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緑の拳士~ゴブリンハーフは魔法が使えない~  作者: ハンドレットエレファント


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221/256

221.今の君ならきっと

通常であればとうの昔に決着はついているはずだった


それほどにアバカスとリンファの戦闘能力の差は歴然で、ブラックゴーレムはただの瓦礫になっているほどの打撃を受けた


だが、そうはならなかった

それどころかリンファの拳に緑の血がにじむばかりで、ブラックゴレームには傷一つついていない


傷がつかないのではない、傷が消えるのだ


リンファが叩き込んだはずのダメージの全てが跡形もなくブラックゴーレムから消え去る

ひび割れ砕いたはずの箇所がわずかな時間で回復する



どんなに攻撃を捌き攻撃を直撃させてもそのダメージはなかったことにされる状況に、アバカスは笑う

『どうした…… お強いんだろう?ゴブリンハーフ様ぁ!』


ブラックゴーレムがその巨大な両腕を大きく広げて猛然と走って来る

猛然と言ってもリンファからすればあまりに遅い速度で、苦も無くカウンターを取れる動きだった


だがリンファは少しだけ顔を歪めると、迫ってくるブラックゴーレムが振り下ろす両手をわざわざ待ったうえで回避し、その頭部に膝蹴りを叩き込む

頭部に魔導発勁による魔力の共鳴が炸裂するが、黒い鱗がそれに反応するように爆発し、むき出しになった命鉱石にはわずかにヒビが入るばかり


そしてその傷もリンファの見ている前で消え去っていく!

更に追撃を加えようと拳を振り上げるが、ブラックゴーレムの反撃の平手を回避するためリンファは追撃を諦め距離を取る


乱れる呼吸と、流れる汗

治りきっていなかった傷からも緑の血が流れ、リンファの腕を伝っていった



『貴様のその力はダガーの記憶にあったのでな……! どんなに強力な力でも芯まで届かなければ意味がなかろう』


アバカスはクイーンの城の戦いの全てを観ることはできなかったが、リーフとリンファの激戦は遠隔で観察していた

ダガーのコアに刻まれていたリンファの戦闘の記憶と照らし合わせ、急遽このブラックゴーレムを建造

ダガーのコアの情報を他のレッドゴーレムより影響を強くし、冥術にて漆黒の鱗で体表を堅く覆う


鱗は衝撃を受けた方向に爆発魔法を炸裂させることで相手の攻撃を霧散させ、無力化する

例え砕けたとしても命鉱石は魔力の塊……結合させることなど造作もない




絶対優勢のはずのリンファが疲弊し、劣勢に追い込まれているはずのブラックゴーレムが気力を充実させて襲い掛かって来る

更にその間隙を縫って闇の口と鉱石兵もリンファに攻撃を加えて来る



『どうだ!? これが貴様が見下したゴブリンの呪われた力だ! 血塗られながら進むゴブリンの緑の血道だ!』


アバカスが怒りとも笑いとも言えない叫びを上げる


あの選別の日からアバカスはリンファが許せなかった

その情報はわかっていたはずなのに、こんなにも怒りを抑えられない自分に驚いた


選別というアバカスにとって針の筵にも近いタイミングで

仲間の命を選ばなければいけないという地獄の時間の中にのうのうとコイツは乗り込んできた


そして仲間の命について吠えた、何も知らないコイツが!

十数年間発病することもなく、ゴブリンの命を消費もせずに成長したコイツが!


ゴブリンの名を冠する資格もないコイツが! ゴブリンの命について意見したのだ!




『許せるものかよ……貴様だけは許せるものかよぉ!』




ブラックゴーレムが勢いを増してリンファに迫る

その背後から多数の鉱石兵と闇の口がそれに続く


そして戦場のあちこちからリンファが呪縛から解いたはずの人間の亡骸たちが呻きだし、徐々にゾンビ化していく



背面には傷つき動けないアグライアと、それを治癒するために留まるステラ



それは絶望にも近い絶体絶命の状況

敵はあまりにも多く、倒す事も叶わない


自分が倒れれば、守りたい人も死ぬ


否定するものに負ければ、肯定してくれる者も共に倒れる


リンファは迫るブラックゴーレム達を眼前にしながら、それが脳裏によぎる


そして、思う


そうだ、そうだった

死ねと言ってくる奴の言葉なんかに 従ってやる必要なんて ないんだ




僕は僕と僕の大事な人の為に戦うと決めて、ここに来たんだ!




リンファは迫るブラックゴーレムを睨むと、不意にその顔を伏せる

そして構えていた手を下ろし、うなだれるように肩を落とした



『戦う気力もなくしたか?! だからと言って楽に死ねると思うなよ!』


その姿を戦意喪失したと判断したアバカスはブラックゴーレムの両腕を振り上げる

その腕はあっという間に形を変え巨大な戦槌となり、その影がリンファを覆う



『まずはその脊椎を砕き!生き地獄を味わわせてやるわあああ!』




一振りで大地すら割れそうな大きさの戦槌が、ブラックゴーレムの巨体から一気に振り下ろされる!

