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第一章最終話 『民衆英雄/神官/武僧/賢者』

主人公カリスの現在視点


オルキッソによって抱き抱えられながら街へと入る。

明け方であるためか人通りは少ない、モコモコとした毛皮のようなものを着込んでいる人の割合が大きい。

「ギルド職員の朝は早い、冒険者もだけど」

ボソリとオルキッソは呟く、どうやらギルドの職員さんが急いでギルドへと向かっているようだ。

「オルキッソは、いいの?」

「問題ない」

そういえばオルキッソは魔法ギルドの職員だったはずだ、それなのに僕たちと一緒に誓約の神殿まで行って朝帰りしたのだ。

ダークエルフである僕と帰るところを見られたらオルキッソが何かを言われるのではないかと不安になって心配そうに言うけど、オルキッソはサラリとなんでもないことのように驚くべき事を言った。

「もう辞めるつもりだったから。」

「え、どうして?」

「言った通り父の友人の言葉に従って」

そういえば魔法ギルドで会ったときそう言ってたような、けどそれにしたって辞めるって……

「元々そういう取り決め、気にする必要はない。」

「オルキッソがいいなら、いいけど……そろそろ離してくれない?」

「ダメ、神殿に着いてからまだやることあるから。」

「自分で歩けるよ?」

「温存」

「過保護ですなぁ」

イグニは背中に縛り付けていた吟遊詩人さんを抱き抱えるようにして目だけは辺りをぐるりと見回している。

警戒をしているようだが、オルキッソとの言い合いしてると微笑ましそうに言われた。

出来ればイグニからも離して貰えるように言って貰えるとありがたいんだけど?

人通りが少ないとはいえ、それでもチラチラと見る人はいるわけで……

朝早く起きた人のいずれも奇異なものを見るような視線を投げかけていたから早く離れたくてもオルキッソが離してくれないのだ。

このままだとオルキッソに悪評がついて迷惑をかけてしまうのではないかと思ったら隠れたくなるのは普通の事だと思う、多分。

「まだ力を上手く使えてない未熟者が無理をする事が怪我をする要因、大人しくしてなさい」

「僕だけなら平気だよ?」

「……まだ使う所あるから大人しくなさい」

何故か呆れたようなため息をつかれながら言われた、心なしか僕を抱く手の力が強くなったような気がした。

暫くしてオルシアが眠っている神殿に辿り着いてようやく下ろされた。

朝の光を浴びた神を模した美しい彫刻は影も相まって厳かで見下ろされてるような雰囲気を感じる。

前に来た時はなかったような気がするけど。

「どうなされましたかな?」

「あの神像あったかなと思って」

「この街が出来た時からある神殿の神像、貴方が気付いてなかっただけよ。」

「カリス殿もようやく周りを見れるだけの余裕ができたということですな、よきかな。」

イグニは嬉しそうに尻尾を振る。

風が吹いて上を見れば明け方の太陽の光が心地良い。

うっすらと双子の月が見える青空が綺麗だ。

「……空があおい」

「行くわよ」

オルキッソにそう言われ、ついていく。

中へ入れば神官長が驚愕した顔で僕を見ていたがすぐに柔和な笑みを浮かべて相対する。

「お帰りなさいませ、ダークエルフ殿」

「……ふぇ?」

警戒されると思っていたから、その言葉に困惑していると神官長は続ける。

「おや、知らなかったのですか?村の司祭様よりお伺いをしておりますよ。」

「司祭様……え、僕何も聞いてないけど……?」

「あの方はサプライズが好きですから……知らなかったのも仕方ないでしょう。」

神官長様は僕達を奥へと誘う、その部屋の中にはオルシアが寝かされていた。

ここを出て行った時と何一つ変わらないままだった。

近くにはあの吟遊詩人さんの夫の人がソワソワとあちこちを歩き回っていた。

男吟遊詩人さんはこちらの姿を認めると同時に僕の姿を見てギョッとして立ち止まる。

「落ち着きなさい、この方達は無事にご婦人をお救い出して戻ってこられたのですよ。」

「でも、ダークエルフがこんな堂々と」

オルキッソの目は細められ、何かを言いそうになるがイグニが遮る。

「この婦人を寝かせたいのですがよろしいですかな?」

「こちらへどうぞ……手当はされてるようですが念の為に診ておきましょう」

「魔法の眠りでしばらくは目覚めないけど、あと少しで起きるはず。」

「魔法の眠り、そんなの誰が」

「もうその人物は死んでいた」

不安そうに僕を見る男吟遊詩人さんはそう言うが、オルキッソがそう告げる。

かけたのはおそらくファトゥスの仲間の神官だと。

「神官、まさかアフマクという神官もどきですか。」

「もどきって……一応神官ですよね?」

「いえ、彼女は数日ほど、一昨日程でしたかな。来たのですよ。」

神官長はため息を吐いて続ける。

「村の司祭には修行を終えたのは娘含めて数人、途中で修行を放り出して逃げたアフマクという女が8年前にいなくなったと聞いておりましたので、聞いてみたら免許皆伝という嘘をついたのですよ。」

神官長は悲しそうに呟く。

「その話は後にして、カリス、貴方の力を持って神官を助けてあげなさい」

「ふぇ、それどういう?」

「貴方の手は人を癒し救済する力がある。」

先ほどのオルキッソの時と過去のあの人達や老人の件も繋げてオルキッソは続ける。

その力は聖騎士としての癒しの手と呼ばれる力だと。

「そんな力、どうすれば……?」

「私にした時と同じようにすればいい」

そう言われて、オルキッソに触れた時のことを思い浮かべる。

おそるおそるオルシアの手を掴んで祈りを捧げると頭と腹部に打撃を受けた衝撃が走る。

だが実際にはそのような事は行われてない。

オルシアの受けた痛みが流れ込んでくるのを感じ、身体から力が抜ける。

……そうか、この脱力感を感じたりしてたのはこういう事だったんだ、でも嬉しいかもしれない。

相手の痛みを知り、少しでも軽減して痛みを理解する事で助けになれるのなら嬉しい。

崩れ落ちる僕の様子にイグニは驚き駆け寄ろうとする足音が聞こえる

崩れ落ちる僕をオルキッソが受け止めてしっかりと立たせてくれる。

オルシアの手をもう一度優しく握り祈る。

オルシアの瞼が開かれ、薄ぼんやりとこちらを見上げ、見回す。

「……かりす、様」

「……おはよう、オルシア」

オルシアは良かったと呟き身体を起こそうとするが神官長に止められる。

男吟遊詩人さんは目の前の光景が信じられないという目で見ている。

神官長は静かにただ神へと祈った。

やっと、恩返しができるよ、オルシア。

そして暫くして神殿内に足音が響き渡る。


第一章最終話更新完了しました!

これでようやく一区切りです。

体調不良やメンタル不良は執筆の敵なのでお身体をお大事に!!

次は第二章となりますが少し書き溜めます。

レビュー、感想、いいねなど様々な評価をよろしければお願いします!作者の力になります!!

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