誰かの声
星藍は、二人の天狗の手で無事に青波台に戻った。身体はまだ透けていたが、心は落ち着いていた。今まで見知らぬ世界に居たからだ。状況は変わらないが、それでも安心していた。
星藍は町を彷徨い歩いていた。残念ながら星藍を認識する人は居なかった。
心の何処かで寂しさを感じていたその時だった。突然背後から怪が覆い被さった。もうだめかと思ったが、何者かに運良く助けられ、事なきを得た。
「大丈夫か?!」
偶然星藍を助けたのは、小学校の校長だった。
「校長先生?どうしてここに?」
「木幡君?」
校長は星藍を抱えていた。
「実を言うとね、先生は幽霊が視えるんだ。生まれつきその力があってね、時々嫌な思いをしたよ。けれど、先生になってから怪談で怖がる子を宥めたり、こうして木幡君とも会えたから良かったのかな…」
「私の事覚えてるんですか?!」
「忘れていたけれど、姿を見たら思い出したよ。」
ようやく自分の事を思い出した人に会えて星藍は嬉しかった。そして、自分の身に何があったのかを伝えた。校長は驚いていたが、星藍の話を信じてくれた。
すると、二人の側に誰かが近付いた。
「二見先生!」
校長が振り向くと、そこには大荷物の男性が立っていた。
「こちらの方は?」
「私の教え子だよ。今は赤城小学校で先生をしている。」
「先生、誰と話してるんですか?」
もう一人の先生は星藍の存在に気付いていなかった。そして、校長と話をすると、その場を去ってしまった。
そうして、星藍と校長は二人になった。すると、校長は鞄からパンフレットを取り出した。
「この町に昔住んでいた作家が居てね、その家が記念館になってるんだ。もしかしたら君が探している答えもそこにあるかもしれないよ?」
「ありがとうございます」
星藍は校長と別れてその記念館に向かった。
渡辺邸と呼ばれているその記念館は重要文化財としてN市が管理している。そういえば、律花と音羽はその作家の子孫だというのを昔誰かから聞いた。
この青波台には昔から妙な出来事が起きていたらしい。実際、その事が小説に書かれている。
だが、星藍は小説よりも建物の雰囲気に心が動いていた。
「ここ、懐かしいな…」
星藍は縁側に座っていた。何時かも分からない遠い昔に、こうして誰かと話していた。それを思い出した星藍は突然立ち上がり、今は側に居ない誰かを呼んだ。




