失ったもの
部活を辞めても友だちだと思っていたサッカー部の仲のよかった他の一年のメンバーたちは、純が部を辞めたとたん、まったく別の世界の人間であるかのように急に純と距離をとり、よそよそしくなっていた。そして、部のメンバーたちは申し合わせたようになぜか、純を避けるようになっていた。
純が部にいた時のように話しかけても、その反応は以前のものではなかった。
「・・・」
純は、かつての仲間たちのその反応を見て、自分はもうサッカー部の人間ではないのだと実感する。
堪らない孤独と、疎外感が純を襲う。サッカーだけではない、大切な物も純は失ったことを知った・・。
卒業式の次の日、日明が部活の練習に出ると、その場にいた全員が顔中腫らした日明を見て驚く。
「どうしたんですか?大丈夫ですか?」
一年の最近入ってきたばかりのマネージャーの志穂梨が、日明の腫れた顔を見て驚き、すぐに駆け寄る。
「ああ、大丈夫だ」
部員のほとんどは事情を知っているので、何があったのかある程度察している。だから何も言わない。しかし、志穂梨は天然なのと、入ってまだ間もなく、部内の事情を知らないのとで、色々微妙なことなど、その辺が全然分かっていない。
「でも、すごい腫れてますよ」
志穂梨は日明に近寄りその顔を心配そうにのぞき込む。
「大丈夫だよ」
日明はそんな志穂梨を払いのけるようにして、そのままいつものように練習の準備を始めた。
そして、日明のことなど何事もなかったかのように、三年の去った、一年と二年だけのいつもの練習が始まった。
練習が始まりしばらくたってから、いつものように遅れて楢井がやって来た。そして、他の部員たちと同じように日明のその顔を見た。だが、チラリと見ただけで楢井は何も言わなかった。
楢井は、相変わらず生徒のごたごたには一切我関せずで、見て見ぬふりだった。当然何があったかは察していたが、そこに彼が立ち入ることは絶対になかった。今までも、そして、これからも――。




