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第47話(偽)Suke-Dati

先に言っておきますが、エイプリルフールのネタです。

本編とは半分くらい関係ない幻覚のようなものです。

 僕は苦戦していた。


 さっき出会った猫耳の女の子からもらったポーションを飲んだはいいものの、痛みを感じなくなっただけで他に効果はない。〈エルダートレント〉の圧倒的なパワーには以前敵わず、押され気味な状況は変わっていなかった。


「くっそ、このままじゃ……っ」


 彼女から受け取ったナイフで敵の腕を斬りつける。

 だが、これといって効いているようには見えない。


「諦めちゃダメです! ダメージを蓄積させれば、いつかは【再生限界】を迎えて自滅するはずですから!」


 ハンドボウガンを構えた彼女が叫ぶ。

 どうやら彼女との協力でその【再生限界】とやらを迎えさせることで、最終的にこいつを倒す算段らしい。僕のスキル、【再生(リバイヴ)】を前提とした作戦だけど、それ以外に方法がないならやるしかない。


「わかってる! やるしか、ないんだろ!」


 左腕がもがれる。痛みはない。

 右胸に敵の腕が突き刺さる。痛みはないけど致命傷だ。僕は頭上を見上げた。

 何回目かわからないくらいのスキル発動。



   ↺



「――その子に、触るなぁっ!!」


 なぜか空中で復活した僕は、ナイフを手に『巨木』へと降下した。


 命がけの特攻は功を奏し、彼女を襲おうとしていた敵の足止めに成功する。ただでさえ死をループさせられて精神的に参っているというのに、孤独なんて心細さまで味わいたくない。


「うぐっ……」


 敵に吹き飛ばされ、着地を失敗した僕は地面に激突する。

 打ちどころが悪かったのか、意識が飛びかけた。


(っ、まずい……早く、立ち上がらないと……!)


 フラフラと、僕の足取りは覚束ない。

 咆哮する敵に向かって手を伸ばす。

 

 ダメだ。僕が助けに入らないと、彼女まで死ぬ。


 でもこの状態じゃ、真っ直ぐに歩けるかどうかすらも怪しい。

 もう一回死んでみるか? いや、それでも最悪タイムラグで間に合わない。


 考えろ。もう懲り懲りなんだ、目の前で死なれるのは。


 そうならないために僕は戦うんだ。

 そのための力だろ――!



「――よく頑張ったわね、坊やたち♡」

 

 

 目の前に、大きな人影が立っていた。

 ぼやけていた視界が晴れ、彼の背中がより鮮明に映る。


「あ、あなたは……!」


 鍛え上げられた肉体に、清潔にまとめられた長髪。

 やたら女性口調のその大柄な男性は、巨大な武器を肩に担いで佇んでいた。

 

「また会ったわね、黒髪の坊や。アタシは〈ランク5〉探索者、リンドウよ」

 

 思い出した、彼(彼女?)は……あのときのステーキ屋の店長さんだ。

 でも、なんで彼女がここに……。

 

「中層級相手に善戦したわね。あなた達はよくやってくれたわ。――あとは任せなさいっ!」

 

 ズシン、と地面を振動させるほどの重量の武器を彼女は構える。

 向かい来る敵もその風格に怯んだのか、唸り声を上げてその場で静止していた。


 

「――さぁ、待ちに待ったショータイムよ! かかってらっしゃい小枝ちゃん!!」


 

 威勢のいい彼女の掛け声とともに、一騎打ちは開戦した。

 といっても、戦況は一方的だったけど。

 

「オホホホ! その触手の動きのクセ、いいわねぇ! 嫌いじゃないわ!!」

 

 分厚い包丁とトゲのついた鉄球が鎖で連結された武器をぶん回しながら、彼女は勢いのまま突っ込んでいった。


 気持ちいいまでに敵の腕は瞬時に滅多斬りにされ、再生するまでもなく伐採されていく。

 まるで柔らかい肉を切り分けていくような手軽さで、トレントは瞬く間にバラバラになっていた。


「す、すごい……これが、ステーキ屋店長の本気!!」

「いや、誰なんですかあの人……」


 僕と猫耳の女の子が傍から観戦していると、一分も経たないうちに決着はついていた。

 戦場には細かく分解された〈エルダートレント〉の肉片が転がり、その中にリンドウさんは立っていた。


「ふぅ……【再生限界】が近かったからラクに倒せたわね。ありがとう、坊やたち」

 

 最後に僕達にウインクして、リンドウさんは言葉少なに去っていった。

 その大きな背中に憧れた僕が、そこから筋肉系探索者を目指すことになるのは、また別のお話――。

 

 

 

本当の第47話は4/3に投稿する予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れさまです。 まさか、ボケが採用されるとは... これが、前々から考えついていたものだったのか、昨日の俺の感想見て即興で採用して貰えたのか。
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