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MONOローグ~夢なき子~  作者: 雨薫 うろち
西帝国動乱編
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7.カヴァリー

 「やぁ、待たせたね」


 「何言ってんだ。急に呼びつけて悪かったな。こいつが噂の次の指揮官候補。隊長よりはよっぽど常識的だ」


 「へ~、そうか!僕はカヴァリー【騎兵】隊の指揮なんてやってるけど、隊長と比べたらまだ大した規模じゃない。よろしくね」


 「はじめまして、ソタローです。隊長の他にも【兵士】系のプレイヤーっていたんですね」


 「それはね!別に誰もやってないわけじゃないんだよ。ただ手に入るスキルが汎用的な物だから、サブジョブとしてやってる人が多いってだけ。僕は<騎乗>が欲しかったから【兵士】メインだけど」


 なんか妙に爽やかなお兄さんって感じだが、何でこの人を呼んだんだろう?


 「うん、じゃあ行って来い」


 「どういう事です?」


 「あれ?雪鳥蜥蜴を狩って素材が必要だって聞いたよ。一応サブジョブが【狩人】だから<解体>は可能だし、手伝うよ」


 「そう言うこった。素材を手に入れるなら【狩人】と組まなきゃ無理だろう。でもまだはじめたばかりじゃ、そこまで伝手も無いだろうしと思ってな」


 なんでこんな面倒見がいいんだろうこの人達。いい人なのかな?それとも過疎地の【帝国】だから協力し合う事に慣れてるとか?


 しかし、あまりこちらの話も聞かずに、話が進み気がついたら【古都】北門。


 「じゃあ、ここからは魔物が出るから気をつけて。【兵士】職なら<察知>は取ってるよね。ちゃんと周囲を警戒しながら進もうね」


 「あっはい!気をつけます」


 そう言いながら、どんどん進むカヴァリーさん。【騎兵】隊という割には今回は自分に合わせてくれて徒歩だ。


 装備は軽装。服の上から胴体だけ一応鎧?体の前面と背中を守るすっきりとした形のアーマに後は皮革のちょっと重そうなコートと、コレだけ。


 腰にはサーベルを差しているのでそれがメインウエポンなんだろう。


 「あれだね。ソタロー君はちょっと若そうだけど、学生?答えたくなかったら別にいいけど」


 「あっはい!学生です」


 「じゃあ、このゲームはちょっと高かったんじゃない?」


 「そうですけど、親がお金を出してくれたので、月々決まった額返してますね」


 「へ~!偉いね~。てっきり誕生日にでも買ってもらったのかな?って思ったから」


 「ああ、両親はそれでいいって言ってくれたんですけど、折角自分でやりたいと思えたゲームだったので」


 「そうか。やりたいと思えたからか……。あっそろそろ魔物が出てくるから雪の中をよく見てみな」


 言われたとおり、雪の中を凝視すると何かが蠢く様子が見て取れる。


 「いってみても大丈夫ですかね?」


 「あれも驚かす以外は初心者でも狩れるからやってみな。危なそうなら手を出すよ」


 言われるまま、抜剣して敵に近寄る。勿論今の装備は兵舎で借りた支給品。


 急に飛び込まれてもいい様に盾を突き出し、そろりそろりと近づく。


 大河沿いも大概雪深いが、北側はもっと酷い。しかも小高い丘になっており、斜面での戦闘って言うのはなんとも勝手が違う。


 急に飛び出してきたのは、節ごとに脚の生える気持ち悪い生物。あまりの凶悪な姿に言葉も出ないが、とにかく気持ち悪い。


 真っ直ぐ飛び込むように頭部から突っ込んでくるが、そのキシキシと動く前歯?が気持ち悪い事この上ない。


 思わず打点も何も関係なく正面から顔を殴るように盾を突き出し、押し返す。


 それでも怯んだ気持ち悪い生物の節の一つを剣でぶった切る。


 一発目は力んでしまったが、二発目は綺麗にスンッと剣が体のつなぎ部に吸い込まれ、真っ二つになった。


 それでものたうつ体が跳ねてきて、驚いてもう一発盾で殴りとばす。


 その内のたうつのが止まり、完全に力を失ったところでカヴァリーさんが<解体>してくれて、


 雪百足の〔尾脚〕〔顎肢〕〔甲殻〕〔毒腺〕が手に入り、譲ってくれる。


 「遠慮しないで全部持っていきな。少しは装備を整える足しになるだろうし」


 そうして、斜面を登り終えると今度は目の前が崖になっていて、そこに大きな橋が架かっているので、二人連れ立って渡る。


 しかしこの寒い中警備しているNPCがいるって事はいずれ自分もこのクエストを振られる事もあるのだろうか?


 だとしたら、もっと温かい装備を早いうちに手に入れないと!


 そんな事を考えつつ、いつの間にか丘の上に到着し、そこからは下る方への道と上っていく方の道と分かれている。


 「下れば渓谷方面、登ってひたすら山中を行けば【鉱国】方面だね」


 「【鉱国】ですか?」


 「最初の白い空間でスタート地点選ばなかった?【帝国】の隣は鉱物資源が豊富で生産プレイヤーが多い【鉱国】だよ」


 「ああ!そう言えば!自分はすぐに【帝国】を選んでしまったので忘れてました」


 「おっと、お喋りしてたら来ちゃったね」


 カヴァリーさんが指差す方には恐竜のシルエット。


 「恐竜……」


 思わず息を呑んでしまうが、走って近づいてくるそれは、小さい。


 尻尾も入れた全長はそれなりなのだろうが、頭の位置は自分より頭一つ分高いか位かな?


 「ほら来るよ!頑張って!」


 カヴァリーさんの声に、反応してすぐに意識を戦闘状態に引き上げて、


 剣と盾を構えて対峙すると、走った勢いのまま頭突きをしてくる恐竜。


 顎をかち上げるように盾で殴るが、恐竜は勢いのまま自分を通り過ぎてしまう。


 振り返れば、頭を振って怒ってる様子の恐竜の尻尾に剣で一斬りれた。


 尻尾のダメージに驚いたのか、飛び跳ねてそのまま、くるっとこちらに向きを変えた恐竜の顎下から、剣を突き込む。


 深く突き込むと頭を一振りして強引に引き抜いてくるが、もうフラフラの恐竜の頭を思い切り剣で殴れば、そのまま倒れ伏した。


 「こいつが雪鳥蜥蜴だね。装備の為にいくらか狩ろうか」


 そして、その後もカヴァリーさんと狩りを続け、十分な数の素材が集まったところで、【古都】へ帰還。


 クラーヴンさんに任せておけば間違いないとの事なので、全て任せてログアウト。


 今日はクエスト出来なかったな。

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― 新着の感想 ―
[一言] あぁ、そうか クエストもそれなりに時間が掛かるからなぁ                                          
[良い点] 気持ち悪いものを見た時の語彙がリアルw 確かにゆっくり解説なんてホラーゲームの主人公でもなければできないよなw [一言] とりあえずクラーヴン
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