表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転移したらAランク冒険者でした※ただし最低ランク  作者: 盈月
第二章 忘れるからこそ、記憶と思い出に依存する
58/78

Ep.56 望まぬ才は刃を侵す猛毒となる④

「選んだか?」


 ランの店の奥、隠れ家のような穴に連れてこられた私は魔道具の元になる武器を選んでいる。とはいえ私自身は武器の扱いに自信があるわけでもなく、せいぜいあのナイフか……まあ、鈍器の方がしっくりくるなとそう考えていた。


「剣とか槍が多いけど、鈍器はないのかしら?」

「メイスならあっち。手甲ならそこだな。」

「手甲か……。」


 ランに言われて私は少し思考する。擬似妖羽化(ヴァンデルン)は性質として反応速度や筋力、俊敏性を大きく上げる身体強化魔法に近いだろう。速さで翻弄するのであれば刀や槍のようなリーチを確保するよりは小回りを重視した方が良いように思う。


「それに手甲なら、構えるまでの隙も少ないか。」

「決めたか?ならこっちに来い。」


 ランに呼ばれた私は手甲を手に持ち、炉の前にある金床のようなものの前に腰掛ける彼の元へ駆け寄る。ランは右手に持っていた脇差を金床の上に寝かせた。


「今から、魔力の型を取る。」

「魔力の型?」

「ああ。その魔道具の原型は魔法で加工した金属でできていてな、魔力への抵抗反応の際に綿密に枝分かれしながら魔力の空洞を作る性質があるんだ。そんでこの炉にも仕掛けがあってな。とある特殊な質の魔法で生まれたその炎を使って焼くことで、その金属は変性し頑強な性質を持つようになる。」


 魔力を通すことで魔力の空洞を作る……抵抗反応という言葉からもなんとなく電気のようなイメージが頭に浮かぶ。電気抵抗の高い木材に高電圧を流したときにできる木の根のような焦げ跡を想像し、私は言った。


「つまり、今から作るのは魔力の通り道……ってことかしら?」

「ご名答。それも魔道具の回路起動装置を通った後……つまり、魔法効果を発動しながら流れる魔力の通り道だ。穴が大きすぎると魔道具の強度が落ち、逆に小さすぎると精錬の段階で穴が塞がったり魔道具全体での魔法効果にムラが出ちまう。その上で枝分かれする魔力を操作して魔道具全体に穴を通さなければならない。」

「……」

「ま、ゴチャゴチャ言っても仕方ねえ。一度だけやるからしっかり見てろ。」


 ランは絶句した私を見てやれやれと肩を竦め、金床に置いてある脇差に右手を翳した。表情は厳しく険しくなり、右手が強く光り輝く。


「ぐっ……う、がああああっ!!」


 全身の力を振り絞り集められた魔力は、脇差の内部を掘り進みまるでアリの巣のようなトンネルを作り上げていく。


「ハァ……ハァ……まあ、こんなもんか。アンタなら今ので十分再現できるだろう。」


 ランがそう言いながら右手を下げる頃には、ナイフの刃全体を巡るような網目状のトンネルが、緻密なバランスで張り巡らされていた。


「……金床、いるかしら?これ。」

「普段は鍛冶で武器そのものをいちから作ってるんだ。この金属の材料だって安くはないし、この方法は普通の金属じゃ上手くいかないから。アンタが多少なりとも鍛冶の心得があるならそれでも良かったが……」

「生憎ね。」

「全くだ。」

「ということは、必ずしもこの金床の上でやる必要はないってことね……」


 私は手につけた手甲を打ち合わせてカチカチと鳴らしながら呟く。ランは呆れた表情でため息をつきながらしぶしぶ頷いた。


「2つ、質問があるわ。」

「なんだね?」

「この作業は、魔力を通すための穴を作る作業……だったら、この魔道具を使うときのフルパワーの状態になっておいた方がいいかしら?」

「……擬似妖羽化(ヴァンデルン)のことか。加減が効くなら別に良いんじゃないか?」

「か、軽いわね……じゃあ2つ目。これも普段使いを意識した質問だけど、これ付けたままでやってみていいかしら?」

「やれるもんならな。せっかく魔力が見えるっていう目があるんだからよ、ちゃんと見ながらやった方が確実だろ。」

「分かったわ……それじゃ」


 私はそれだけ言うと、右手の手甲を外し胸に当てる。ラルカンバラと戦ったあの日を思い出しながら、魔力を右手に込めながら叫んだ。


「羽々長け!『天火燦蚕(ザ・サン)』!!擬似妖羽化(ヴァンデルン)モード!!!」

「ちょっ……お前、俺は忠告のつもりで!!」


 熱を帯びた魔力が、私の身体ごと焼き尽くさんとばかりに全身を巡る。背中から生えた2対の翅を小さく揺らしながら、私は再び右手に手甲を装着する。


「よし……せいっ!!」


 掛け声と共に、手甲を装着した拳同士を正面でカチンと合わせ、魔力を流し込む。


(戦闘中を想定して、自分が使ううえで魔力を流し込みやすい場所……それは装着した状態で触れてないと分かりにくいはずだったから。あとは……チカチカっと見える私の魔力を頼りに……流し切るッ!!)


 光りながら手甲を削る魔力を五感で捉えながら、私は魔力の通り道を完成させた。その様子を見ていたランは、苦々しく眉を顰めていた。


「何かしら?」

「……残酷だよな。やりたくもないことの才能があるってよ。」

「それはつまり、嫉妬だと受け取ればいいのかしら?」

「ああ。」

「つまり、今のところこの魔道具作りは順調ってことね。」

「……順調どころか、ほぼ完成だよ。あとは今作った魔力の通り道を回路にして精錬だ。それなら……多分6〜8回路は入るぜ。あっちのガラクタから取ってきなよ。」


 ランの言葉に従い、私は武器が置かれていた箱の隣から回路用の素材を物色する。ランは急にどっと疲れたように椅子に勢いよく腰掛け、


「ハッハッハ……」


 と天を仰ぎ笑った。振り返って彼を不思議そうに見つめたが、ランは私を意図的に無視しているようだった。そして私に聞こえないくらいの小さな声で、何かを呟いた。


「畜生、なんで俺にその才能がないんだ……なんでアイツに、俺の才能をやれないんだ……。悔しいよなぁ、ファプレ……。だが、それ以上に」

「勝ちたくなった。俺は明日戦えるんだ……勝ってやる、あの魔道具に。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