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緑の拳士~ゴブリンハーフは魔法が使えない~  作者: ハンドレットエレファント


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231/256

231.荒れ狂う炎の龍の前に立ちはだかるのは

リーフは部隊の先頭めがけて走り、必死に即時撤退を叫んだ

「武器を捨てても構わん!隊列なんて気にしなくていい!急げ!撤退しろ!」


大量のゴブリンを秩序もなく動かせば群衆雪崩などで大勢が死傷しかねないのはわかっていた

だがそれでも今急げば死なずに済む者が居るだけましだ


クイーンが打ち放った巨大な龍の形をした紅蓮の炎に当たれば 確実に死ぬ

だからこそリーフは必死に声を上げ、走った



だが、間に合うわけがなかった



声を聞いたゴブリン達の多くは何を言われているのかわからずポカンとしていた

撤退命令はつい先ほど出ているのに、何をそんなに急いでいるのか


そんな感じで、リーフを皆は緊張感もなくみつめていた




刹那、ゴブリンは消えた



焼ける音もなく、悲鳴もなくただ赤い光に包まれて影まで燃え尽きた

持っていた鉄の剣も、皮の盾も、緑の皮膚も脈打つ臓腑も

その全てが熱に呑まれ大気に消えた




直撃を避けたリーフの黒い装甲を溶かす

人間の魔導士と戦うために魔力で幾重にも防護した特別製の甲冑がその防護層をあっという間に溶かす


咄嗟に冷気の魔法と障壁を展開するが、それでもその熱はリーフの肌をじわじわと焦がし、肉すらも焼いた

紅蓮の龍はこれまで必死に戦ってきたゴブリンを飲み込み、塵すらも残さず消していく


守ろうと命を張ってきたクイーンに背中から撃たれ、その命を散らしていった


その炎の残す焼け焦げた地面を見ながら、リーフは天に叫んだ――――







――――――――――――――――――――――――――――――



我が子のお守りを握りしめながら、兵士は呆然と立ち尽くしていた


上官に言われるがまま伝令で走ってきただけのはずなのに、こんなことになるなんて

他の兵士達も何が起こったのかわからずに立ち尽くしている者が居る


走って逃げようとする者も居たけど、多分間に合わないだろう


あぁ、思考だけはすごい勢いで回るのに体がついていかない

後ろを向いて、何も考えず走る


それだけなのに、一回考えるともうなんにもできない





だって、目の前から迫って来る龍が赤くて熱くて、そしてあまりに大きかったから






「逃げて!」



その時、兵士は誰かに突き飛ばされる

予想だにもしていなかったその男は、そのまま地面に尻餅をついてしまう

男の鼻と頬は熱で皮がむけ、わずかに血を流しながら痛々しく赤く腫れていた



突き飛ばされた衝撃で我に返った兵士は自分の顔に刻まれた熱傷の痛みに思わず顔を歪める

そしてその痛みに耐えながらその突き飛ばされた方を見上げた



そこには赤い龍に立ちはだかりその勢いを受け止めるゴブリンらしき影が見える

赤い炎の龍が放つ光で色すらも定かではないが、その肌の色が人間とはかけ離れた色をしていることは一目瞭然だった



それは右手に何か黒い鱗の様な盾みたいなものを構え、その炎の龍を食い止めていた



「た、立てますか……急いで……逃げて……! 」

「お、お前は……ゴブリン……ハーフ……?」


兵士はその姿に見覚えがあった

忘れるわけもない、つい数日前に我が子と一緒にそれをみたのだ


断罪の丘、牢獄、下賤な化け物……

その化け物に我が子は石を投げた

兵士はその化け物を見て誓ったのだ、こんな化け物から我が子を守るために戦うと




その化け物が今、自分の前に立っている

それどころか、身を挺して自分を守っている



緑の皮膚がみるみる焼けただれていく

皮膚の下から滴り落ちた緑の血は赤い龍の熱で蒸発していく

纏っていた衣服は炎にまかれ、火が付き燃えていく


それでもその化け物は一歩も引かずにその龍を食い止めていたのだ



「あ、あぁ……」

兵士はロクに言葉も話せず、ヨロヨロと立ち上がる

燃え盛る龍は空気も大地も焼き、兵士の体も熱で悲鳴をあげる

我が子からもらった木片と麻布で作られたペンダントが燃えないように、必死に握りしめた





「帰ったら……お子さんと美味しいご飯、食べてくださいね」




兵士はその言葉に思わず目を向ける

傷だらけで痛々しくその身を焼くその化け物……




リンファは、澄んだ青い瞳で笑いながら兵士に優しくそう告げた







トランクの魔鉱石から展開される強靭な硬さとタフさを持つはずのその外骨格ですら、その熱の塊に焼け焦げていく

次々とその外骨格は生成されていくがその速度上回るほどでクイーンの放った炎の龍はそれを焼き尽くしていった


ピスティルの魔鉱石は必死にリンファの体に襲い掛かる熱を中和しようとするが、あまり膨大な熱を帯びた魔力はその中和速度をやすやすと超えてリンファの肌に熱傷を刻んでいく


