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転移したらAランク冒険者でした※ただし最低ランク  作者: 盈月
第二章 忘れるからこそ、記憶と思い出に依存する
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Ep.59 望まぬ才は刃を侵す猛毒となる⑦

 ベルジオ商会の内部。私は服をいくつか見繕ってエレスに差し出す。


「これからギルドに顔出さなきゃいけないから、一旦これだけ貰おうかしら。」

「はい、ありがとうございます……あわせて420ルペアです。」

「あ、えっと、これを……」


 私は懐からベルジオ商会のメンバーズカードを取り出し、エレスに見せる。エレスはそれを見留めると、深々と一礼しながら言った。


「失礼しました……ルリ様のメンバーズカードを確認致しましたので、お代は半額で210ルペアでございます。」

「それじゃ、これで。」


 私は懐の袋から金貨をいくつか取り出し、エレスに渡す。エレスはそれを受け取り、商品を私に差し出しながら独り言のように呟いた。


「そういえば、オーナーも今日は冒険者ギルドに顔を出すとそう仰っていました。」

「ええ!?冒険者ギルドに……なんで?」

「申し訳ございません、そこまでは……。ただ、旧知の者にお会いするそうで。」

「ふぅん……まあ、会ったら軽く挨拶くらいはしておこうかしら。」


 ベルジオの旧知の人間って、そういえばあのランとも昔馴染みみたいな様子だったし、彼みたいなガタイのいい冒険者の知り合いがいるのだろうかと私はふと考える。それから私は服を受け取り、店を出て一度アルマスト邸へと戻った。私は家の入口から見える時計をチラと見て時間を確認する。


「もう11時過ぎ……急がなきゃ。」


 それから私は浴場に直行し、体の汗と汚れを落とす。こちらに来てから少し伸びた髪も軽くまとめ、先程買った服とズボンに手足を通した。


「うん。思った通り、動きやすい!」


 腕をグルグルと回したり、軽くその場でジャンプしながら私はそう呟いた。脱衣スペースに置いた手甲や小さなポーチを腰にセットし、ふうと大きく息を吐く。洗面台で顔を軽く洗って、目の前の鏡で自分の姿を改めて確認する。数日前、遺跡から戻ってきたばかりのひどく落ち込んだときの私とは全く違う、覚悟を決めた表情の自分と睨み合う。


「……よしっ!」


 私はそう呟いてアルマスト邸を出る。時刻は11時半を回っていた。



 同時刻、冒険者ギルドの受付近くのテーブルで、レイズとリッサはジュースを飲んでいた。


「遅いね、ルリ。」

「遅いというより、心配だよ!昨日魔道具を買いに行って監禁されたとか言われたし、もうすぐ約束の時間なのにまだギルドに姿を現さないし。Cランクにならないとルガルの救出作戦に連れて行けないってことなのに、その試験に遅刻なんてしたら……」

「まあ、認められないだろうね。」


 頭を抱えるレイズを意に介さず、リッサはズズズと音を立ててジュースを啜る。レイズは泣きそうな顔をしながらレイズに訴えかけるように言う。


「なんでそんなに他人事なのぉ!?」

「だ、だって実際、他人事だし……不正にランク上げるのだって良くないじゃん?」

「でも、ルリがいないとルガルが帰ってこないんだよ!だから今回のランクアップ試験は合格しないと困るよ!ルリ……。」


 レイズは唸り声を上げながらテーブルに突っ伏していた。リッサは呆れた顔で視線を下ろすと、リッサの足元に謎の袋が置いてあるのを見つけた。


「リーダー、それ何?」

「ああ、これは……“気付け”だよ。」

「気付け?」

「うん。昨日ギルドマスターに用意するように言われてさ。ルリが疲れてるだろうからって。」

「ふぅん。」


 レイズはそういうと、袋をテーブルの上に持ち上げ中の玉を1つ取り出す。団子のように固められた緑色の塊を見て、リッサは顔を歪めた。


「うぇー!」

「はは、リッサにはキツいかな。でも効果はホンモノだよ!王都でも使った調合なんだけど、寝たきりのおじいさんが三日三晩夜通しで動き回っても平気なくらいさ!」

「全く、何回聞いてもデタラメなドーピングアイテムね。」


 レイズの背後から、呆れるように笑う声が響く。その声の主は座っているレイズの上から緑色の玉を手に取り、3分の1くらいにちぎって口に放り込んだ。


「味は……まずまずね。でも確かに疲れは取れたかも。ありがとう、レイズ。」

「ルリ!!」


 レイズは急にいきり立ち、(ルリ)に勢いよく抱きついた。私は思わずよろけながらギルドの壁にもたれかかった。


「ちょっとレイズ、これから試合だからほどほどにしてちょうだい。」

「もう……心配だったんだからね!」

「あぁ……ごめん。いや、私にもなにがなんだか分からなかったんだけどさ。」


 私はそう言って、レイズの両肩を掴んで体を離す。レイズは私が手に嵌めている手甲に気付いた様子で、まじまじとそれを見つめていた。


「それが、ルリの武器……」

「終わったら好きなだけ触らせてあげるよ。それじゃまた、後でね。」


 私はそう言って、ギルドの受付カウンターへ進んだ。受付担当のスタッフに話を通すと、奥の階段からアルマストが小走りで駆け下りてきた。


「それじゃ、訓練場に行きましょうか。」


 私はそのままアルマストの後をついて行った。

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