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緑の拳士~ゴブリンハーフは魔法が使えない~  作者: ハンドレットエレファント


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178/197

178.私はゴブリンの女王

『あなたが殺害しようとしている存在はまだこの世界に顕現していない転生者です』

頭の中によくわからない単語がよくわからない言語で流れて込んでくる

私は神代王の呪いの時とは違う、もっと漠然とした力で体を拘束される


神代王の時は自分の体だけが自由が利かないという不自由さを感じていたがこれは違う

今この話しかけている何者かの力は、私の心以外の全てが自由を奪われていると感じずにはいられなかった



『こちらの意図を理解せずにこのまま対象者を殺害しようとすれば貴方の存在を抹消します、ですがこちらからの世界の介入は極力避けたいため、ご理解いただければ幸いです』

もって回ったような言い方をしてくるが、要はこの不思議な存在はリンファを殺すな、まだやるならお前を殺すぞと言っているらしい


こいつも神代王の力なのか……!

私がこの化け物を殺したくて殺していると思っているのか!ふざけるな!


『なるほど、あなたの意図した状況ではないと』


え……!? なんで?私何もしゃべってないし、喋ることはできないはずなのに


『検索します…… なるほど、転生者リュウイチ・サネトモの能力【神の代用】による強制行動ですね それであれば確かに貴方に責を問うのは難しい』


りゅ、リュウジ? 人?何者?神の代用?

コイツは何を言ってるんだ?


私だって死にたくない! この化け物は憎い相手だが、神代王の力に逆らえないんだ!

それでも私は殺されるのか!?


『承知しております、ですがこの状況を全てこちらの処理で対応すれば、世界への大規模な干渉となってしまう為それはできません、そこで……』


その言葉を皮切りに、体が急に熱くなっていく

体の真ん中が溶けるほど熱くなり体が燃えているのではないかと感じてしまうほどに苦しい

動くことも叫ぶこともできずに私はその業火にさらされていく



『これよりこの世界で言うところの1分後に、あなたの時間は動きだします』

じ、時間が……動く……?



『その際、特例としてあなたに【リュウイチ・サネトモの転生能力に対する上書き】の権限を付与します】

能力の……上書き?

どういうことなの ちゃんと説明して!



『このような対応は本来こちらの望むことではありませんが、世界への影響を鑑みてこちらを最善としました』

世界……最善……?

どういうことかわからないけど、この化け物が……リンファが世界にとって大事な存在ということなの?



『違います』

え?


『これは異物です こちらに関しては後にこちらで処理する予定です』

でもこれを殺さないために私は今こうなっているんじゃないの?

どういうことなのよ!?



『それはあなたの感知することではありません、こちらとしてはこの異物がこの介入の原因と思われるのは好ましくない為、最低限の返答をさせていただいた次第です』



わからない!殺すなら殺してよ!

みんな!みんな私を弄びやがって!



『自暴自棄になられるのは勝手ですが、先ほどの説明通りにその行為を中断しなければ貴方の存在を抹消します事は努々お忘れなきようお願いいたします』



何を……何を勝手な!

お前は何者なの!? これはなんなのよ

ふざけるな!ふざけるなぁぁぁ!


『……残り時間も短くなったのであなたが行動しやすくなる言葉を差し上げます、このような戯言を伝えるのは不本意ですが』


その時私は、世界がまばゆい光に包まれ消えていく瞬間を見た

そしてその光が私の飲み込んだ時、体中に響いた




『私共の存在はあなたの世界で言うところの【神】と定義していただいても差し支えはございません、それでは良い旅を』



かみ……?

待って!私はまだ……!






