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転移したらAランク冒険者でした※ただし最低ランク  作者: 盈月
第一章 教育方針の反りが合わないなんてのは、異世界だって同じことで
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Ep.13 親バカの心、子知らず③

 アルマストの屋敷から出た私はザイリェンの町をぶらぶらと歩いていた。王都へ向かうのは3日後ということで、とりあえず今日は町の観光を兼ねつつギルドには午後から顔を出そうと考えていた。


「それにしても、綺麗な町並みだな。」


 整備された街道の両脇にはレンガ造りの建物が建ち並んでいる。平たく言えば中世風な町並みの遥か先には、町を囲うように城壁が作られている。とはいえゴミなどはかなり少なく、文明レベルが現代日本と比べて著しく低いわけでもないみたいだ。そんなことを考えながら歩いていると、今朝のアルマストの話が脳内をリフレインする。


「ネオワイズ盗賊団……」


 確かに、魔法を使えるようになってからの私は軽はずみだったと言わざるをえない。日本であんなことがあったから、この世界に来て魔法なんて力を手に入れて浮かれていたんだと、いい大人が自制しろと肝に銘じるいい機会だったと思う……流石に知られた時点で終わりってことはないだろうけど。それにもうひとつ、気になることが。


「なんで今更、レーナの夢なんか見たんだろ。」


 レーナは小学校からの友人である。大学で私が上京するまでいつも一緒に過ごしていた。卒業後保育士として地元に戻ってから彼女と再会するのだが、それはまた別の話だ。そして……私が日本に戻って、謝らなきゃいけない人でもある。そんな彼女の夢を見たことが、私はどうしても気になっていた。


(もしかして、この世界に来たことと何か関係があるのかもしれない。とはいえ毎日あの夢を見るとなると……)


 そんなことをぼんやりと考えながらふらふらと歩いていると、ふと五階建てほどの大きな服屋の前で足が止まった。街道の交差点の角、まるで現代日本で見たデパートのように佇むその建物が無性に気になった私は、吸い込まれるように中へと入っていった。


「いらっしゃいませ」


 カラカラと音を立てながら扉を押し開けると、中にいた女性店員が頭を下げながらそう応対した。レンガ造りの大きな建物から予想していた内装をいい意味で裏切るくらい小綺麗な店内に、私は感嘆の声を漏らしていた。


「すごく……綺麗ね。」

「ありがとうございます。当店のご利用は初めてでございますか?」

「え、ああ、はい、そうです。」

「かしこまりました。上の者をお呼びしますので、店内でお待ちください。」


 女性店員はそう言って店の裏へと消えていった。私は店内の服をゆっくりと見て回ることにした。

 1階は女性用の服、中でも薄手の普段着のような服が多く取り揃えられていた。今はアルマストの服を借りているがあまり迷惑をかけすぎても良くないと、服くらいはいくつか買っておこうと思っていたのだが……とはいえ、流石に薄すぎるな、朝と夜はまだ冷えるからなと考えていると、ふと私の脳内に1つ疑問が浮かんだ。


「こっちにも四季ってあるのか……?」


 今の気候で着るには流石に薄すぎる服を、客が真っ先に目をやる1階の真正面に置くとは考えにくい……ということは、これから薄い服を着る機会があるということではないか?日本の四季ほど明確な環境の差がないにしろ、それに近いような気温の変遷をするのではないか?私はそんなことを呟きながら店内をうろつき服を見定めていた。すると、店の奥側にある個室のカーテンが勢いよく開いた。


「えぇっ!?どうしてルリがここに!?」

「あれ……?」


 個室の中から出てきた()()は私の顔を見るなりそう叫んだ。白いブラウスに青系統のミニスカートという装いで出てきた少女に思わず目を引かれる。あ、そこは試着室だったんだとか随分可愛い系の服を選んだなとか、そんなルリの思考は少女の声と顔で吹き飛ばされた。


「レイズあんた……そんな趣味があったなんてね。」

「ち、違う!」


 少女――レイズに私は苦笑いをしながらそう言った。レイズは恥ずかしそうに頬を赤らめ俯きながら、衝撃のカミングアウトをする。


「ボ、ボクは正真正銘女だよ。ちょっといろいろあって、普段はあんな格好してるだけで……」

「な、なんだってえええええ!!」


 私は他人の迷惑にならないくらいの大きな声でリアクション芸をする。レイズはあたふたしながら


「ちょっと、大袈裟だって!」

「やっぱり、そう思う?」

「お、驚いてなかったのかよ!」


 といつものように私にツッコミを入れる。中高生くらいの男子にしては華奢な見た目だったので実際それほど驚きはないのだが、改めて本人の口から聞くと納得というよりは、まあ驚きの方が大きかった。


「ということはあのパーティーって、ルガルくんのハーレムみたいなものなのね。」

「絶対言うと思った、それ。」


 まあ、ハーレムというには女性陣にパワーバランスが傾いているけど、と続けようとした私を呆れた口調で窘めるレイズ。そして改めて咳払いをした上で、私に釘を刺すように言った。


「とにかく、これは皆には内緒でお願いします。ギルドマスターには知られているはずですが、他のメンバー達には言ってないので。」

「分かってるよ。」


 レイズは私の返事を聞き終わると、再び試着室へと戻った。

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