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覚の目


 星藍(せいら)を送(おく)り届(とど)けた朝日(あさひ)は妖(あやかし)の群(む)れから一人(ひとり)を呼(よ)んだ。

 その妖(あやかし)は覚(さとり)と名乗(なの)った。彼(かれ)は目(め)を閉(と)じていたが、笠(かさ)の目(め)は開(ひら)いている。その目(め)で人(ひと)の心(こころ)を読(よ)むらしいが、果(は)たして本当(ほんとう)なのだろうか。

「人(ひと)の心(こころ)を読(よ)むというのは本当(ほんとう)か?」

覚(さとり)は首(くび)を振(ふ)った。

「そのように言(い)い伝(つた)えられております。ですが、私(わたし)は覚(さとり)のはぐれ者(もの)で、その力(ちから)が使(つか)えないのです。」

「そうか、それなら何(なに)が出来(でき)るんだ?」

「その場(ば)に居(い)ながら遠(とお)くのものを見(み)る、ですかね。」

「『風見(かざみ)』の力(ちから)のようなものか、一回(いっかい)やってみろ。」

『風見(かざみ)』というのは、風見家(かざみけ)が持(も)つ力(ちから)だ。魂(たましい)が持(も)つ力(ちから)を『風(かぜ)』として知覚(ちかく)し、様々(さまざま)な時間(じかん)や場所(ばしょ)を見(み)る事(こと)が出来(でき)るとされる。朝日(あさひ)は風見家(かざみけ)に生(う)まれたが、『風見(かざみ)』の力(ちから)は使(つか)えない。そこで、覚(さとり)に星藍(せいら)の様子(ようす)を見(み)るようにと頼(たの)んだ。

 覚(さとり)は、閉(と)じていた両目(りょうめ)を開(ひら)いた。目(め)は琥珀色(こはくいろ)で、血走(ちばし)っている。覚(さとり)は無言(むごん)で何(なに)かを見(み)つめていたが、目(め)を閉(と)じて朝日(あさひ)の方(ほう)を向(む)いた。

「星藍(せいら)さんは、冥界(めいかい)に居(い)ました。」 

二人(ふたり)の天狗(てんぐ)は確(たし)かに星藍(せいら)を現世(げんせ)に送(おく)ったはずだ。それなのに冥界(めいかい)に居(い)るのは何故(なぜ)だろう。覚(さとり)は話(はなし)を続(つづ)けた。

「すぐ近(ちか)くに朝日様(あさひさま)に似(に)た子供(こども)が居(い)ます、ご子息(しそく)ですか?」

「俺(おれ)の孫(まご)だ。最近(さいきん)冥界(めいかい)を訪(おとず)れてるとは聞(き)いていたが…」

「助(たす)けに行(い)きますか?」

朝日(あさひ)が星藍(せいら)の元(もと)へ行(い)こうとしたその時(とき)、地中(ちちゅう)から怪(かい)の群(む)れが現(あらわ)れた。怪(かい)は明(あき)らかに敵意(てきい)を向(む)けている。

「今(いま)は音羽(おとは)に任(まか)すしかないのか…」

朝日(あさひ)は鎌(かま)を持(も)ち、ゆっくりと怪(かい)に近付(ちかづ)いた。そして一振(ひとふ)りで消滅(しょうめつ)させる。

「このままじゃ他(ほか)の場所(ばしょ)も危(あぶ)ないかもな…」

朝日(あさひ)は妖達(あやかしたち)を連(つ)れ、何処(どこ)かへ向(む)かった。冥界(めいかい)の音羽(おとは)は星藍(せいら)を救(すく)えるか心配(しんぱい)だったが、今(いま)は目(め)の前(まえ)の事(こと)をやるしかなかった。


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