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転移したらAランク冒険者でした※ただし最低ランク  作者: 盈月
第二章 忘れるからこそ、記憶と思い出に依存する
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Ep.68 拗れた三角関係に巻き込まれる方はたまったものではない④

「はぁ……全く、どこまで行ったんだよアイツ」


 ザイリェンの街を貫くように伸びる大きな街道をゆっくり歩きながら、ランはため息をひとつつく。街道を進めど全く姿を現さないファプレに頭を悩ませながら、目的地である大きな商会の前に辿り着いた。


「ここがベルジオ商会か?」

「いかにも。」

「どわぁっ!」


 大きな商会の建物を見上げながら呟いたランの隣、いつの間にやら立っていた細身の優男が微笑みを浮かべながら応答する。ランのオーバーリアクションを無視するように、男はランの顔をまじまじと見つめて言った。


「お客さん……ではなさそうですね。見ない顔ですし、何用ですか?」

「お、脅かすなよ……魔道具士ヴァルコの弟子だ。師匠から話が行ってるはずだが?」

「ヴァルコさん?ちょっと待ってくださいね……」


 男はそれだけ言うと、商会の奥へと入って行った。ランは入口から少し離れ、荷物を下ろし地面へと座り込んだ。


「クソッ……」


 ランは熊を倒した後のファプレの魔道具を思い出していた。本来武器をかたどった容器を加工して作る魔道具とは全く違う、何もない空気中に魔力を押し止め物理現象として具現化させるその魔道具は、ランはおろか師であるヴァルコすら成功が難しいものであった。そんな魔道具をあっさりと量産するファプレを思い出しながら、ランは砂を強く握った。


「……意味わかんねえ。」

「何がですか?」

「どわぁっ!!」


 独り言として呟いた言葉に質問で返され、ランは慌てて右の後方を見上げる。そこには戻ってきた男が音もなくそこに立って微笑んでいた。


「確認できましたよ。でも、聞いていた話と違うようですね?」

「何かあったのか!?」

「いえ、聞いていた話ですとランさんとファプレさんという()()()()()が店を作るってことでして……」

「……悪かったな!女みたいな名前でよ!!」


 ランはいきり立ち男に怒鳴る。男は驚きながらもランを宥めるように両手でまあまあとジェスチャーをした。


「し、失礼しました……えっと、ファプレさん?」

「ランだよ!!なんで最後の2択外すんだよ!!あとお前な、音もなく人の背後に立つのはやめろ!」

「これはこれは……大変申し訳ございません。重ねて謝罪申し上げます。というのも私も、この商会を継いでまだ日が浅く……」


 男はペコペコと頭を縦に振りながら、ランへの弁明および言い訳を始める。ランは言い訳を途中から聞き流しながら荷物を持ち上げる。


「アンタ、名は?」

「名前……ですか?」

「ああ。これから世話になるんだし、聞いておこうと思ってな。」

「あ、ええと……ベルジオ商会代表、オリオン・ベルジオと申します。」

「オリオン・ベルジオさんね。」


 ランは数回頷きながら、ベルジオの名前を脳内で繰り返す。ベルジオは辺りを見回しながらランに尋ねた。


「つかぬことをお聞きしますが、もう一人のファプレさんは……」

「知らん!」


 ランは眉を険しく曲げ、怒鳴りつけるように言った。ベルジオは耳鳴りに必死で耐えながら、言葉を続けた。


「ど、どんな人なんです?もしかしたらこの辺りを通ってらっしゃるかもしれませんし……少し特徴が分かれば、私も見ているかもしれません。」

「緑色の髪をした女だ。長髪で背丈は……女にしては大きい方だな。軽装で、下はスカートじゃなくてパンツだった。」

「ふむふむ……」

「あ、そうだ!魔道具を持っているはずだ。刀身が氷でできた刀の魔道具だ。あいつ以外にそんな魔道具使えるやつなんて知らないし、それ見てたら一発だぜ!」


 ランは思い出したかのようにベルジオに話し、ベルジオは口元に手を当て数回頷きながら言った。


「なるほど……確かに、そんな感じの人を見た気がしますね。」

「どこだ?どこに行った?」

「この道を真っ直ぐ行くのを見ました。多分その先の……」

「分かった!ありがとう!!」


 ベルジオが言い終わらぬうちに、ランは荷物を一瞬で背負って道を駆け出した。どんどん小さくなっていく背中を見ながらベルジオは、


「……多分その先の、冒険者ギルドにいらっしゃるでしょうと言いたかったんですがね。なんせこの道にはそれくらいしか目的地がございませんから。」


 と苦笑しながら呟いた。

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