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貴方が旅した記憶の中で


 ショールとアゲートはエメルダに連(つ)れられ、怪(かい)が居(い)る場所(ばしょ)へ向(む)かった。そこでは、サボテンの怪(かい)が暴(あば)れている。周囲(しゅうい)には人影(ひとかげ)は見(み)られなかったが、地面(じめん)には針(はり)が刺(さ)さっている。

 ショールとアゲートはその針(はり)を抜(ぬ)いて回(まわ)った。抜(ぬ)けた針(はり)は山(やま)のように積(つ)もり上(あ)がったが、怪(かい)の身体(からだ)には針(はり)がまだ残(のこ)っていた。それどころか、今(いま)も針(はり)は怪(かい)から抜(ぬ)け落(お)ち、雨(あめ)のように降(ふ)り注(そそ)いでいる。


 ショールは自分(じぶん)の幽体(ゆうたい)の一部(いちぶ)を取(と)り出(だ)し、粘土(ねんど)のようにこねて人(ひと)の形(かたち)にした。その幽体(ゆうたい)はショールと同(おな)じように鎌(かま)を持(も)っている。

「これなら針(はり)が刺(さ)さらないでしょ。」

ショールの幽体(ゆうたい)は動(うご)き出(だ)し、サボテンの怪(かい)に向(む)けて鎌(かま)を振(ふ)るった。サボテンの怪(かい)は針(はり)を突(つ)き刺(さ)したが、幽体(ゆうたい)のショールには刺(さ)さらない。サボテンの怪(かい)がショールに集中攻撃(しゅうちゅうこうげき)をした結果(けっか)、針(はり)はほとんど抜(ぬ)けてしまった。

「よし、後(あと)はこっちのペースに持(も)っていけば!」

ショールは幽体(ゆうたい)と連携(れんけい)し、サボテンの怪(かい)の腕(うで)を斬(き)った。ところが、サボテンの怪(かい)は身体(からだ)を再生(さいせい)し、更(さら)には斬(き)られた腕(うで)から分身(ぶんしん)を産(う)み出(だ)した。ショールはすぐに分身(ぶんしん)の方(ほう)を倒(たお)したが、本体(ほんたい)の針(はり)が復活(ふっかつ)し、二人(ふたり)のショールに突(つ)き刺(さ)さる。その攻撃(こうげき)でショールは動(うご)けなくなっていた。

「大丈夫(だいじょうぶ)か!」

アゲートはエメルダにショールを任(まか)せ、鎌(かま)を、取(と)り出(だ)した。エメルダはショールの針(はり)を抜(ぬ)き、傷口(きずぐち)を塞(ふさ)いでいる。幽体(ゆうたい)の方(ほう)先程(さきほど)の攻撃(こうげき)で身体(からだ)に戻(もど)っていた。

「本気(ほんき)を出(だ)すよ。」

「逆(ぎゃく)に今(いま)まで本気(ほんき)を出(だ)してなかったの?」

「アゲート君(くん)は怪(かい)との混血児(こんけつじ)だから力(ちから)を解放(かいほう)したらどうなるか分(わ)からない。気(き)をつけて。」

アゲートは胸(むね)に下(さ)げられた瑪瑙(めのう)のペンダントを握(にぎ)り締(し)めた。アゲートの目(め)は茶褐色(ちゃかっしょく)に輝(かがや)いた。そして、鎌(かま)に力(ちから)を込(こ)めると一撃(いちげき)で怪(かい)を仕留(しと)めてしまった。


 そうして、怪(かい)との戦(たたか)いは終(お)わりを告(つ)げた。周囲(しゅうい)の大地(だいち)は荒(あ)れ果(は)て、生(い)けるものは残(のこ)っていない。

「終(お)わった?」

「今(いま)の所(ところ)はね」

アゲートが頷(うなず)くとショールはその場(ば)に倒(たお)れた。口(くち)から幽体(ゆうたい)が抜(ぬ)け、身体(からだ)は動(うご)かなくなった。


 アゲートは抜(ぬ)け殻(がら)になったショールの身体(からだ)を背負(せお)って歩(ある)いた。隣(となり)には幽体(ゆうたい)になったショールが浮(う)かんでいる。

「ここまでなるのは珍(めずら)しいな。余程(よほど)疲(つか)れたんだろう。」

抜(ぬ)け殻(から)のショールの身体(からだ)は重(おも)かった。それをどうにか引(ひ)き擦(ず)らずに背中(せなか)に乗(の)せている。本当(ほんとう)はペタライトに頼(たの)みたかったが、そのペタライトもシリカを抱(かか)えていた。


 残念(ざんねん)ながらアゲートは馬(うま)にはなれなかった。母親(ははおや)のように姿(すがた)を変(か)えられたら便利(べんり)だろうと何度(なんど)も考(かんが)えた。だが、そうだとしてもアゲートには母親(ははおや)の怪(かい)の力(ちから)は受(う)け継(つ)いでいなかった。

「ここを抜(ぬ)けたら宿屋(やどや)がある。一旦(いったん)そこで休(やす)もう。」

エメルダが一同(いちどう)の先(さき)を行(い)く。アゲートは幽体(ゆうたい)のショールを見(み)ながら歩(ある)いていた。

「お前(まえ)みたいな特別(とくべつ)な力(ちから)があればって思(おも)ってたところだよ。」

アゲートの目(め)は空(そら)のように青(あお)くなっていた。


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