はぐれ者
一八は、律花が居ない間一人姉の松葉の事を考えていた。八咫烏の里で修行しているはずだが、元気にしているだろうか。
「そういえば、姉ちゃん元気にしてるのかな」
一八の心の中にはいつも姉の姿があった。
自分の居場所はどこにもない。怪とも妖とも異なる存在に生まれた松葉と一八は、お互いを頼りにして生きていた。昴と出会う前の一八の心の中には穴が空いていた。一八自身は自らの境遇を憂いていなかったが、他の者は違った。妖からも怪からも疎まれていた。その中で松葉は妖になりたいという願望を持った。
いつか自分達と同じような存在と出会った時にどんな声を掛けられるだろうか。ずっと考えていた。この世界にはどちらの存在にもなれないはぐれ者が居る。その者達に一八はどう向き合えば良いのだろうか。一八が仕えている昴も言わばはぐれた存在だった。二つの血を持ちながらにして、どちらの存在にもならず孤独という道を選んだ。
一八は今は律花の側に居る。完全ではないが人間達の世界で一八は暮らしている。そんな一八だが、いつかは律花と別の道を歩かなければならないのだろうか。いや、そうではない。はぐれ者だからこそどちらでもない新たな道を歩めるはずだ。
過ごした時間そそう長くはなかったが、初めて出会った頃から律花が気に入っていた。出来るなら、昴から与えられた役割を終えてからもこの生活を続けたい。
そんな事を考えながら一八は本来のコウモリの姿に戻っていた。今彼の心に居るのは松葉ではなく、律花の姿だった。




