原種の理
契戦暦5000年
ここは中世の町並みが広がる異世界。
長年に渡り。
人間と魔物は対立し合い来る日も争っていた。
人は武器を振るまい、魔物は狂気の籠もった力で人を殺害していった。
地面に散乱するのは、分断された体の部位。
醜悪で残酷な景色が映り、生臭い悪臭が血だまりを作りながら鎮座する。
双方。
力の差は大きく開いてはいなかった。
戦線の合戦場となる平地にて、数千数万といる人間と魔物は戦いを交える度に戦力は半分に落ちていくばかり。
終戦の見えないこの戦の時代で、もう人間と魔物は共に滅びるしかない。
誰もがそう思い諦めかけていた。
そんなある日。
「この本は?」
全身ローブに身を包んだ魔導師達が軍人の前に姿を現した。
無言で見慣れぬ古めかしい本を一冊男に手渡す。
「これは終戦と繋がりをもたらす本。これさえあれば大勢の魔物をこの本に封印できるでしょう」
話によればこの魔導師達は他の魔法使いとは少し違う逸材だという。
特別な魔術を継承した魔法使いであり、長年魔物達を倒す策を練っていた。
その結果ようやくできたのがこの本。
一見。
なんの変哲もない分厚い本だが。
「この本には魔物を封印する魔法が施されている。これを使えばいかなる魔物でも封印することができる」
魔導師達は戦いに参戦することを軍人に言い。
戦場へと赴いた。
魔導師達は多重に及ぶ魔物達の前に現れ、白紙の本を開き天に掲げる。
何かを唱え一同詠唱を始める。
「今魔の封に基づき唱えよう。穢らわしい魔の手をこの本に閉じ込め契りを紡ぎ魔を封印す」
瞬間。
目映く光りだした本は、魔物の群れを一瞬で粒子体にし魂諸共封印した。
これにて魔物と人間との争いは終息に向かい。
人々は暫く安息の日々を送るのであった。
◎ ◎ ◎
契放暦500年
新暦になり人々はなんの不自由もなく平和な日々を送っていた。
かつて魔物を封印した伝説の魔導師達は、世界中から救世主として称えられ崇める存在へとなっていた。
彼らがかつて詠唱の中に出てきた契りという言葉から取り。
人々は彼らを尊敬の意を込めてこのように名付けた。
"契約師"と。
そして魔物を封印した本を契約書と呼び。
かつて戦線があった近くの町にその本は厳重に保管され。
魔物の魂はそこへ留まり続けた。
しかし契放暦が進むにつれて魔物が再び活性化。
かつてのような本はどこにもなく、なんの手も残されず人々は苦しい日々を再び余儀なくされた。
そんなある日。
数匹の魔物が町村の町へと現れる犬獣が数匹ほど。
数人の兵応戦するものの。
状況は防戦一方といった感じで、危機的な状況下におかれていた。
町の町村は封印された本を1冊手に取り。
「頼む力をかしてくれ。この町を救うためにもお前達の力が必要なのだ」
それは一か八かのかけ。
下手をすれば人類が滅亡することさえ視野にいれなくてはいけない。
それを覚悟の上でその本を開き魔物の封をとく。
神々しい光りから現れたのはかつての1人である竜人の魔物だった。
魔物は見開いた町村の方を向き……襲う。
のではなく。
「主よ契約を。さすればこの場は切り抜けられましょう」
明らかに手を貸すような素振りで語る。
その場で跪き契約をするよう語りかけながら。
言われるがまま、その話に乗り契約。
竜人の片目には魔法陣のような模様が一瞬浮かび上がった。
「ではお望みがあれば、なんでも叶えてあげましょう私でできる範疇であれば」
「……町を、町を救ってくれ頼むそれだけでいいんだ」
「御意。承りましたでは」
竜人は一言告げると、目の前に現れた犬獣を相手にし迅速で移動する。
手から現れたのは炎を身に纏ったかのような真紅の剣。それを自分の手足のように手早く振り払い町を襲う犬獣の首を一瞬ではねた。
仕留めおわると町村の方に向かい再び膝をつく。
町村はこの竜人による様子を見て、書に封印されている魔物は危険でないと悟った。
なにかしら魔物を抑制する呪印か何かが押さえていると。
町村は新たな掟を町中の人々に言い渡した。
各国から優秀な魔法使いを招集させ、本を各々手渡し契約してもらうと。
狙いはより強い人材をこの契約書を用いて増やす。
そうすれば、世界の平和は保たれるであろうと。
◎ ◎ ◎
数日後。
いち早く町村の元に各国の優秀な魔法使いが集まる。
その魔法使い達に、契約書を渡し魔物と契約するように言い。
指示通り魔法使い達は契約しそれぞれ願いを叶えてもらう。
それ以降、契約書で契約した者を契約師と呼び。
契約した者を契約喚師と命名し、2人は共に戦うことをこれから誓い末永くこの世界を守り続けると生涯約束するのだった。
◎ ◎ ◎
契放暦1700年
契約師は世界で規模を拡大していった。
人口の半数が契約師となり人々の手助けを執り行う。
優秀な人材と能力に恵まれた者が多かったため、町の者達は彼らを尊敬していた。
だが。
そう長くは持たなかった。
各国で契約師の力を見せつけようと戦争になり。
再びこの世界は混沌に染まる。
契約師は他国の契約師と殺し合い血で血を洗うことに。
だが最終的に両国滅びることとなり、契約喚師は元の封印された場所に戻るのだった。
新契暦元年
おおよそ500年以上の月日が流れる。
契約師の存在は徐々に廃れていき。
存在を認知するのはごく僅かな少数派の人間のみとなった。
契約師のことはおろか契約書を知っている者も数知れず。
散り散り各国に本があるとのらしいが誰も触れはしない。
そんな中。
街中で竜の耳を持つ少女が、契約師を求め中を彷徨いていた。
「探さなくては人を」
碧眼の麗しい瞳。
今でも潤いそうな瞳が彼女の視界を目映く照らして。
こんにちは。
また新しく小説を投稿しました。
本作は転移でも転生でもないハイファンタジー作品です。
基本的に2:1で戦っていく作品になります。
更新頻度は土日にまとめて出す予定ですので応援とブックマーク等をよろしければお願いします。
契約師とは一体どんな存在か、気になる方はまた是非呼んでくださると嬉しいですでは。




