第二十九話:秦国の科挙試験 後編の1(過酷な第一試験)
【科挙武官試験場】
【武官試験:概要と設計】
韓信が設計した武官試験は、四段階の試練で構成されている。
秦の軍を未来に導く将才を選ぶため、武術、戦略、指揮能力、危機対応力を総合的に評価するように出来ている。
『第一試験』
武術試験:一対一の模擬戦。剣、槍、弓を用いた実戦形式で、技術、反応速度、基本的な個人の能力を評価する。
試験官は秦の精鋭兵が務め、受験者は試験官に勝つか負けるかで大きく評価は分かれる。秦の精兵はだれもが優れており、勝つだけでもかなり評価は高まるが、勿論、内容も問われる。基本的に刃引きの武器を使用する。
『第二試験』
戦略立案試験:仮想の戦場シナリオ(例:匈奴の騎兵襲撃、谷間での防衛戦、山岳での奇襲)を提示し、戦術を提案。地形、兵力、補給を考慮した現実性と革新性を評価する。
与えられた仮想の戦場シナリオに対して、時間ないに竹簡に戦術的対応を記入して試験官がこれを評価する。
『第三試験』(第一、第ニの試験で合格ラインに達した者達だけが受けれる、この時点で任官は確定する)
指揮試験:受験者に小部隊(秦の精兵100人規模)を指揮させ、模擬戦で受験者同士を戦わせる。部下の統率力、臨機応変な指示、戦況把握の能力を評価する。
勝利した方が勿論評価は高いが、試験官の評価、秦の精兵の評価が重要なため負けたとしても評価が高い可能性がある。評価の基準は、自軍の被害が少なくし、相手の被害を拡大させれば良いという基準はあるが、負け方、勝ち方も大きく評価を分ける試験となるが、勝たないと第四試験を受けれない。勝敗条件は受験者の戦闘不能か、死亡、降伏により決する。過酷な試験ゆえ辞退は可能。また、勝利しても無駄に命を奪う行為は禁止。不慮の事故と認められない、受験者、精兵の死亡は即失格となる。
『第四試験』(第三試験突破者のみの最終試験)
危機対応試験:突発的な危機(例:補給線の遮断、敵の奇襲、部下の裏切り)を模擬的に再現し、志願者の判断力と精神力を評価。極限状況での冷静さと決断力が問われる。
韓信は壇上に立ち、志願者たちを見渡した。
彼の声は訓練場に冷たく響き、劉邦の一件以来の緊張感を一層高めた。
「秦の最高司令官、韓信である。改めて伝えさせてもらう。始皇帝陛下は、秦の軍を率い、未来を切り開く将才を求めておられる。この試験は、武勇、知略、統率、覚悟を試す試練だ。試験に生き残り、その才、将に相応しいと判断された者が採用される。優秀な者には、左庶長、右庶長、場合によっては駟車庶長の官位を賜る。試験は過酷であるが、諸君の奮闘を期待する!」
韓信の言葉に、志願者たちは息を呑み、背筋を伸ばした。訓練場の空気は、剣戟の予感と闘志で張り詰めていた。
そして、韓信は壇上から、試験の開始を宣言した。
「試験を始める! 諸君の武勇と知略を、秦の未来のために示せ!」
号令と共に、訓練場は一気に活気づき、武官試験が幕を開ける事となった。
訓練場に用意された武舞台でまず、第一試験が行われた。
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【科挙武官試験:第一試験】
第一試験は、一対一の模擬戦による武術試験である。志願者は秦の精鋭兵を相手に刃引きの武器で戦い、個人の武勇を評価する。
精鋭兵の技量は高く、勝利するのも困難だが、戦いの内容も厳しく判定される。
武術が苦手な者は精兵に勝つというだけで至難ではあるが、将たる者最低限度の強さは必要である。
第一次試験でかなりの人数が選別される事が予想される。
訓練場の武舞台は複数用意され、同時進行で模擬戦が繰り広げられた。
『第一次試験のハイライト報告』
英布(楚)
英布は、史実で「黥布」と呼ばれ、刺青を刻まれた猛将である。
粗野な外見に鋭い眼光が宿り、槍を手に武舞台に立つ。戦いの開始と同時に、英布は槍を旋風のように振り回し、精鋭兵の剣を簡単に弾き飛ばした。
その後に素早い足運びで間合いを詰め、柄で脇腹を叩き込む。秦の精兵も反撃したが、軽々と英布は躱し、精兵に膝をつかせた。
試験官はその「繰り出す攻撃の精度の高さと、圧倒的な戦闘力」を高評価し、「楚の猛虎」と記録した。
龍且(楚)
龍且は、史実で項羽の盟友として知られる豪傑。長身で筋骨隆々の体躯を誇る人間だった。彼は剣を選び、堂々と精兵と対峙。
精兵は弓の使い手で遠距離攻撃を試みるが、龍且は驚異的な反応速度で矢を弾き、瞬時に間合いを詰めた。そして、一撃で精兵の弓だけを真っ二つに割いた。
