Star dust
一八の話を聞いた律花達は、翌日から早速ソニアの手がかりになるものを探しに向かった。一八によると、ソニアは白髪で、五歳くらいの見た目をしているらしい。二人はそのような子を見ていないか町中の人に聞いて回った。ところが、誰もそのような子は見ていなかった。
ソニアに繋がる何かは見つけられなかったが、二人の友人の篤矢が気になる話をした。
「あれ、かなり話題になってるよね。」
「あれって?」
「白部山に流れ星が落ちた話だよ。」
「流れ星が落ちたらそれは隕石じゃないの?」
「そうなんだけどね、大きかったはずなのに痕が残ってないんだよ。」
篤矢は山を指差した。白部山は、普段と変わらぬ形でそこにある。
ソニアを見つけられないのは残念だが、隕石が近くに落ちたのは気がかりだ。律花達は走って山に向かった。
そこにあったのは隕石ではなく、ティラノサウルスの姿をした怪だった。怪は眠っていたが、三人の気配に気づいて目を覚ました。
「あれは…、怪?」
その怪の上には少女が立っていた。その少女は三人を見下ろしている。
「ソニアはどこ?」
少女は三人よりも年下だが、口調は妙に大人びていた。
「ソニア…、ってあなたもソニアを知ってるの?」
「あいつ、気に食わないの。」
少女が手をかざすと、怪が突撃してきた。三人は木に叩きつけられる。
「待って!あなたもソニアを探してるんでしょ?実は私達もなの!」
「本当?」
怪が攻撃を止めた。そして、少女を地面に降ろす。
「そう、それが本当ならいいけど。」
少女はワンピースのポケットから鍵を取り出した。
「私はゾフィー、『Star dust』のリーダーよ。覚えといて。」
それだけ言うと、ゾフィーは鍵を投げて空に差し込んだ。そして、怪と共に姿を消してしまった。
「あいつ…、『Star dust』のリーダーって言ってたな。」
一八はゾフィーが消えた空を妙ていた。
「『Star dust』?」
「宇宙からやって来た敵意を持つ者達だと、昴様は言っていた。」
「あの子が敵だというの?」
「ああ…、冥界の怪はあいつらが送り込んでいるらしいからな。」
一八はずっと何か考えているようだったが、二人には言わなかった。
それから、律花と音羽はそれぞれの家に戻った。一八は今日も律花の家に泊まるつもりらしく、律花にくっついていた。
律花は自分の部屋で本を読んでいた。その本は黒い革の表紙で、中は見慣れぬ文字で何かが書かれている。
「何見てるんだ?」
「黒書、お父さんが魔術を使うならこれを読めって言われているの。」
一八には読めなかったが、律花はこの本が読めるようだった。父親に教えてもらったのだろう。
「律花のお父さんは魔術師なのか?」
律花が頷くと一八は立ち上がった。
「へぇ、俺も教えてもらいたいぜ!」
一八は部屋を飛び出して律花の父親の元へ向かってしまった。
律花の父親は、ビガラス・ジューンという魔術師だった。彼は死霊使いと呼ばれる一族の出身で、植物を扱うのを得意とする。律花は風見の陰陽師の力と、魔術師の力の両方を受け継いでいた。
そのビガラスの姿を見かけた一八は早速話し掛けていた。
「律花さんのお父様ですよね。」
一八は、律花には慣れ慣れしかったが、ビガラスには敬語で話していた。
「ああ、俺で良かったらだが…」
「はい!教えてほしいです!」
「お父さん!」
「俺はいいぞ。可愛い弟子がもう一人増えるからな。」
ビガラスは二人を連れて自分の部屋に向かった。そして、一八にも律花と同じ本を手渡す。
「これからよろしくな、一八君。」
ビガラスは一八の本に書かれている文を一つ一つ指差しながら教えていった。