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MONOローグ~夢なき子~  作者: 雨薫 うろち
西帝国動乱編
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87.説教

 【古都】の【兵舎】の地下には地下牢が設置されていた。


 まさかこんな物があるとは思わなかったが、しかし危険人物を収容する場所がこの都のどこにあるかと問われれば、ここほどふさわしい場所は無いか。


 なにしろ兵長の目の届く本拠地だもの……ちょっとやそっとで脱走できるものじゃない。


 そんな地下牢に隊長が向かうとなんかもう、拷問看かと思うような雰囲気。


 背中から感じられる薄笑いと、戦闘中には隠しているオーラ?


 空気を澱ませる危険人物そのものと言わんばかりの暗い暗い影???


 駄目だ、冷や汗が止まらない、これからどんな残酷な拷問が行われるのか、想像もできない。


 階段を一歩下りるごとに背中にかかる重みが倍加して、足が重くなるが、もし残酷な事が行われるなら、自分が一言言わねば……。


 テンプレな牢獄に詰め込まれる【王国】クラン同盟300人の代表三人が鉄格子最前に並んでいる。


 「どうする気だ?」


 「まぁ、どうとでも出来るんだけど、この状況見れば分かるよね?依頼も受けずに勝手な事しちゃ駄目だよ。相手は【帝国】貴族だよ?勿論一般庶民だからってNPCに手を出しても不味いんだけどさ」


 「クソッ!じゃあ何故途中まで乗りやがった!回りくどい事しやがって!」


 「いや最初から乗ってないから、全部罠。騎士団への反発は分かるけど、このゲームやっていい事と悪い事があるよね」


 「だから、何で乗るフリをしやがった!」


 がしゃんと牢の格子を殴り地下に音が響き渡るが、隊長は悪い薄笑いをやめない。


 「注意した所で、やめたのか?一人づつ狩った所で、どうせ諦めないんだろ?」


 「ぐ……」


 「それでさ、一個だけ聞きたいんだわ。【王国】の誰にルークを引き渡すつもりだった?」


 「いや、それは……」


 「あのさココにお前らが押し込められてる時点で【王国】と【帝国】の上では話がついてるんだよ。もう一度聞こうか、誰に引き渡すつもりだった?」


 「お、おうこく……の……」


 「ん?」


 「【教国】の者だ。よくは分からないが死して尚国を守る護国の将軍の傍らにいる古の聖女に用があると言っていた。詳しい事は分からない」


 「ふむ……」


 「おい!なんでこんな奴に話すんだ!」


 「いや、もう観念しよう。全部掌の上だ」


 「なんで【教国】が横槍を入れてきたかは分からないけど、騎士団への意趣返しに丁度良かったわけだ。もう一個聞こう。騎士団から盗み聞きした奴って誰?」


 「仲間は売らない!」


 「じゃあ、質問を変える。プレイヤー?NPC?【教国】の回し者じゃない?」


 「プレイヤーだが……多分【教国】とは関係ない、と思う」


 そう言って、視線を動かした先にいたのは自分には見慣れた三人組。


 ガンモ、ニャーコン、シラッキー……強くなるって【帝国】出た挙句盗み聞きって……。


 軽く隊長の背中を叩くと、何となく察してくれたのか、話題が変わる。


 「さてと、まあ聞きたい事は大体聞けたし、お前らの処分だが」


 「どうする気だ?」


 「どうとでも出来るって言ったじゃん。寧ろどうしたい?」


 「どうしたいって言われても……」


 「何の御咎め無しで、釈放されて『ああ!すっきり!』って事で良いかね?」


 「は?そんな事できるのか?そんなもん信じられるか!好きにペナルティ与えたらいいだろうが!」


 「ふむ、ソタローはなんかある?」


 「あの、今回の責任は誰が取るんですか?」


 「そりゃ、この件の首謀者は僕達だ僕達二人の責任が大きいのかな」


 「あ?中途半端に情報を盗み聞きしてきた奴らだろうが!」


 「まあ、そういう事言うのかなと思ってましたけど、偶々得た情報で他人の忠告聞かずにこうなったんだから、情報源に責任を問うのは納得できません」


 「そいつらも騎士団に思うところがあって、情報もってトンずらしたんだから、そいつらにも責任があるだろう」


 「騎士団に対しての義理という意味では、あるかもしれませんね。でもあなた方の責任を負うのはどうかと思いますね」


 「僕もそう思う。クランの長として、僕が責任を取ろう。何でも言ってくれ」


 「んじゃ、その情報源をこちらに引き渡してもらおう。くれぐれも後から私刑なんかにはしないように!意趣返しも禁止。自分達も別に手荒には扱わない」


 「だから、仲間は売らないと言っているだろう!」


 「どうする?ソタロー?」


 「この人を信用します」


 「分かった。じゃあ解散!帰っていいよ。ただ【帝国】内で不穏な動きをしないでね。次は無いから」


 「どういう事だよ!」


 「さっき言ったじゃん。【王国】と【帝国】の上はこの事について話がついてるの。今回は自分の顔を立ててニューター、つまりプレイヤー同士のいざこざって事にして貰ってるから、これ以上悪さしなければお咎めなし。これ以上何かすれば、自分の顔ももう効かない」


 「まじかよ……隊長……あんたどうなってんだ?」


 「自分が聞きたいよ。もし謝るならルークに謝るんだね。なんか食べ物でも持っていけば喜ぶよ。じゃ、自分はやる事あるから」


 そう言ってさっさと地下牢から出て行ってしまう隊長。


 勿論地下牢の鍵は開いていて、そこからおっかなびっくり帰っていく【王国】クラン同盟。


 ガンモ、ニャーコン、シラッキーとは目だけで会話したが、後でメールで会う約束でもするかね。

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― 新着の感想 ―
[一言] 盗み聞いた話をここだけの話で話してたら、それを聞いた奴らが大事にした感じかね………………………… こまったもんだ(>_<)
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