表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/13

12

アシュレイ side.


あれだけ義姉に反抗的な態度だった俺が突然彼女を婚約者にしてほしいと懇願した事に、義父母は当初かなり困惑した様子だった。

しかし次第に誠意が伝わったのか、何度も頼み込んた末にようやく彼女が承諾したならとお許しが出たのだ。

やっとアプローチできると胸を高鳴らせていた矢先、何処からか嗅ぎつけてきた義兄がそれに待ったをかけた。


『世間ではあまり馴染みのない音楽家を目指そうとしているセレスは、貴族社会の中で肩身の狭い思いをするかもしれない。結婚するならそれを理解した上で、どんな障害からも守り抜けるような強い奴じゃないと駄目だ』

『俺もセレスティアが音楽家を目指している事は十分理解しています。誰に何を言われようと守り抜くつもりです』

『もしもその相手が俺だったら、お前になんとかできるか?』

『っ、それは…』

『セレスの存在に助けられてきたのはなにもお前だけじゃない。俺にとっても大切で幸せになってほしい存在なんだ。中途半端な気持ちの奴には絶対嫁がせたくない』

『俺は中途半端なんかじゃ…っ!』

『セレスは俺が認めるような相手と婚約させる。どうしても自分がセレスの婚約者になりたいなら、あの子が学園を卒業するまでに俺を実力で捻じ伏せてみせろ』

『そんな…』


思わぬ壁にぶつかってしまい唇を噛み締める。

なんとか説得しようと試みたが、義兄が頷いてくれる事は一度もなかった。

どれだけセレスティアが愛されているか実感させられる。


大体本人が自覚してないだけで、セレスティアは人たらしな性質でかなりモテていた。

精霊を思わせるような清らかで美しい容貌に、傍に居れば居るほど深みにハマっていく心地よい雰囲気。

婚約の申込みだって、本当は数えきれないくらい来ていた。

俺が他の男を近付けさせないようにどれだけ苦労して立ち回ってきたかなんて、きっと彼女にはわからないだろう。

だけどそうまでしてでも手に入れたいと思うほど、引き返せないくらい深く彼女を愛してしまっていた。


こうなったらどんなに恥を晒しても真っ向勝負で義兄から勝利を掴み取るしかない。

そう腹を括り、より一層自分を追い込む日々を送った。


それから2年。

セレスティアも最終学年になり約束の時間が迫ってくる中、ようやく舞い込んできたチャンスが選抜魔法大会への出場だった。

義兄の口から直接ゲストで出場する事を知らされ、このタイミングを逃せば忙しい彼と対戦できるチャンスはもうないかもしれないと覚悟する。


そうして迎えた決戦の日。

爆発の中で義兄が自衛のため前方にガードを展開するのはわかっていた。

まさかその爆発の中を捨て身で突っ込んでくるとは思わなかったのだろう。

背後に気配を察した彼が息を呑んでゆっくり両手を挙げたのがわかった。


試合終了の直後、膝をついたまま立ち上がれない俺を見て義兄は仕方なさそうに手を差し出す。


「セレスを幸せに出来なかったら承知しないからな」

「!…はいっ」


その手を取った時、ようやく彼に勝ったのだと理解した。

ステージを降りた後、移動した救護室で治療を受けながらやっと掴み取った勝利を噛み締めるように強く拳を握った。




想いが通じた事を2人で報告しに行くと、義父母は温かく迎え入れてくれた。


「約束通りお前たちの婚約を認めよう、おめでとう」

「どうなる事かと思ったけれど、やっと良い報告が聞けたわね」


ありがとうございますと返し、隣で頬を染めるセレスティアの腰に手を回す。

それを見た義父が眉間に皺を寄せながらすかさず釘を刺してきた。


「但し、結婚はアシュレイが卒業してからだ。わかっているな?」


心の中で苦笑いしながらはいと返答する。

卒業までは長いが仕方ない、大事にすると決めたし節度を保つと誓おう。

…だけど、キスくらいなら許されるよな?


義父母に見送られて部屋を出ると、2人とも自然にカロンのあるあの部屋へ足を向けた。

中に入るとソファーに腰を下ろし、隣に座るようセレスティアの手を引く。


「なんだか夢みたい…」

「一世一代の告白をただの夢にするなよ」

「わかってるわ。でも…、気持ちが浮ついていてソワソワしちゃう」


何だよそれ、可愛すぎるだろ…。

だけど気持ちはわからんでもない。


「じゃあ、夢かどうか確かめてみる…?」


そう言って赤く染まった頬に手を添えれば、彼女は潤んだ瞳で俺と目を合わせた。

彼女が小さく頷くのを見て、ごくんと喉が鳴る。


「凄いドキドキする…」

「…うん、俺も」


甘い雰囲気に身を委ねて、ゆっくりと優しく唇を重ねた。

ピクンと反応する彼女が可愛らしくてクスリと笑うと、少しだけ唇を離して尋ねる。


「夢だった?」

「…まだ、わからないわ」

「もっと?」

「…もっと」


くそう、自分で聞いたくせに自分の首を絞めてしまった。

我慢だぞ、俺。


暴走するなよとなんとか自分に言い聞かせて、宝物に触れるように再び優しく唇を重ねた。


アシュレイ side end.

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