61.ホアン式核破壊法
「相談なんですけど、重剣で叩いても砕けてしまう敵の核を見つけて攻撃する方法が知りたいんです」
「ソタロー!僕は嬉しい……。遂に師匠として認めてくれたって事だね?」
「いや、以前から師匠とお呼びしてますが?」
「分かってる。でも今君は苦しい胸の内を打ち明けてくれた!そして本気で僕の教えを請いたいと思った。そうじゃないかい?今までは強くなれるならと何となく言う通りにしていただけ、師匠が誰であっても強くなれればそれで良かったんじゃないのかい?」
ぐぅの音も出ない。その通りだ。
口では師匠と呼びながら、プレートの戦い方を教えてくれるなら誰でも良かった。
しかし今はこの気持ち悪い師匠の事を信用している。特に理由があるわけでもないが……、
強いてい言うならちゃんと自分の話しを聞いて、解決に導いてくれようとしてくれる相手を信じたって事かも知れない。
「すみません。疑っていた訳ではないんです」
「分かっているよ!僕も責めているわけではない!最初に言った通り嬉しいだけなんだ。ソタローと心の距離が縮まった事がね!しかし、信用されて何にも手がない等と言う訳には行かないね……核を破壊する方法か……」
「えっと、難しそうですか?だったら術の取得を考えますけど?」
「いや!術はこの前覚えたばかりだろう!もっと使いこなせば色々と出来る様になるぞ!」
「え?基本防御と総金属装備でも動きやすくなる術じゃなかったでしたっけ?」
「うん、それはその通りなんだけど、それは置いておくとして。何しろソタローは素早く正確に一点を振りぬくタイプじゃないだろう?」
「それは、まあ、多分?防御の上からでもダメージを与えるような威力重視ですかね?」
「しかし、相手は崩れてしまって衝撃の伝わらない相手か、相性が悪いね。普通ならソタローのその重剣攻撃で怯むはずなんだけど、崩れちゃうとなるとね……」
何かやっぱり難しい気がしてきた。まず核を見つける必要があるし、それをなんとかするって言われても多分的は小さい。
何しろ試練の白い剣持ちを一回砕いてみて分かったが、特別色が違うとか、大きな塊だとかはなかったと思う。
つまり、氷片に混じる核を探し出して剣で叩くってのはかなり至難の業。
「やっぱり攻撃術を何か探しますよ」
「うん……、ソタローの攻撃で一番面積が大きいものはなんだい?」
「攻撃は剣と蹴りですかね」
「盾は?攻撃に使えないのかい?確か盾の武技を使っていたよね?」
「あっ……、でも突き放すだけですよ。今回の相手だと多分砕けちゃいます」
「うん、でもさ砕けて散らばった相手を盾でまとめて押し潰したらどうだろう?ソタローの体重で押し潰せば相応のダメージになると思うんだけど?」
「まぁ……そうなんですか?バッシュと<中盾><盾技>はありますけど、ダメージって出るものなんですか?」
「ん~普通なら盾は防御用武器だから、ダメージ出すって言うのは難しいかもね。でも武器で防御出来る様に、盾で攻撃も出来るんだよね。剣とか攻撃スキルと合成したりとかしてない?」
「してますね。<圧迫>って言うスキルになってます」
「アレだね……、防御する相手への貫通ダメージ量を増やしたり吹き飛ばしたり、逆に自分が盾で迎撃した時はダメージを減らスキルだ。そのまんま盾攻撃用スキルだよそれ!うん!これは面白い事になってきたよ。武技に頼らずに盾で攻撃する事を覚えてみようか!剣ほどのダメージは出ないかもしれないが、当てられないよりは、ずっといい筈だ!いや~ゾクゾクしてきたよ!やっぱり君は最っっっっ高だ!」
何をゾクゾクしたのだろうか?
しかし、そうか盾で攻撃してもいいのか。今まで攻撃を迎え撃つのにしか使ってこなかったから、相手へのダメージとか考えてなかったな。
左手に装備している盾は表面がやや丸みを帯びた四角い盾。
警官隊とかが持ってそうなあれだ。持ち上げて顔を隠すと腰の辺りまで隠れるくらいの長さ。
ベルトで前腕中程を固定して、取っ手を握りこんで扱っている。
警官とかは地面に対して水平に固定するが、自分は垂直に固定。疲れて腕を下げている時は逆さ盾の縁が顎まで隠す。
簡単に言うと前腕の動きと同じ方向に盾が動く感じ。腕を横向きに構えれば、盾も横長に構える形になる。
ちなみに作業する時は背負ってるか、そこらに置いている。無用心かもしれないが盗まれる事ってあるのかな?
さて、問題はこの盾でどうやって崩れた氷片を攻撃するか。
何しろ地面攻撃だから、盾持ったまま寝転がる?
そうすれば確かに体重はかけられそうだけど、本当にダメージになるのかな?
そっと盾のベルトから腕を抜き、取っ手だけを持って盾の表面で地面をぶん殴ってみると、
訓練場に薄く積もった雪が舞い上がり、手に軽い痺れが残る。
「こんな感じですかね?」
「うん!上々だね。フフ……楽しくなってきたね。盾攻撃の可能性。ただアレだ今のままだと減速してしまって折角の重量も面での衝撃も逃げてしまう。空気抵抗を無効化するような重量が必要だね」
……やっぱり寝転がる他無いのか?
まあやってみよう。それからの話だ。