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緑の拳士~ゴブリンハーフは魔法が使えない~  作者: ハンドレットエレファント


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244/274

244.星空に吠える

今の人間がそれを知るすべがなくとも、過去その情報をまとめた文献や口伝は残っている可能性がある

ガルドはそれをわずかな希望と信じてその身を奮い立たせた



「おい、管理人とやら……」


ガルドは荒い呼吸を繰り返しながら粗雑に管理人に声を掛ける


『……まだ何か質問が?』

「これ以上問答をしたところで私の欲しい情報を貴様は寄こさないだろう…… そんなことよりも」


ガルドが虚空を睨みつける

何も見えないはずなのに、その目は管理人がまるで見えているかのように鋭く光っていた



「このガルドリックは必ず【神の手のひら】に至る、それまで我が神を殺すな……指の一本すら触れることを許さん!」

『そのような約束はできません』

「それでもだ!なんとしても辿りつく、目覚めなければ目覚めさせる、だからこのガルドリックがたどり着くまで指を咥えて貴様は待っていろ!」




ガルドは管理人の言葉をまるで相手にせず、自分の言いたいことを好き勝手に言い放つ

もちろんガルドにはわかっている、こんな言葉がなんの約束にもならないことは十分すぎるほど理解していた


こいつらはやると言ったらやる、きっと日常の延長で靴でも履くような感覚で命を断つ

人知を超えたような存在が約束など守るはずもない

それでもガルドはそう言わずにはいられなかっただ



『もう一度言っておきます、そのようなお約束はできません、できませんが……』

「……なんだ!」

『辿り着かれることを楽しみにしております、これは人間でいうところの「個人的な感想」という奴です』




ガルドの魔力が迸り頑強で無骨な牢獄に次々と亀裂が走る

思えばこんな粗末な牢屋など破壊しようと思えばいつでも破壊できた


それすらも考えに至らず牢獄に押し込められていたのは神代王の力だったのか、それとも自らの諦めだったのか

ガルドの胸中には信仰と殺意が燃える

抑えようもないほどの信仰心と怒りがガルドの魔力に乗り移ったかのように荒れ狂った!




「我が神を救うためなら、神の手のひらだろうが心臓だろうが行ってやる……!」

ガルドの右手に水流が渦巻く


「神は我に干渉などせぬ、ただ見守り、ただ慈しみ、ただ嘆き、ただ愛してくださった」

ガルドの左手に業火が燃え盛る


「そんな神が自らを捨て哀れな私を救ってくださったのだ! 私が不甲斐ないばかりに神は自らの心すら破ったのだ!」

ガルドの全身に雷が迸る!



