風を観る者
昴の命で冥界に呼ばれた音羽は、『火山屋』に向かっていた。更なる力を手にする為だった。
『火山屋』は鍛冶屋で、山奥にあった。小さな小屋には造りかけの鎌が音羽が扉を叩くと、中から銀髪の青年が現れる。
「こんにちは、マグマさんは居ますか?」
「亡くなったよ。」
「それか、コークスさんかフォルシアさんは…」
「戦いに行った。ここに居るのは僕だけだ。」
青年はクォーツと名乗った。その名の通り、石英の力を宿している。クォーツは家族が不在の間火山屋を守っていた。
「昴様から話は聞いてるよ。あれは、僕だけに教えてくれた話だったな。」
クォーツは音羽を小屋の中に招いた。そして、お茶を用意すると、音羽にマグマについての話をした。
クォーツの先祖で師匠でもあるマグマは、優れた鎌鍛治だった。その手から造られた鎌を愛用する死神は今も数多い。
そのマグマが若かりし日に造った鎌『黒刃』はその名の通り真っ黒な鎌だった。その鎌は桁違いの強さだったが、その力は誰も扱えず、千年もの間『忌具』として封印されている。昴はその力を音羽に託そうとしていた。
「いくら風見でもこの力を扱うのは危険だと思うんだけどね…。」
「それでも、やらなきゃいけないんです。」
クォーツは金庫の中から鍵を取り出した。それは音羽のものとよく似ている。
「師匠はこの秘密を誰にも話さずに一人でずっと守ってきたんだ。この力が悪しき者の手に渡らないようにね。」
「それなら、どうしてひいお祖父ちゃんは知ってたんだろう…」
「昴様はこの世界をずっと観測してるからね。昴様にはどんな秘密も筒抜けなんだよ。」
「そうなんですか?」
クォーツは空になった音羽の湯呑みにお茶を注いだ。クォーツは昴を敬っている。曽祖父として親しくしている音羽とは異なる繋がりがそこにあった。
「休憩が終わったら行こうか。長い旅になりそうだ。」
クォーツは旅の支度を始めていた。音羽はそれをじっと見ている。そして、クォーツの準備が終わると、二人は火山屋を出た。
それから、音羽はしばらく現世と冥界を行き来していた。『黒刃』は洞窟の奥深くにあるが、その扉を開けるには幾つかの洞窟を巡り、鍵を手に入れなければならない。それは一日では出来ない上に、学校にも通わなければならない為、音羽は律花と話せない程に忙しくなっていた。




