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転移したらAランク冒険者でした※ただし最低ランク  作者: 盈月
第二章 忘れるからこそ、記憶と思い出に依存する
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Ep.69 拗れた三角関係に巻き込まれる方はたまったものではない⑤

 ザイリェンの中心に貫くように伸びる大きな街道を、ランは大きな荷物を背負い歩き続けていた。ベルジオ商会を出て以降ファプレがいないか辺りを何度も見回しているが、そもそも彼女が寄り付きそうな場所もなく気配すらなかった。


「ったく……どこに行ったんだか!」


 ランが苛立ちを抑えながら地面を踏みしめるように歩き続けていると、ベルジオ商会と同じくらいの大きさの建物を発見した。ランはファプレの手がかりを集めるべく建物の看板に近寄り、文字を読む。


「ザイリェン冒険者ギルド……はっ、まさかな。俺にも勝てんやつがこんなところに居るわけ……」


 ランがたかを括り鼻で笑っていると、冒険者ギルドの扉が勢いよく開いた。


「ラン!!!」

「居んのかよ……」

「ちょっと!来て!!!」

「え、はぁ??」


 建物から飛び出してきたファプレは、慌てた様子でランの腕を掴みながらギルドに引きずり込んでいく。ランはなされるがまま、冒険者ギルドの中へと連れ込まれていった。


「おいちょっと、説明しろって!冒険者ギルドに俺らが何の用だよ!」


 ランは喚きながらファプレに連れられ、受付まで引きずられる。そこでファプレは右手をランに突き出して言った。


「印、出してよ。」

「印?なんで必要なんだよ、そんなの……」


 重い荷物を下ろしながらランはそう悪態を付き、受付に置かれた紙を見た。その隙にファプレは荷物の物色を始める。


「冒険者登録……って、お前何をして……」

「よし!」


 ファプレの行動に気付いたランは印を持った彼女を静止しようと試みるが、ファプレはランを上手くすり抜け躱しながら紙に印を捺した。


「お預かりしまぁす!」

「あぁっ!てめえ!!」

「ランもまだまだ甘いね……そんなんじゃ高ランク冒険者にはなれないわよ!」

「俺は魔道具士だ!そんなモンなるつもりねぇよ!!くそっ、なんでわざわざ冒険者ギルドなんかに……」

「なんかァ?」


 ランの言葉に反応した周りの冒険者たちが白い目で彼らを見つめる。やがて屈強な体格の男性冒険者たちが、ランとファプレを囲うように詰め寄る。


「アンタら、見ねえ顔だが。新入りか?」

「す、すみません!ほらラン、出ましょ。」


 ファプレは冒険者たちに頭を下げ、ランの手を取りその場を去ろうとする。しかしランは手を払って冒険者のうちの一人をじっと見つめていた。


「なんだ?新入りのクセに生意気じゃねえか?」

「……ふはっ、ハッハッハッハッ!」


 ランは笑いを堪えきれなかったように吹き出す。一頻り笑いふぅと息を吐き、ランはファプレの方へ向き直り言った。


「別に俺は新入りではないんだが……良かったな、ファプレ。冒険者なんて仕事は、こんな連中でもできるものらしい。」

「なんだと!!」


 冒険者たちは激昂し、ランに殴りかかる。彼らは四方からランを攻撃するも、ランには一度も当たることはなかった。


「くそっ……こいつ!ちょこまかと!!」

「だったら、まず女の方からだ!!」


 冒険者の一人が、狙いをランからファプレに変えて襲いかかる。突如狙われたファプレは腰を抜かし悲鳴をあげる。


「きゃあああ!!」

「へっへっへ、なかなか好みの女だぜ……ぐへぇ!」


 男がファプレに向け手を伸ばし、彼女の肩を掴もうとした瞬間であった。男の手はファプレに触れることなく、ランの右足が彼の顔面に突き刺さっていた。


「汚ねえ手で触んな」


 蹴られた男は机や椅子を弾き飛ばしながら入り口付近まで飛ばされ、泡を吹き完全に意識を失っていた。それを見た冒険者たちは


「て、てめぇ……」


 とだけ言いながら、完全に戦意を喪失していた。ランは荷物を背負いファプレを立ち上がらせてその場を去ろうとする。


「それじゃあな、三流冒険者共。」

「待ってちょうだい!」


 入り口から響いたのは、少女の声であった。ランが声に反応しその方向を見ると、ツインテールが印象的な10歳程度の少女がそこに立っていた。


「どうしてこんなことを?」

「知り合いが先輩に虐められそうになってたもんでね。正当防衛さ、代理だがね。」

「そう。それならそのことは謝るわ。でも」


 少女は一切隙のない足取りでランへと近付きながら言った。


「ここをこれだけ荒らされてハイさようならって、そんな態度を黙って見過ごすほどアタシも優しくないのよ。」

「そ、そんなの、アイツらが……!!」

「アンタ、強えな。」


 ファプレの反論をランは遮り呟いた。ランは彼の腰ほどの高さの少女の目をじっと見つめ、少女もまたアゴを突き出しながらランの目を睨みつけていた。ギルド内部が凄まじい緊張感に包まれる。やがて耐えきれなくなったファプレが、


「わ、私たちこそ、ごめんなさいねぇ〜!たたた退散するので、すみませんねぇ!失礼しますねぇ〜!!」


 芝居がかった棒読みでそう言いながら散らかった机や椅子を戻し、ランを引きずるべく手を掴もうと手を伸ばした。しかしランはそれを躱し、少女を睨みながら言う。


「ラン・オチェルドだ。」

「ミラ・ケイトスよ。これからよろしく。」

「だから、俺は冒険者なんか……」

「はぁぁっ!!」


 ランの撤回を遮るように、ファプレは声を上げながらランの腕を抱え込む。そのまま体ごと背負うように体を回し、ランの体を引きずりながら冒険者ギルドを飛び出した。ギルドを出るまで、ランとミラは目を逸らすことなく睨み合い続けていた。


「野良猫か!!!」


 ザイリェンの空、ファプレのツッコミが響いて消える。ランはファプレに引きずられながら、心配続きの新生活のその先に思いを馳せ、苦い顔を浮かべた。

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