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転移したらAランク冒険者でした※ただし最低ランク  作者: 盈月
第二章 忘れるからこそ、記憶と思い出に依存する
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Ep.61 望まぬ才は刃を侵す猛毒となる⑨

「ラン……なんでアンタが!?」


 訓練場内部、模擬戦用の砂のフィールドの上で、私は何故かそこにいる魔道具士を見つめ驚きを隠せずにいた。


「なんでって……俺も冒険者だからさ、Dランクのな。」

「魔道具士なのに冒険者登録が可能なのかしら?」

「別に登録だけなら誰でも可能さ、俺だけがしていることではない。アンタみたいな職も家もない奴だってあっさり冒険者登録できるのは、アンタがよく分かってるだろ?」


 そういうことではない、と私が口を開こうとしたと瞬間であった。2階の外周部分に円形に設けられた観客席の中からふとベルジオの姿が気に留まる。彼が言っている知り合いの冒険者とはランのことだったのかと自分で合点がいきつつ、私は改めてDランク冒険者達に対峙するべく、魔道具に魔力を通し始める。


「ようやくやる気になったか……オイ、そこの二人。」


 ランは目の前のDランク冒険者2人を睨みつけながら言う。


「なんだよ。」

「何?」


 2人はそれぞれ剣と杖を構えながら、目線だけ背後のランに送り呆れたように応答する。


「Dランク三人が寄って集って格下の女一人を痛めつけるみたいな絵面は、俺はゴメンでねェ。俺は俺だけでアイツと勝負させてもらう。俺が戦う時はお前らは手を出すんじゃねえぞ。」

「なんだと?」

「その代わり、お前らが戦うときは俺も手を出す気はねえ。」

「ふざけんな!」


 クライスがランに向けて激昂し、掴みかかろうとすべく詰め寄った。そして胸倉を掴みランへと啖呵を切る。


「籍だけのろくに功績のないようなお飾りDランクの言うことを、なんで俺たち叩き上げが聞かなきゃならねえんだ?」

「なんで?弱いからだろう。」

「え……」

「弱い……だと!?」


 クライスと女性冒険者はランの言葉に反発しようとする。しかしランの殺気に気圧されてしまい、2人は口を噤んだ。


「久々にギルドに来てビックリしたぜ。お前みたいな奴でもDランクを名乗れるなんて、冒険者ギルドも程度が下がったなってよ。」

「ぐっ……」

「だから共闘するお前らには何も期待していない。前座であっさり散るか、俺に先を譲ってただの傍観者として過ごすか、好きな方を選べ。」


 ランの殺気が強まる。かなり遠くにいる無関係の私ですら思わず息を飲むほどのその殺気に当てられながらも、クライスはなんとか堪えランへと言い返した。


「チッ……ここまで言われて黙っていられるかよ!ミィルス!俺らから行くぞ、そんでコイツの出番は無しだ!!」

「そ、それでいい。あたし達だってDランクなんだから、Bランク一人に負けるわけにはいかない!」


 クライスとミィルスはそれだけ言うと踵を返し、覚悟を決めた眼差しで私を睨みつける。私はゆっくりと拳を構えて、攻撃に備えた。


「行くぞ!羽々長け!『天火燦蚕(ザ・サン)』」


 先手を取ったのはクライスであった。クライスは大きな炎の蝶を召喚し、私へと放った。


「なっ……!」


 炎の蝶を召喚し、対象に投げつける炎の最上位汎用魔法『天火燦蚕(ザ・サン)』。クライスの魔法はこちらに来た日に見たきりであったが、そのときの『天火燦蚕(ザ・サン)』とは比べものにならない程の速さで、炎の蝶は私に襲いかかった。


「弾速上昇……いいや、多分蝶の大きさと火力も上がっているわね。」


 私は自分へのダメージを確認しながら、立ち込める煙から脱出しクライスの魔法を分析する。しかし、煙から現れた私に、再び炎の蝶が襲いかかる。


「のんびりしている暇はないぜ!!」

「なっ、もう次が……!?」


 私は再び、炎の蝶をまともに食らってしまう。蝶は着弾と共に巨大な火球と化し、唸る火炎が私を包む。私はその炎を堪えながら、クライスとミィルスの様子を伺っていた。


(あの二人がいる辺りの空間……靄がかかったような魔力が漂っている。蝶のスピードはすごいけど、なんとか隙を作り出して擬似妖羽化(ヴァンデルン)さえ完成させれば……)

「ルリ、頑張って!!」


 背後から自分を呼ぶ声がする。それを聞いて振り返って2階の観客席を見上げると、レイズ、リッサ、ラズベリィがそこにいた。三人とも本気で私を心配するように見つめていた。


「レイズ!」

「よそ見してんじゃねえ!!」


 クライスの怒号に反応し、私は紙一重で炎の蝶を避ける。しかし息つく暇もなく次の蝶が迫る。


「避けるだけじゃ何も解決しねえぞ!!」

「それはどうかしら……それだけ撃ち続けたら、アンタはいつかガス欠するでしょう?スタミナ勝負、しようじゃないの。」

「なっ……」


 クライスの魔法を撃つ手が止まる。クライスの顔はわなわなと怒りに歪み、その拳は強く、固く握られていく。


「舐めやがって!!」


 クライスが腕を大きく広げ、咆哮する。その瞬間、クライスの背後に無数の炎の蝶が召喚されていく。私はそれを見るなりニヤリとほくそ笑むと、胸に手を当てて叫んだ。


「かかったな!!羽々長け!天火燦蚕(ザ・サン)!!」

「なに!?」


 青く巨大な炎の蝶が、私の体を包み込む。やがて火球は周囲の空気ごと丸く成長し、勢いを増していく。


「クライス……あいつ、自分に火炎の魔法を……」

「畜生ォォ!!」


 クライスが展開した炎の蝶を全て発射する。しかし、


「ぐぅ……おごっ……」


 巨大な火球を食い破り矢のように飛び出した、焔の四翅を背中に掲げるBランク冒険者。その肘の一撃が、クライスの蝶の百倍早く彼の腹部に突き刺さっていた。

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