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絶望と情熱

 学校に行かない膨大に時間の有り余る暇な日中、純は一人近くの小学校の校庭にボールを持って何となしに行ってみた。そこで久しぶりに純はボールを蹴ってみようと思った。もしかしたら、何かが変わるかもしれない。変わるわけはないとどこかで知りながら、でも、何か一縷の望みに賭けるように、久しぶりにボールを純は蹴ってみようと思った。

 あれほど毎日履いていたスパイクを履くこと自体が久しぶりで、そこに違和感があることに、まず純は何とも言えない思いを抱く。それほど、あれほど好きだったサッカーから純は遠ざかっていたことに、あらためて純は気づかされる。そのことが、妙に悲しかった。

 純はボールを地面に転がした。その上に足を乗せる。なんてことないいつもの動作。その感触が懐かしかった。しかし、サッカーの感覚は残っていた。体に染みついたその感覚はまだ残っていた。純は、まず一回ボールを蹴ってみた。足首が固くなっていた。筋肉が落ちていることを実感する。ここ数年、毎日毎日休むことなくサッカーをしていた体――。たった数か月ボールを蹴っていなかっただけで、まるで別人のように体の感覚が変わっていた。

 蹴ったボールはコンクリートの壁にぶつかり、純の下に返って来た。純はそのボールを、もう一度蹴ってみる。

「・・・」

 しかし、何も感じなかった。恐ろしいほどに何も感じなかった。

「・・・」

 純は足元に転がるボールを見つめた。虚しかった。ボールの一蹴り一蹴りがただ虚しいだけだった。以前はあれほどたぎるようにあったサッカーへの情熱を欠片も感じなかった。微塵も感じなかった。喜びもやる気も情熱も何も感じなかった。やはり、サッカーへの思いは完全に冷え、消えていた。

「・・・」

 部活を辞めるとともに、あれほど熱く燃えていたサッカーへの情熱が完全に切れてしまっていた。そして、一度切れた情熱は、もう元には戻らない・・。そのことをはっきりと感じ、そして、純はそのことに絶望する。純は本当にサッカーのことしか考えていなかった。中学からサッカーを始め、そこからはサッカーのことだけを考え生きていた。

「・・・」

 この時、あらためて自分が失ったものの大きさを純は思い知らされた。仲間も夢も情熱も、やる気もすべてを失ってしまっていた。そこに残っているのは、屍のような純という名の残骸だった。純はその場に愕然と立ち尽くした。

「・・・」 

 もう自分は戻る場所もない。そして未来もない。純は何もない自分のその先に絶望した。

 

 日明は相変わらず試合からは干されていた。練習もいじめのように一年と一緒に走らされてばかりいた。しかし、日明は、諦めていなかった。ふつふつと湧き上がる熱いものを自身の内奥に感じていた。

 状況は絶望的だった。しかし、日明を支える熱い何かがあった。

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