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第3話 異世界ハラスメント(1)

 僕に拒否権なんてないみたいで。


 ほぼ勢いのままなんか怪しい儀式を始めてしまった神様に、神様だけどこいつに天誅を、と願ってしまった。


「なんでこうなったんだろ……」


 僕の目は今たぶん、半分死んでいる。

 目の前に現れた新たな異空間に気圧されつつ、余計なことを言ってしまったさっきの自分を責めていた。僕のバカ。何が「地獄行きですよね」、だよ。


 本当はそんなこと、思ってもないくせに。

 誰よりも天国で楽になりたいって、願ってたくせに。

 でもそれも、今考えても無駄なことだ。


「フォーーーーーーッフォッフォッフォッ! 心の準備はよいか少年?」


 良くないです、と内心怯みながらも。


 頭上というか宙空で杖を突きながら浮遊する神様を、僕は見上げていた。こうして空に浮かんで白髭をなびかせている様子を見ると、改めてこのおじさんは神様なんだ、と気付かされる。


 僕が今立っているこの地面以外、外はまるで宇宙のように一面藍色の世界を演出している。そしてその非現実感を助長するように、一面の宇宙には点々とカラフルに光る星が並べられていた。


 僕は大きく様子を変貌させた視界に目を白黒させながら、為す術なく棒立ちしていた。


「とりあえず、お主を異世界へ送り出す前にじゃ。この儀式で洗礼を受けてもらうこととする」


「洗礼?」


「そうじゃ。異世界で生き抜くための力、『スキル』を今から授けよう」


 スキル、か。なるほど。

 ここで上手いこといいスキルを得られれば、僕はチート路線で俺TUEEEEできると。つまりそういうことか。……って、なんで僕ノリノリ?


「よし、まずは一つ目のスキル。お主が魔物と戦う上でまず一番初めに発現する、言わばお主の方向性をを左右する重要なスキルじゃ」


 引きが良ければええのう、とにっこり笑みを浮かべる神様。

 引きってことは、やっぱり……


「スロット、オープン!!」


 うん、ガチャ制だよね。


 神様の背後に出現した巨大なスロットは「A」の文字を映し出して明滅すると、ものすごい速度で縦に回転を始めた。速度からして、動体視力にものを言わせて見切るのは不可能だ。


「決めるのはスキルランクのみ、C~SSがある。お主の好きなときにストップを言えば止まる仕組みじゃ。さぁ、バチコーンと決めるのじゃ少年っ!!」


 高速で回転を続けるスロット。見つめるだけで目が回りそうだ。

 僕の持論だけど、こういうときは下手に見切りをつけようとすればするほど外れやすい。


 できるだけ適当に、ここは運にすべてを任せよう。


「……ストップ」


 直後、回転が停止する。

 静止したスロットが示す文字を見て、息を呑んだ。



 ——SS。最高レア。



 虹色に輝く背景とともに、その文字は激しく存在を主張する。


「やっ、た……?」

「ほぉ。やりおるのぉ少年! 排出率0.6%のSSランクスキルを見事勝ち取るとは!」

「確率シビアすぎません?」


 最高レア0.6%? どこぞのソシャゲだよ。

 でも、ここで運を全振りできたのはよかった。ナイス判断。


「にしても、スキル1がSSランクとは……この先が楽しみじゃのう」


 ふぉっふぉっふぉっ、と高笑いする神様の呑気さに図らずも苦笑いがこぼれる。いきなり異世界転移とか言い出したり儀式始めたり、もうめちゃくちゃだこの人。


「……さて。肝心のスキル内容は後でのお楽しみとして」


「えっ、教えてくれないんですか?」


「そりゃあそうじゃ。異世界(あっち)に着いてのお楽しみじゃよ。それはそうと、二個目のスキルガチャに参るとするかの」


 どこまでも自由な神様は、また背後のスロットを回転させ始めた。

 ぐるぐる回るスロットを注視する僕に、神様はボソッと呟く。


「……ちなみに、それぞれの排出率はCが30%、Bが40%、Aが20%、Sが9.4%、SSが0.6%じゃ」

「それまた随分リアルな……」


 唐突な横槍に意識を割かれつつも、僕はまた適当なタイミングで停止の合図を下す。


 スロットが止まる。選ばれたのは、B。

 まあまあ、だと思う。


「つくづく運がええのう。では、次で最後じゃ」


 省略。


 三つ目のスキルはAランクだった。


 SS、B、A。

 引きとしては全然悪くない。


 悪くない……けど、願ってもない異世界転移に運を使い果たしてしまったことに少し後悔が滲む。ここで運が発揮されるくらいだったら、前世の人生をもっといい方向に進めるために使いたかった。


「スキルランクは出揃ったのう。それでは早速、お主を異世界へ送り出すとするか……」


 蓄えた白髭を指で撫でながら、神様は右腕を突き出す。


 すると僕の立つ地面に、鈍く光る光の輪――魔法陣が現れたのだ。青白い燐光が輝きを強め、僕の身体をも包み込んでいく。僕の全身から、元の色素が抜け落ちているようだった。


「ほっほ、達者でな少年」


 最後に神様の笑みを見て。

 青白く発光する身体は、どこかここでないどこかを目指して消失を始めた。


 もう、抗えないか。


「あんまり早くこっちに戻ってきちゃ駄目じゃz――」

「うるさい」

「え」


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