「【待って】!」

その声が住み慣れた小さな我が家に響き渡り、私の体中が世界の再開を感じ取る

目の前で止まっていた血が化け物……リンファの頬に飛び散り、ビシャッという音をわずかにさせる


体中の感覚が唸りをあげ、激痛が脳みそを殴りつける


だが、声が出た

この部屋どころか世界中に響き渡ったかのように錯覚するほどの私の声が確かに響いた



【自由に戻せ!】


私が叫ぶと体の自由が途端に戻り、私はつき下ろそうとしたナイフを体の中央で構え、即座に身構える

私の叫びに反応してか、さっきまで視点の定まらない瞳でこちらを不気味に見ていたはずの連中が意識を取り戻している


目の前にいたゴブリンと神聖騎士団の隊長は一瞬虚を突かれたかのような顔をしてこちらを見つめていたが、隊長は異変に気付き腰に携えた剣に手をかける


「き、貴様! 化け物の母親! そ、その手に持ったナイフは……」

「うるさい!しねえええええええええ!!!」



私は隊長が剣を抜くより早くそのナイフを相手の喉に突き立てる

感じたこともない嫌な感触が手に残るが、そんなものはもう関係ない



殺してやる!お前も!神代王も!人間も!ゴブリンも!


異形の化け物も!みんな!みんな殺してやる!!!!!





隊長は口から血を噴きださせながらもがくように腰の剣を抜き、目を真っ赤にしながら私をひきはがそうとする


「させるかあああ!死ね!死ね!しねええええええええ!!!!」

私はそのナイフから必死に術式を展開し、隊長の体に電撃魔法を放射する

ただただ必死に一つの呪文を繰り返し相手の体内に撃ち込む


気が付けば隊長は顔じゅうの穴から煙と血を噴きだし、人の形をした肉の塊と化していた



私はそのナイフを必死に離そうとしたが、手が強張ってしまいナイフを離すことができない

力を入れすぎて指の動かし方がわからなくなったかのように動かなくなってしまった指を必死に引き剥がそうとしたとき

手にナイフを持ったゴブリンの一匹がいきりたち私に飛び掛かってきた!


死ぬ?

折角一矢報いたのに? 何も成せずに、何も復讐できずに、何も殺せずに?

そんなの……そんなのいやだ……!



ね……



「死んでたまるかああ!【お前が死ねぇ!】」


私は思わずそう絶叫した

その瞬間



ゴブリンは 手に持ったナイフで 自らの喉にナイフを突き立てて 自害した



まるで何かの命令に従った様に

それはまるで……


「神代王の……力……?」


さっきの幻の様な出来事は嘘じゃなかった

私は本当に、おかしな力で生かされた……?




ふふ

ふふふ……ふはは……





気づいてしまった

私の地獄の元凶と、復讐の手段に


つまりはこういうことか


「そこのゴブリン、【声の限り叫び仲間を呼べ】」

その言葉に反応したゴブリンは躊躇もせず鳴き声を上げる



「そこのゴブリン【外にいる人間を殺せ、命を捨てて食らいつけ】」

その言葉を聞いたゴブリンが即座に踵を返す



鳴き続けるゴブリンに更に告げる

「【この命令の意味が分かる全てのゴブリンをここに集結させよ、道々の人の家は焼け、人は殺せ、女は攫え】」


ゴブリンの鳴き声が響き、その声に反応したゴブリン達が方々から鳴き声を立てていく

それはまるで巨大な津波のように国中に伝播し、大陸全てが大地を揺らし鳴いているようにも感じた



やがて家を囲っていたであろう騎士団の連中とゴブリンが交戦を始めたのか、あちらこちらから人間の悲鳴が響く


ざまあみろ、今まで私を見下していた連中め

みんな死ね……みんな死ね……!



「動くな!本性を現したなこのゴブリンの眷属め!」

部屋の中に甲冑を来た男が飛び込んでくる

私をゴブリンの仲間と呼んだ


ゴブリンに苗床にされ

望まぬ化け物を産まされ

権力に育てることを脅迫され

今日まで必死に人として生きていた私に



こいつは私に、ゴブリンの眷属と言ったか?



戦火が広がる

窓の外が真っ赤に染まる


化け物は眠る

私の事も知りもせず、良い子で眠ってる


誰も私の事は考えない、思いやらない

優しくもしない



いいだろう人間

お前がそういうのなら、私はそうなろう




「眷属……?笑わせるな人間」


騎士の背中から数匹のゴブリンが襲い掛かり、即座に体中にナイフを突き立てる

口から血を噴きだしながら騎士は押し倒されるが、興奮したゴブリンはそのままその騎士を噛み千切っていく


群がり赤い血を浴びるゴブリンを見下しながら、私は肉塊に変わった人間に向けて告げた



「私は……」




私はゴブリンの女王




「ゴブリンクイーンであるぞ」



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