「ならば神の為にこの身を捨てるのが神の子たる私の宿業だ! 神代王を殺す!そして我が神を救う!」


3つの異なる魔法がガルドの叫びと共に同時に撃ち放たれ、轟音と共に爆発が巻き起こり業火と水蒸気が立ち上る

解き放たれたガルドの怒りを形にしたような魔力の力は重く頑強だった牢獄の全てを吹き飛ばし、ガルドの頭上に空を広げた



漆黒に沈みゆくガルドを引き上げたあの手の感触が残る

砕け散った空を見上げると腹立たしいほどの満天の星空が広がっていた


この満天の星空を見させてくれた神は、何もない世界に旅立った

旅立たせなければいけなかった自らの非力をガルドは呪う



だから行くと決めたのだ、殺すと決めたのだ


「我が神を救うため! 神の代理を名乗る不敬者を殺すためになぁ!」



満天の空を切り裂くような閃光が走り、ガルドは神代王の檻から飛び出した


管理人はその閃光を見上げながら、誰にも見えぬその姿のままわずかに口角を上げる

笑っていたのか怒っていたのか、それとも呆れていたのか

それは誰にもわからなかった





――――――――――――――――――――


「信じられない話ばかりだが……信じるほかないようだな」


アグライアがため息交じりで言葉を漏らす

リンファはその話を聞きながら真剣に考えこみ、視線を落としていた


「貴様に信じてもらおうなど思ってはおらん、貴様だけではなく誰一人に理解を得ようなどすら思っていない」

ガルドは無表情にそんな言葉を吐き、リンファを見つめる


「私は私の信じる事だけを話して、動くだけだ……穢れよ」

ガルドの問いかけにリンファがピクンと反応する



「お前にも何か心当たりがある……そんな風情だな」

「う、うん…… ガルドの話を聞いて気づいたことは……ある」



リンファはガルドの話を聞きながら先生の事を考えていた

気づけば心の中にずっといてくれて、八極剛拳を教えてくれた先生……




不思議な存在だったけど、それがなんなのか考えたこともなかった

気づいたら居てくれたから、特に疑問にすら思わなかった

けれど……


「ガルドと同じような人が僕の中にも……いる……かも知れない わかんないけど」

「そうか、なるほどな……」



リンファがそう言うとガルドは小さくうなづく


「聞いておいてよかった」

「ガルド……」



「貴様を殺す時に用心すべき事実を把握できたからな」

「こ、こいつ……!」



冗談ではなく本気でそういってそうなガルドの横っ面をひっぱたきたくなる衝動を必死に抑えながら、リンファは苦々しい顔をするに留めることに成功した




「【神の手のひら】か…… 目星はついてるのか?」

アグライアがガルドからわずかにリンファを引き離しながら問いかける

そんな過保護な姿に無表情のまま鼻で笑いながらガルドはため息をついた


「オルファン要塞、王都直轄の集落……貴様の消し炭になった棲家にも行ったが明確な答えは当然なかった まぁ多少の収穫はあったがな」


『消し炭にしたのはお前じゃないか』……と言いそうになったが、それを言うとアグライアを傷つけてしまいそうだったのでリンファはその言葉を慌てて呑みこんだ


「【神の手のひら】がどこにあるという情報はなかったが、それは想定していた 本命は別にあったからな」

「本命……?」


リンファが不思議そうな顔をする

その時少し離れた所から3人に声を掛けながら人影が近づいて来る




「おーい!リンファ君! アグライア君ー!」

「リリー! 無事かー!」


ヴァレリアとファルネウスが、リンファ達の元にゆっくりと手を振って近づいてくる

その声に思わず顔を緩ませてリンファが嬉しそうに手を振り返す



と同時に

ガルドが心から嬉しそうな邪悪な笑顔を浮かべながら

ツカツカツカツカツカツカツカツカと小走りに近い速度で向かってくるヴァレリアに向かって接近していった!


「が、ガルド……? おい!ガルド!待て!待ってって!」


一瞬あっけにとられたリンファは視界に映ったガルドのあまりに歪んだ笑顔に我に返ったように必死に呼びかけるが、当然そんな声にガルドが止まるわけもなく


にこやかに歩くファルネウスとヴァレリアがツカツカツカツカツカツカと足音を響かせながら近づくガルドに気付かないわけもなく



ファルネウスは最初こそ何も思わなかったが、ガルドの表情が笑ってるんだか怒ってるんだかわからない歪んだ笑顔らしき顔で近づいてくるので不審に感じてヴァレリアに声をかけようとする

だがそんなヴァレリアは腹か頭でも壊したのか?と言った感じの冷や汗たっぷりの何とも言えない表情になっているのを見て、ファルネウスは何かを察して半歩その足を遅らせた




「や、やぁガルド君……さっきはどうもぉ!?」

ツカツカツカツカツカ ガシィ!

体当たりでもするのかと言った勢いでヴァレリアの眼前に突っ込んだガルドがそのまま組み伏せそうな勢いでその肩に掴みかかる


そして若干歪に歪んだ邪悪な笑顔でヴァレリアに向かって微笑んだ




「約束は果たしたぞ、さぁよこせ!今よこせ! 貴様が言っていたこの地に眠る古文書を一刻も早く私に渡せ!」



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