好きな人の名前を書いたおふだをワラ人形に貼り付けて五寸釘で打ち付けると、両想いになるらしい
そんなアホなと思いつつも、深夜の神社に来てしまう自分が情けない。しかもおふだとワラ人形も完備だ。
夏とは言え……いや、むしろ夏だからだろうか。神社がより不気味に見えてしかたない。
──カンッ
「──!?」
近くから何かを打ち付けるような音が聞こえ、慌てて身をかがめた。
──カンッ、カンッ
恐怖を押しとどめ、僅かばかりの好奇心で音の主の方へと歩み寄る。
神社の裏。クラスメイトの花村美由紀さんが、大木へワラ人形を打ち付けているのが見えた。
「吉野君とタコパしたい……吉野君と遊園地行きたい……吉野君とイチャコラパッパしたい……!!」
花村さんが俺の名前を呼びながら五寸釘を打ち付けている。怨念のような、気迫染みたその奇行に、はからずも俺は胸が痛くなった。……これが、恋なのか!?
「花村さん」
「──えっ!?」
俺の呼びかけに、花村さんは酷く驚いた素振りを見せ、ワラ人形を手で覆って隠した。
「な、なんで!?」
「俺も同じだよ花村さん。友人から聞いて半信半疑だけど、やって来たんだ」
ビニール袋に入れてきたワラ人形を見せると、花村さんはとても恥ずかしそうに手を避かしてワラ人形を見せてくれた。恥ずかしそうに俯く姿がとても可愛らしい。
「それ、本当なんだね」
「えっ?」
「俺、花村さんの事見たら、凄くドキドキして……好きになっちゃった!」
「う、うそ……!?」
目を丸くて口を覆い、今にも泣き出しそうな顔で俺を見る花村さんの傍へと歩き寄り、ワラ人形を大木へと押し付ける。
──カンッ
「笹嶋さんと付き合いたい!!」
「!?」
──カンッ
「笹嶋さんとタコパしたい!」
「な、なんでぇ!?」
──カンッ、カンッ
「笹嶋さんと遊園地デートからのイチャコラニャンニャンしたい!!」
「ダメーッ! 私の事好きなんでしょー!?」
──カァァンッ!
「好きだけど! 付き合いたいのは笹嶋さん!!」
「ストップストップストーーーーップ!!」
頬を膨らませてバールを取り出す花村さんは、俺の五寸釘へバールを引っ掛け抜き始めた。
──グイグイ
「ちょちょちょ!」
「笹嶋さん禁止ー!」
──カンカンカン!
「笹嶋さんとが良い!」
──グイグイグイ
「私とにしてー!!」
──カンカンカンカン
「あいらう゛笹嶋さーーん!!」
──グイグイグイグイ
「浮気ダメ絶対ーーーー!!」
──カンカンカン、ゴンッ!
「いでぇ!!」
「大丈夫!?」
「うん……」
「今日はもう止める?」
「止める」
「帰りにラーメン食べない?」
「食べる」