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転移したらAランク冒険者でした※ただし最低ランク  作者: 盈月
第一章 教育方針の反りが合わないなんてのは、異世界だって同じことで
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Ep.5 鷹が鳶を生んじゃうことだってよくある⑤

 私たちはソイルバートを出て西へと向かった。先程マルキスの魔道具で見た地図を思い出しながら少しずつ南下していく。ルガルとレイズは剣を抜き、リッサは懐から拳銃のような形をした魔道具を取り出した。この世界に似つかわしくない近代的な武器に私は思わず、


「へぇ……この世界にも銃があるんだ。」


 とリッサに向けて呟いた。リッサは少し驚いたような顔で私を見つめる。


「ルリ、知ってるの!?」

「ああいや、知ってるというか……私のいた世界に似たような武器があってね。弾を込めてここから発射する武器で合ってるわよね?」

「そうそう!ここに弾丸にしたいものを入れて、ここから発射するの。でね、この魔道具は発射する時に仕掛けがあって……」


 リッサはそう言いながら地面に落ちてる小石を拾い、魔道具にセットして引き金を引いた。大きな発砲音と共に小石が放たれる。確かに私の知っている銃だ……そう私は感心し唸っていると、リッサは残念そうに首を傾げて言った。


「あちゃー、やっぱ石じゃ失敗だね。」

「失敗?どういうこと?」

「んー、なんて言えばいいかなぁ……。まあ、見た方が早いよね。」


 リッサはそう言って懐からコインを取り出して魔道具に入れる。


「ちょっと!それ本物のお金だよね!?」

「まぁ見ててよ。望みは……そうだね、見やすい方が分かりやすいし、花火とかがいいかなぁ。」


 慌てる私をよそに、リッサは再び銃を持つ手を誰もいない方向の空に向け、引き金を引いた。さっきと同じように響いた大きな発砲音。しかし放たれたのはただのコインではなく、まるでほうき星の引く尾のようにスパークし閃光に包まれた弾丸であった。シューという音と共に空を走る弾丸はやがて急上昇し、空でパァンと爆発し花火のように広がった。その様はまさに私の知る打ち上げ花火そのものだった。


「へぇ、こりゃすごいね……これは成功かな?だとしたら望みを叶える弾丸を放つ銃、ってとこかい?」

「そう。望みを思い浮かべながら弾丸を込めて放てば叶うかもしれない、っていう魔道具ね。」

「かもしれない……石ころだと失敗してたから、そこの話かな?」

「望みが叶う確率は、望みの内容と弾丸に使った物の"発動者にとっての価値"で変動するわ。私にとってコインは小石よりも価値が大きいから、望みを叶える確率が高くなるってこと。」

「なるほど……面白い魔道具だね。」


 私はそう言って、リッサの銃をまじまじと見つめながら思いに耽った。マルキスの持っていたプロジェクターもそうだが、この世界の魔道具には随分と驚かされる。依頼が終わったら魔道具についていろいろ調べてみるのも良いかな……そんなことを考えながらふと目線を上げると、リッサはどこか寂しげな表情で俯いていた。どうかしたかと私が問いかけるより先に、リッサはぼそりと呟いた。


「これ、お姉ちゃんと一緒に作ったんだ。」

「……そうなんだ。」

「うん。私が大枠の形を作って、魔法回路の部分はお姉ちゃんが。ルリはガステイル様って知ってる?」

「さっき話を聞いたよ。マルキスのお父さん……魔王を倒したエルフの魔法使い、だよね。」

「そう。小さい頃にガステイル様の話を聞いて以来、私も夢中で彼と同じ魔法の練習をしたの。まぁ、上手くいくわけなかったんだけど。」

「……」

「リーダーから聞いてるでしょ。私の実家が魔法で成り上がった家系で、魔法を使えない私がそこから逃げたってこと。」

「まあ、少しだけ事情は聞いたわ。」

「無視され続けてたんだ。両親にも、使用人にすらも。食事は余り物の冷えたスープ、服なんかろくに買い与えて貰えない。ただ一人、お姉ちゃんだけは私を人間扱いしてくれた。お姉ちゃんだけが私の味方だった。」

「いいお姉ちゃんなんだね。」

「そう。だから私はお姉ちゃんのために頑張るの。私が成果を出せば魔道具士としてのお姉ちゃんの評価が上がり、私を見下した他の家族がきっと悔しがる。ルリも……手伝ってくれるよね?」


 上目遣いで私を見つめるリッサ。私はふぅと息をついて、


「当たり前でしょ、仲間なんだからさ。」


 リッサの手を取りながら言う。そのままリッサの手を引きレイズ達に合流すべく駆け出した。

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