82.天騎士
PROWESS:優れた戦闘能力
COURAGE:勇気
DEFENSE:弱者の守護
HONESTY:高潔さ
LOYALTY:誠実
CHARITY:寛大さ
FAITH:信念、信仰
COURTESY:礼節正しさ
これら全てを兼ね備え、真にヒトのために尽くすことの出来る騎士の中の騎士。
光り輝く鎧に身を包み、その身を張って人々を守り導く真の指導者。
天騎士を継ぐものは極稀にしか存在しない。
その力、精神を引き継ぐに相応しい器はそうそう生み出されることは無いから。
もし世界が危機に瀕した時に天騎士が現れれば幸運の時代と言えよう。
きっと世界は救われる。
「コレが天騎士の言い伝えだね!さらに魔将と戦ったとされる護国の将軍は天騎士の中でも多人数を率いたと言う神に選ばれたとまで言われる傑物だったとか!まあそんな時代だからこそ、宿敵となる魔将が生まれたのかもしれないね。光が強ければその分影も濃くなるという事だ」
「あの~そんな伝説を聞いても、どうするかなんて決められそうにもないんですけど?」
「何を言っているのだい!ソタロー!君が天騎士にならなくて誰がなると言うのかね?……まさか……僕?」
「いや、それは分からないですけど、その天騎士が1000人も率いてやっと戦えるのが魔将って事ですよね?」
「その通り!魔将も将と言うからには集団を率いたのだろう。そして戦い続け力尽きたヒト側の護国の将軍は最愛の聖女を失いながらも、死して尚国のために戦えるよう何でも願いの叶う玉に願ったわけだ」
「なんかもうあらゆる主人公的エピソード満載ですね。でもその護国の将軍が復活した魔将と戦う為に復活したのに、隊長が倒しちゃったと……。どうなってるんですかね?」
「それはどうしようもないね~。隊長にも頑張ってもらうしかないんじゃないかな?」
「自分は知り合ってまだ浅いですけど、すでに適当で我侭なサイコパスだと思ってるんですけど」
「う~ん大方【帝国】内での評判もその通りだから安心していい!でもね我を通して丸く納めるにはそれだけの能力も必要なんだよ。反発すれば全て通るわけではない。もし意志を貫くなら覚悟と積み重ねも重要さ」
そんな事を言うセサルさん。まずはどうしたいのか決めろと天騎士の話しをしてくれたのはありがたいけど、その決めろって言うのが自分には一番ネック。
そりゃあNPCとは言え、やっと仲良くなったルークを生贄にしろとか、そんなのはお断りだ。
でもそれが、このゲームでは決定しているイベントで、ルークを生贄にすることで危機が去るのだとしたら、自分一人がごねる事に何の意味があるのだろうか?
自分一人で世界の流れを捻じ曲げることが出来るのか?
そんな訳ない。運営と言う名のある意味この世界の神が全部決めている。その手のひらの上で少しでも楽しく過ごせと、そういう事だろう。
やっぱり決めろも何も無い。
現実と同じ……ちゃんと他人の言うことを聞いて過ごせば大過ないのだ。
でもゲームなら勝手なことやってもいいのかな?BANされるのかも知れないけど、別に規約違反でもなんでもないし……。
説明の足りない運営が悪い!って言いながら【王国】のクランを斬り倒してしまってもいいのだろうか?
結果それで今まで頑張ってきた【兵士】としてのキャリアを失っても、アウトローなPK職としてゲームする事になろうとも、後悔はしないのかな?
妄想するだけなら誰でも出来る。問題は行動を起こせるかどうか。
「自分は【王国】のニューター達を斬るかも知れません……」
「いいんじゃないか?ルクレイツァを守る為なんだろう?僕はきっと君を見捨てない。魔将と戦う事になったら一番に駆けつけようじゃないか」
「でも、魔将と戦うには天騎士の力と1000人を率いる方法が必要な筈。あてはあるんですか?」
「何とか出来そうな人物は知っているから、ソタローは思うままに行動していい。僕も最愛の妹の事を他人任せにするのは忸怩たるものがあるよ。でもね弟の弟子であるソタロー……君なら任せてもいいと思っている。身分ゆえに制限のある僕と違って君は自由だ!思うままに行動していい!君は籠の鳥じゃない!愛するものを守り、気に入らないものを破壊していいんだ!」
「気に入らないものを破壊していいんだって……、ただの我侭放題のおかしな人じゃないですか」
「でも、そんな人物を追ってこの地で地道に【兵士】として積み上げてきたんだろ?君のちょっとやそっとの我侭くらい僕が何とか押し通すか、うやむやにして上げるよ。さあ!脳まで鍛え上げたその筋肉で、全てをぶち壊してやれ!魔将も【王国】のニューターも!そして君の追いかけてきた人物も」
「隊長もですか……強さの分からない魔将はともかく、やっぱり隊長も刺せなきゃいけないんですね」
「そうだね。聞いた話だけだと隊長はルクレイツァを生贄にはしなさそうだけど、かなり合理的な人物のようだし、必要悪と割り切る可能性も無いとも言えない。なにより後ろから刺せと言われたんだろ?」
……後ろから刺すなんて自分に出来るのだろうか?
セサルさんは好きにしていいと言ってくれたが、今もまだ迷っている。ゲームが自分に求めていることと、自分がやりたい事……。