その振り下ろされる瞬間アバカスはリンファを睨み続ける、恐怖と絶望に滲むその顔を見逃すまいとした


そしてそのうつむいていたリンファが直撃の瞬間、フッとその顔を上げる


その顔を見てアバカスは息を呑んだ



戦槌が直撃しようとする刹那の瞬間のリンファの表情




その表情は、涼やかに笑っていたからだ




大地を震わせるほどの巨大な激突音が響き、砕け散る音が残る



『そ、そんな……!?』

アバカスは状況を認識し、理解し、混乱する



砕けたのはリンファではない

砕けたのは、自らの腕……ブラックゴーレムの巨大な戦槌!






リンファは自らの手のひらをまるで天に向けるように大きく伸びた形のまま、ブラックゴーレムの戦槌に掌底を撃ち込み破壊していた


【八極剛拳 爆震天掴掌】


大地の魔力を震脚によって共鳴させ、その力を手のひらより放ち破壊せしめる

リンファはその技を撃ちながら何かを思い出したかのように笑ったのだ




(あぁ、聞こえたのかい リンファ)

心に響くその声にリンファは笑って答える


「聞こえたよ、先生」



リンファの拳に力が籠り、砕けた戦槌のひび割れが腕に至る

ブラックゴーレムの鱗が次々と爆発し砕けた命鉱石は結合しようと寄り集まるが、破壊の速度に追いつくことができない!




(そうかい、それじゃあ構えようかぁ)


あの優しい先生の声が心に響く

その声にそっと拳を華のように咲かせ、腰を落とし構える




先生は何処にも行っていなかった

先生はずっと心に居た



リンファが強く生きると心を漲らせたから、心に再び現れたのだ





『ば、馬鹿な……!? 回復が間に合わない! そんな……!?』



狼狽するアバカスを飛び越えるように鉱石兵と闇の口がリンファに襲い掛かる


リンファはヒュっと息を吐くと強くその足を踏み込み地面を震わせる!


(そうだねぇ、今の君にならきっと使いこなせるねぇ)



「はい!」




多くの敵がリンファに激突する瞬間、大地が噴き上がり敵を天に吹き飛ばす


一瞬にして周りの仲間が吹き飛び様子を見てアバカスは思わず天を見上げる


『な、なんだ!? 何が起きてる!?』



アバカスが空を見上げたその一瞬

その一瞬の刹那にリンファがその懐に飛び込み、魔導発勁を練り上げて左手を伸ばす


そして足から伝わる大地の魔力を全身に共鳴させ、練り上げた魔導発勁をブラックゴーレムの腹部中心に叩き込む!



掌底が魔力を螺旋状に直撃し、ブラックゴーレムの腹部の鱗が爆発する

だが掌底によるダメージをなかったことにするように命鉱石による回復がその傷を一気に塞ごうと魔力が走った


『馬鹿め……! お前の攻撃は効かぬとまだわからぬ……か……!?』


その一撃を受けながらアバカスはわずかに笑うが、刹那の瞬間その笑顔は凍り付く




その掌底は終わりではない、始まりだったのだ



掌底を撃ち込んだ掌が起点になるように肘が曲がりリンファが残像を置き去りにして踏み込む!

刹那の瞬間にその掌底は頂肘に変化し、爆発した鱗の奥に見える命鉱石を粉々に打ち砕き、その欠片が宙に舞う


そしてその砕けた破片の輝きがその身に届くよりも速くリンファの体全てがブラックゴーレムに弾丸の如く踏み込まれ突き刺さる!


リンファという名の弾丸はブラックゴーレムのむき出しとなった腹部に光るコアに直撃!

大地の魔力と共に決してこの世に顕現できないリンファの魔力が融合した金剛鉄山靠がブラックゴーレムの超回復すらも凌駕し、その巨躯を打ち砕いた



【八極剛拳 一閃無骸】



ブラックゴーレムに伝わった膨大な魔力の共鳴は命鉱石の魔力を震わせ暴走させる

回復も結合ももはや意味もなく、まるでそこには何もなかったかのようにブラックゴーレムの腹部にはトンネルの様な穴が空く


『ば、ばか……な……』


そして次の瞬間、ブラックゴーレムは轟音を立てて砕け散った



リンファは砕けていくゴーレムを鉄山靠を撃ち込んだ形のまま見つめる


一撃必殺の技を刹那の拍子に3段叩き込むこの技は、一閃にして骸すら残さぬ奥義の一つ


その技をここで使えたこと、それはつまり……


肩に残るその技の面影を感じながら、リンファはあの温かい先生の手に触れた気がした――――







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