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MONOローグ~夢なき子~  作者: 雨薫 うろち
西帝国動乱編
72/363

71.変人と蟹狩り

 支給装備を借りて、大河に向かう為【古都】南門へ移動。


 そこで待ち合わせていたのは、


 「あっソタロー!久しぶり!何か活躍したんだって?」


 チャーニンがすぐに自分に気が付き話しかけてくるのだが、隊長いるのに大丈夫なのかな?


 そして、スルージャがすぐに続いて、


 「ソタロー!ありがとう!絵の勉強できる事になったよ。ソタローが推薦してくれたんでしょ?」


 「ああ、いいよ別に、国務尚書がやってくれた事だし……」


 「相変わらず、ソタローは欲がないっつうかなんつうか……、それで一緒にいるの誰だ?新人?」


 「いや!こら!チャーニン!上官だよ。知ってるか分からないけど、隊長だよ」


 「「え?タイチョウ……、隊長!!!失礼しました!」


 「え?別にいいよそういうの。それより今日の目的は聞いてる?」


 「「はい!蟹を食べます!」」


 「うん、その通り。ルークはそこで何笑ってるか知らないけど、早速行こうか」


 すっかり畏まる二人となんか笑ってるルークを他所に、隊長はサクサク大河に向かう。何しろ普通に歩くだけで速い。


 「まあ、蟹なら自分も狩り慣れてるし、問題は無いと思いますけど」


 「うん、戦闘力的には問題ない。ただまだ迷ってる事があるんで、その辺りは道々考えるわ。確かソタローも指揮出来るんでしょ?任せるわ。自分は打撃力低いし、攻撃受け止める係で」


 「え?隊長って軽量ですよね。あのサイズのボスの攻撃受け止めるのは……」


 「まあ、旅する前から留めるだけは出来たし、なんとかなるでしょ」


 なんとかなるんだ。こんな軽量でタンクな訳ないし、回避タンク?


 いやでも留めるっていってたよな。どういう事だ?


 そして大河沿いの蟹ポイントに付くと、早速皆で小さい蟹狩り。


 小さいって言っても魔物なので、大型犬くらいのサイズはあるんだが、まあそこはサクサクだ。手馴れた作業。


 そして、出てくる大蟹。


 装備さえ整っていれば一人で倒す事も出来るが、今は支給装備。慎重に行こう。


 「それじゃ、全員配置に付いて!食べる為だけの蟹に怪我を負ってたら馬鹿らしいから慎重に行くよ!」


 そう言ってる傍から、何か考え事をして目の前に大蟹がいるのにボーっとしている隊長。


 迷い事があるって言ってたけど、一体なんだろう?それにしても不用意すぎる。


 声を掛けようと思った時には、大蟹が大きい方の鋏を隊長に振り下ろす。


 思わず自分とチャーニン、スルージャが息を呑むものの、


 いつの間にか抜いた支給のショートソードで蟹の一撃をブロック。


 片手で小揺るぎもしないブロック、蟹の動きが止まる。


 「はい!攻撃しますよ~!」


 そう言いながら蟹の目を狙うルークの命中率もまた異常。かなり高い位置にある蟹の目を寸分たがわず射抜く。

 

 「凄いですねルークさん……」


 「何がです?」


 「いや、命中率が?」


 「止まってる的に当てられないで、動いてる敵に当てられないじゃないですか、何を言ってるんです?とりあえず隊長に任せておけば、勝手に蟹の動きは止まるので、大丈夫です。どんどんやりましょう」


 大丈夫なんだ……そして当たるのが当たり前なんだ……。


 しかし、見てばかりもいられない。全員で攻撃を仕掛けると、隊長が何か言ってる?


 「焼きと揚げかな?」


 ヤキトアゲとは?


 周囲に新たな魔物が出てないか確認するが、特に問題は無さそうだ。


 そして、蟹が勢いをつけて突撃してくるが、それも隊長がブロック。


 どういう足腰してるんだこの人……。


 「いや、やっぱり汁物も捨てがたい、やはり郷土料理的には……」


 え?本当に何をぶつぶつ言ってるんだろう。


 全く心ここにあらずなのに、なんで相手の攻撃に的確に対応できるの?


 そして、チャーニンの槍が蟹に突き刺さる。


 蟹が泡を吹き出して倒れると、ちょっと前の黒い蟹を思い出し、一瞬体が硬直してしまった。


 同時に隊長も目を見開き、倒れた蟹を凝視している。


 やはり瘴気生物を倒した者同士、通じる経験でもあるのだろうか?


 「決めた!今日は蟹雑炊と蟹味噌汁にする!やっぱり淡水の蟹だしそれしかないでしょう!もっと小ぶりなら丸揚げだったけど、お前は蟹雑炊の蟹だ!」


 「え~……、迷ってる事って食べ方だったんですか?」


 「うん、蟹食べるって言うのに、食べ方以外何を迷うの?」


 「いや、まあそうなんでしょうけど、心ここにあらずだと危ないですよ」


 「隊長は昔からそんな感じだから、仕方ないですよ。心ここにあらずの様で、ちゃんと対応できるから放って置いた方が利口です」


 そして、また倒しきっていなかった蟹が立ち上がる瞬間に、足を斬り払い、もう一度倒す隊長。


 一斉に攻撃を仕掛けて倒しきる。


 ルークが<解体>している間、隊長は近くのセーフゾーンで準備、自分達はルークの護衛。


 材料が揃えば、あっという間に料理が出来上がっていく。


 本当に尋常の手際じゃない、どこで手に入れてきたのかちゃんと出汁をとり、米もあれば味噌もある。


 相変わらず家庭の優しい味だが、妙に満たされる食事。


 皆どこかほっとした顔で食べてるけど、ご飯食べる為だけにここまでやるのって、どうなんだろうか?

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― 新着の感想 ―
[一言] やったね、ソタロー、隊長の手料理食べられたね(//∇//) 当たり前のように、食い気一直線な隊長と、ルーク(笑)
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