秦の精兵はそこであっさり降伏。
試験官は龍且の圧倒的なスピードと力強さを称賛した。精兵は「人間の限界を超えた速度だ!」と、後にコメントした。
季布(楚)
季布は、義侠心で知られる楚の武人。細身だがしなやかな体躯で、剣を手に軽やかに動く。精鋭兵の槍の突きを巧みに回避し、剣で手首を狙う精密な攻撃を繰り出した。長期戦となり、季布は持久力と冷静な立ちまりで精兵を疲弊させ、降伏させた。
試験官は「技術と冷静さに優れる柔らかな動き」と評価したが、舐めプされたと精兵は悔しさを露わにした。それ程実力差があったのだろう……。季布本人はそういう意図はなかったが、内容はどう見てもそれに見えたので評価は下げられた……。
樊噲(楚)
樊噲は、史実で劉邦の忠臣として知られる巨漢。劉邦とは義兄弟ゆえにその死に動揺し実力が発揮できるか懸念があったが、うまく切り替えて試験に挑む。
剣を手に、精兵の槍を正面から受け止める力強い戦いを見せ、精兵に豪快な一撃を決めて倒した。
動きの粗さが目立つが力は抜群であり、「豪の者」と高評価された。
彭越(楚)
彭越は、史実でゲリラ戦の名手。剣を選び、機敏な戦いを見せる。精兵の攻撃を誘い、隙をついて急所を狙う戦術で勝利した。
試験官は「派手さはないが確実な勝ち方」と高評価した。
灌嬰(魏)
灌嬰は、騎馬戦を得意とする若武者である。地上戦は苦手かと思われたが、槍を巧みに操り、精兵の剣を簡単に叩き落とし圧倒。鮮やかな勝利を収めた。
試験官は「槍の優位を活かした勝利で剣を選んだ精兵が愚か」と評価した。
精兵的には自分の得意な武器を選んだだけで灌嬰の強さは本物であると試験官に抗議し灌嬰の評価は上がった。
田横(斉)
田横は、文官試験にも参加した斉の王族。武官試験にも強引に割り込み参加。どちらかと言えば武人よりでこちらの試験に注力していた。武器は弓を選び。精兵も弓が得意な者が相手をした。田横の方が精度、速射、飛距離に優れた正確な射撃で精兵を上回り完勝。
「弓術の精度は抜群」と評価された。
文官試験を途中退出してこちらの試験を受けにきてるので試験官の評判はイマイチ。きちんと、根回しをしてはいるがイレギュラーな存在は現場の者に疎まれるのは仕方ない。
周勃(楚)
周勃は、史実で漢の重臣となる武人。力強い剣術で精鋭兵を圧倒したが、動きが単調。試験官は「堅実だが革新性に欠ける」と評価した。
曹参(楚)
曹参は、無難な戦い方で勝利。試験官は「安定感はある」と評価した。
王陵(楚)
王陵は、賢母を持ち生真面目な武人である、かなり高い剣技で善戦したが、精兵の鋭い反撃に敗北。
試験官は「王陵と相対した精兵が強過ぎた可能性がある」と意見が出たが、王陵は「結果は結果」と素直に自分の負けを認めた。後にこの精兵は秦国でも有数の武人として台頭する……。
その他の有力と思われた受験者。
項悍(楚):項氏の血縁だが、槍術で敗北。
武臣(趙):剣術で善戦したが敗北。
呉芮(楚):弓術で精彩を欠き敗北。
鍾離眜(楚):剣で王陵と対戦した精兵に簡単に負けて敗北。
共敖(楚):槍で王陵と対戦した精兵と対戦する事になり敗北。
第一試験の結果、英布、龍且、季布、樊噲、彭越、灌嬰、田横、周勃、曹参が上位で第二試験に進出。王陵、項悍、武臣、呉芮、鍾離眜、共敖らは敗退したがなんとか第二試験に駒を進めた。
その他、数百名の受験者も敗退したが、第二次試験の枠は50名程あり、試験官と対戦した精兵の評価で敗退者の中から繰り上げで、第一試験突破者が決まった。
訓練場の精兵は、受験者達に敗北という厳しい現実を突きつける結果となったが、死者も大きな怪我人もなく第一試験は終了となった。
その結果に試験官達も満足であった。
やはり、試験を受けに来た志願者に死者を出すのはイメージが悪い。劉邦の死のイメージがなるだけ薄れる結果の第一試験になった事に試験官達は少し安堵した。
その他、特筆すべき事項として、
強過ぎる精兵にあたった者達は少し可哀想な結果であったのは言うまでもない。
多分、あの精兵には誰も勝てない……。
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第二試験に続く!
武官試験は史実キャラクターを掘り返したら、めちゃくちゃ長くなってしまいました!
この物語は基本内政中心なはずなのに!
バトル展開に突入して頭を悩ます私です。
バトル展開難しい!




