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転移したらAランク冒険者でした※ただし最低ランク  作者: 盈月
第二章 忘れるからこそ、記憶と思い出に依存する
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Ep.53 望まぬ才は刃を侵す猛毒となる①

 アルマストからBランク昇格を言い渡されてから一夜が明けた。昨晩は散々泣いているうちにいつの間にやら自室で眠っていたようで、目覚めてから慌てて服を着替えた。昨日とは違って今日は目覚めも早く、朝食をアルマストと共に取ることにした。


「おはようございます、ルリさん。」

「おはようございます、アルマスト。」


 私は先に食べていたアルマストを一瞥し、食事の前に座る。そのまま紅茶の入ったカップをまじまじと見つめていると、アルマストが茶化すように言った。


「コーヒーの方が良かったかしら?」

「あんたねぇ……」


 私は昨夜のことを思い出しながら、顔を真っ赤にしながら否定する。人前であれだけ本気で泣いた日も久しぶりだったもので、昨日の今日で弄られるのは不本意だ……なるべく早く忘れてほしいと思いながら、私は目の前のトーストにかぶりついた。


「今日はどうするつもり?やっぱり買い物かしら?」

「もちろん。流石に格上相手に武器無しじゃ分が悪いでしょ。」

「へぇ……それじゃ、武器屋に?」

「うーん……そのことなんだけどさ。あのナイフってどこで買ったの?」

「あぁ……」


 アルマストはナイフという部分に反応して、私から目を逸らす。そのあからさまな態度を、私は訝しむように見つめる。


「魔道具屋よ。アレでいいなら、私は5000ルペアで買えたわ。ただ……うぅん、どうだろ、私はあの魔道具店に行くのはおすすめしないわ。」

「何よ、その言い方。気になるじゃない。」

「理由ならあるわ。魔道具は廉価品なら完成品を買うよりも作った方が安上がりだから、その分防具に回したりだってできるわ。多分ルリなら、あのナイフくらいのものならベース武器と回路の素材を買えば数時間で組み立てられると思う。」

「その回路の素材は……」

「雑貨屋。それか簡単な回路なら武器屋にも置いているわ。それに、ザイリェンの魔道具屋の店主は……ちょっと難しい人なのよね。」


 アルマストはとにかく魔道具屋で魔道具を買うことから遠ざけようとしているようで、変な慌て方をしていた。なので私は容赦なくそこをいじくっていくことにした。


「難しい人、ってどういうこと?」

「あー、うーん……と、とにかく!明日の模擬戦用の武器なら、武器屋と雑貨屋で何とかなるはずよ!だからこの話は終わり!私行ってくるから!!」


 アルマストはそういうと無理やり朝食を喉にねじ込み、いきり立ちさっさと食堂を出て行った。彼女の様子にどうも腑に落ちない何かを感じながら、


「とりあえず、時間があれば魔道具屋にも顔を出すことにしようかしら。」


 私はそう呟いて、紅茶を飲み干した。

 朝食を優雅に終えた私は、昨日受け取った報酬を片手に屋敷を出る。そのまま大きな街道に出て道なりに進みながら、


「そういえば、武器屋も雑貨屋も魔道具屋も場所を聞くのを忘れていたわね……」


 と、ぽつりと呟いた。まあそれっぽい建物を探せば良いかと、私は楽観的に考えながら辺りを見回していると、


「武器屋と雑貨屋と魔道具屋ですか?ルリさんもなかなか浮気性で困りますねぇ……」

「ひぃぃ!!!」


 背後に立った大男――ベルジオ商会代表のオリオン・ベルジオがそう呟いた。私は腰を抜かしながら背後を振り向き、泣きそうな顔で彼を見上げていた。


「メンバーズカードもお渡ししたというのに、いつまで経ってもベルジオ商会で買い物してくださらないから……まさか、他所で何か買おうとなさっているとは。」

「き、急に後ろに立たないでください!!それに今回は服じゃなくて武器なんです。ベルジオ商会に武器の取扱いはないでしょう!?」

「ハッハッハッ!冗談ですよ。まあ護身用アイテム程度なら置いてますが、冒険者様の使うようなものは置いてませんねぇ。」

(じょ、冗談じゃないわよ全く!なんでこの人が……あっ!)


 私はベルジオを見上げながら辺りの様子を窺った。そこで漸く、ここがベルジオ商会の目の前であることに気付いた。無意識のうちにフラフラとここまで歩いて来たことに、私は苦笑いを浮かべる。


「それにしても、随分とハイペースに武器を取り替えるんですね。」

「いえ、まぁ。最近戦う相手も相手なもんで……」


 よくよく冷静になって考えてみると、ラルカンバラに飛竜にリィワンに……最近戦った連中、どいつもこいつも相手が悪すぎないか?そりゃナイフ1本で戦い抜くには無理があったなと、私は王都と遺跡での戦いを振り返った。


「だったら、魔道具屋で良い物を買った方がいいよ。予算はいくら?」

「一応、手持ちには9000ルペアくらい持ってますけど……でも、私が魔道具屋に行くことをアルマストが渋ってたんですよね。」

「あー……」


 ベルジオは少し空を見上げながら、合点がいったように苦笑いを浮かべながら何度か頷いた。ベルジオとアルマストをしてこの反応にさせる魔道具屋の店主とやら、いったいどんな人間なのかと興味が湧き始めた私を差し置いて、ベルジオは再び口を開いた。


「いずれにしろ、9000ルペアなら彼も売ってくれるでしょう。私も同行するんで、その魔道具屋に行ってみませんか?」

「そ、それじゃ、お願いします。」


 私は立ち上がり、ベルジオにおずおずと頭を下げる。ベルジオはにこりと微笑み、用意があるだけ言い残し店の中へ戻っていった。

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