リンファの手のひらで輝く銀毛は凍気を発することでかろうじてリンファと炎の龍の間に層を作ることに成功する



「こ、こんなものを進ませたら……みんな死んじゃう……!」

リンファは魔力の流れを必死に視ながら、魔導発勁による魔力の共鳴爆発を試みる

だがあまりに膨大な魔力の大瀑布を前には弾き飛ばすことも相殺させることもあまりに困難だった


リンファに内在する魔力ではあまりに足りず、大地の魔力を共鳴させようにも震脚を撃つ余裕すらない



そんな状況でもリンファはあきらめずに何度も自身の魔力との共鳴で炎の魔力に対抗していたが、あまりに強大な魔力の前には大きな効果は生まれない


接触した部分を共鳴させ無力化したところで、それを飲み込む様に膨大な熱と炎の魔力が次々と押し寄せてくる

やけたマグマにわずかな水をかけるようなもので、リンファはその龍に徐々に押し込まれていく



それでもリンファはあきらめようとはしなかった

燃える大地に焼けた足を踏んばり、その身で魔導発勁を練りこむ

灼熱の空気をピスティルの魔鉱石でわずかに中和しながら吸い込み、肺を膨らまし呼吸にて力を溜める

腹に貯める息はあまりに熱くリンファは涙を流すが、それでもその呼吸は止まらない



先生に教えてもらった呼吸で構えを作り

先生に教えてもらった構えで大地を掴む



紅蓮の龍は更に勢いを増しリンファの周りは炎以外何も見えなくなる

リンファを守ってくれる力も徐々にその勢いを衰えさせ、リンファの体が燃えていく



「負けない……! 絶対に……死なない……死んでたまるもんか……!」


リンファは燃える自らの体には目もくれずそれでも紅蓮の龍を抑え込む



「僕は!守るんだ! みんなと生きるんだー!」




その叫びの瞬間、リンファの体を襲う熱が消える

リンファは突如消えた焼け付く感覚に戸惑い、振り返った



その背中を守るように、冷気漂う美しい銀毛の外套がたなびく

熱と炎にまかれた熱風に吹かれているはずなのに、その金髪は涼やかで優しい


意志のある強い瞳をしたその人の手がリンファの頬に触れ、焼けただれたその皮膚を優しく冷やしてくれた



「アグライア……さん……!」

「大丈夫か!よく頑張ったな、リンファ……!」



アグライアが我が身の危険も顧みず、リンファと共に荒れ狂う紅蓮の龍の前に立っていた

アグライアがみにつけているその銀毛の外套はステラが作った特別製で、そこから生まれる凍気は吹き荒れる熱風に対抗する


だがそれでもその炎の瀑布は荒れ狂う事を知らず、二人を呑みこみ人間を襲おうとその力を増していく



「リンファ……!」

アグライアが炎に巻かれながら苦しそうにリンファの名前を呼ぶ

それでもその手は障壁と冷気を放ち、リンファをその熱と炎から必死に守り続けてくれていた




だが炎の勢いは衰えることなく、無情にも二人を徐々に呑みこんでいく





リンファは打開策がないまま、それでも必死にその力を抑え込み続ける

その時炎が外骨格の一部を貫き、リンファに炎の奔流が襲い掛かる!



「リンファ!危ない!」

アグライアが咄嗟にかばいその腕を焼きながらリンファをかばう

リンファの耳にアグライアの腕が焼ける音が響き、思わず目を見開いて奥歯を噛みしめた




『せめて……アグライアさんだけでも……!』


リンファが傷ついたアグライアの体をかばおうと振り返った時、突如二人の足元が爆ぜる



「な、なんだ!?」


二人は驚きその足元を見つめると、そこには青い数本の鉱石が突き刺さっていた

その鉱石は突如強烈な冷気を放ちリンファとアグライアを包み込む!


「こ、これは……魔鉱石!?」





『こんなところで消し炭となることは許さんぞ!貴様を始末するのはこの私だ!』





その時、その魔鉱石がまるで喋りだしたかのように声を響かせる!

あまりに尊大で、あまりに不遜で、怒りに満ちたその声が二人の鼓膜に響く



『一瞬でいい!その下等な炎の蜥蜴を退けて見せろ!そうすれば後は私がなんとかする!』

「その声……まさか……!」



青い魔鉱石が弾け、小さな障壁を展開させる

その障壁が炎の龍の猛攻を一時退け、リンファの構えは盤石となった






『やって見せろ!異形の穢れ!我が宿敵よ!』




「……ガルド!」



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