見開き、ヴァレリアの顔が更に青くなる



「言ったな!渡せ! この街に伝わる『貴様が解読を済ませたという古文書』を寄こせ! すぐだ!」




その言葉にファルネウスがこわばった表情でヴァレリアを見る

ヴァレリアはもはやどこに視線を向けているのかわからない顔で薄目になっていた





あのバカ、やりやがった


ファルネウスが以前に聞いていた古文書の話、それは


『多分古代にゴブリンか人間が書いたであろう、解読も翻訳もほとんどできてない古文書』



だった



そして今のヴァレリアの顔を見る限り、翻訳も解読も多分まともに進んではいないだろう

必死に叫ぶガルドを前に、とうとう目を瞑って天を仰ぐヴァレリアにファルネウスはため息をつく



そんな三者三様のおっさんたちの様子に、リンファとアグライアは不思議そうな顔をせずにはいられなかった――――



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