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第三十六話:とある秦の強過ぎる精兵の話 後編の弐

 紀元前214年。


 始皇帝(佐藤誠)は次なる大規模な政策を実施するために日々色々な調整、重要事項を確認し、多岐に渡り細かい指示を飛ばしていた。


 そんな日々を忙しく生きる、誠であったが、


 最近になって気になる懸案事項がでてきた。


 悪徳徴税官たちの横暴に対する上奏案件である。


 特に旧六国地域に派遣された徴税官の中には、国賊とも言える、とんでもない徴税官が現れ、民が国府に訴え、徴税官が裁かれ、斬首になるという事件が増え始めていた。



 徴税官の人選と権限改め、資産課税を緩める段階に来たのかもしれないと、誠は思案するようになっていた。



 そこで、徴税官が問題を起こした郡の太守を咸陽に呼び出し、誠は直々に聞き取り調査を行うことにした。



 そこで、会稽郡の太守、殷通いんとうからも、会稽にいた悪徳徴税官の話を聞くことになった。



 そして、誠は殷通からの証言とその記録を調べるうちに、会稽の乱の原因は、元を辿れば悪徳徴税官が招いた乱とも言える可能性を見つけてしまう。



 殷通からは、項梁に命を救ってもらった恩もあり、会稽では今なお項梁と項羽を慕う人間がたくさんいると聞いた。



 そのこともあり、誠は項梁と項羽が起こした乱の経緯を再び確認した。



 その結果、誠は……。



 項梁と項羽は国の方針に従えぬから乱を起こしたのではなく、国の落ち度があってそれに奮起して乱を起こしたと言えなくもないと……思うようになってしまった。


 だが、何故? 項梁も項羽もその事を自分に直接対面した時に、会稽でこのような事があった事を言わなかったのか?


 項梁は楚を復興するため、項羽は戦いを求め、始皇帝にとって代わりたいがためではなかったのか?


 誠は当時の事を思い出す。

 

 あの頃は、各地で確かに新たに設けた課税制度に、反発した豪族が乱を起こす事が多々あった。


 その度に、軍に鎮圧させていた。


 それに、匈奴に備えて北辺の守備の強化に忙しく、反乱の内容や中身をきちんと精査できず、またか、またかと乱に対処していた。


 その結果、乱を起こす者に対して先入観があり、そこに国の落ち度はなく、項梁、項羽達も新しい国の仕組みに適合しない異物と考えてしまっていた。


 更には内政に軍事に新しい改革に忙しい時期でもあり、張良の説得に失敗し、范増を失い、法に対して特に引き締めが必要な時期でもあった。


 要するに、乱を起こした項梁、項羽に対して説得を試みる心が薄かったとも言える。


 誠は臣下として遇したいと表面上は言いつつも、一度乱を起こした者を自分自身が信用できない気持ちが、項梁、項羽にあった。


 そして、項梁、項羽も秦の始皇帝という存在が憎いという気持ちが、どうしてもあった。直接対峙して、秦に忠誠を誓い、臣下になる気はないか? と言われて、二つ返事で、秦に忠誠を誓い、臣下になりますとは言えるわけもなかった。


 だから、反発した答えをしてしまった。


 そして、項梁の自身も乱を起こした際に、楚に対する忠義心が再燃していた故に、始皇帝にあのような発言をしてしまった。


 それに父、項燕を殺し、祖国を滅ぼした元凶の始皇帝に「秦に心からの忠誠を誓い、臣下になれ」と言われて「はい、誓います」と簡単に言えるような人間が乱等、起こせるわけもなかった。


 更に、項梁は項羽が始皇帝に対してこの場で「始皇帝にとって代わりたい!」とまで言う愚かさに、少しは牢で頭を冷やすのもありだとも感じていた。


 項羽は項羽で悪徳徴税官の事を話さずに、自分を始皇帝に認めさせる気持ちが先行して、愚かな発言を繰り返す結果となってしまった。


 誠が乱の中身を把握し、項梁、項羽に対して情状酌量の余地ありと、当時思う事ができれば……。


 また、項梁、項羽にも始皇帝を憎む気持ちが先行しなければ、もう少しまともな対話が成立していたのかもしれない。



 しかし、当時はそうならなかった。

 変える事のできない過去を悔いても詮無き事である。


 それに、だからと言って、反乱を起こした罪を許すことはできない。


 悪徳徴税官とはいえ、法に訴える事もせず、殺した罪は重い。


 しかし、国の落ち度が招いた事実を鑑み、項梁と項羽に何らかの特赦、減刑を考えても良いのではないか?


 だが、一度見切りをつけた者たちの件を蒸し返すのも、始皇帝の立場として体裁が整わないとも誠は感じていた。


 これは、つまらないプライドや建前、権威に傷がつくかもしれないという懸念ではあるが、国の絶対的な権力者は一度決めた事を自分から覆すことはやはり憚られる。



 そう誠は思考する。



 しかし、されども……こうなってくると、項梁と項羽は惜しい……。


 牢で朽ちさせてしまうには、あまりに惜しい人材だと、誠は考えるようになってしまった。


 しかし、今更、自分から項梁、項羽の件に関して蒸し返し、動く気にもなれない……。



 誠はそういった自分から動く事はできないが、何とか状況を動かしたいが、動かせないという、妙ちきりんで、複雑な気持ちを抱える日々が続く……。



 そんな折である。



 韓信が珍しく奇異な上奏を申し入れてきた。



 その事がきっかけとなり、項梁、項羽の件が新しく動き出す事となる。




ーーーーー後編の参に続くーーーーー


 次回! 韓信の心憎い気配りが光る!

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