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完璧な火曜日

作者: 東藤沢蜜柑
掲載日:2023/12/10

 "完璧な日曜日"に現れた怪獣は引き続き世界を蹂躙している。そこに暮らす人々の命を顧みることなく白人は持てる限りの核爆弾を怪獣に向けて放ったが、その破壊は人類の地上からの絶滅を早めるだけで、当の怪獣自身の生命活動を停止させるどころか、何の感覚を刺激することもできなかったようだ。

 そしてその怪獣が遂にこの国に上陸するらしい。完璧な日曜日。それは彼らが遂に侵略者を打ち負かし、自分たちの土地を取り戻した日だった。虐殺には虐殺を。人口で勝る彼らは一人一殺の精神に目覚め、その肉体を遺憾なく発揮した。銃で倒れた仲間を盾に侵略者に近付き、抱き付いて自爆した。これが何の為の争いなのかは殺す側にも殺される側にも最早誰にも分からなくなっていた。しかしその甲斐があり、"完璧な日曜日"と名付けられた作戦は遂に成就した。これから彼らは彼ら自身の国を作る。だが、それを苦々しく思っていた白人たちへの福音かのごとく、突如として怪獣は現れた。これで彼の地を滅ぼせる。何せ相手は怪獣なのだ。放っておけば人類存亡の危機だ。即ち、怪獣を滅す為に彼の地に核爆弾を投じることは、人類にとって正当かつ神聖かつ、その上でなお苦渋の決断なのだ。君たちの名は人類史に永遠に刻まれる。史上初の怪獣出現の為にその生命と歴史と文化のすべてを失った聖なる犠牲者として。


 しかし事実は小説よりも奇なりということで、映画の中ではさすがに核ミサイルを撃ち込まれれば絶命する怪獣も実際には絶命しなかった。それはあるいは外宇宙からの使者なのかも知れない。もしくは神の気紛れの被造物か。いずれにせよ、地球人類に思考可能な生命のスケールを遥かに凌駕していた。そんな怪獣が遂に、この国にやってくる。一人残らず殺しにくる。だから差し詰め、今日は完璧な火曜日だ。ようやく僕と君が一つになれる日だ。今更何に抗うつもりもなくした人々の内、まだ気力の残っている人は最後の抵抗として首を吊り、腹を割き、睡眠薬を飲んで纏う服に火を着けた。僕はというと自転車を漕いでいる。逃げる為じゃない。ただ、どうせ死ぬなら一度はやってみたかったことをやろうと思った。果てへの旅だ。ここから北に向かってひたすら自転車を漕ぐ僕が、果たしてどこで怪獣に踏み潰されるのか。それを確かめることは充分"生きる意味"になる。そうだろう?

 充電が残り10%もないスマホでTikTokを開くと、見知らぬラッパーが自らの売れなさと、売れなくても歌うこと、自分より才能があったのに音楽辞めた友達について生配信でラップしていた。

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