6.次の標的
緊急召集の後は流石に疲れて、すぐにログアウトし、
翌日学校とバイトを終えて再びのログイン。
今日はクエストを受ける前にやっておきたい事がある。何しろこの前の緊急召集の報酬でお金と貢献ポイントにいくらか余裕が出来た。
ちなみに貢献ポイントはクエストをクリアすると貰え、これと交換でスキルを手に入れている。
通常どのプレイヤーもジョブに就いて、その貢献ポイントでスキルをそろえている筈?チュートリアルでもそう説明されたしさ。
さて今日の用事その1、早速兵長の所に行き、
「すみません、この前に引き続きでまたスキルが欲しいんですけど」
「ん?何のスキルだ?」
「蹴りに関するスキルって自分でも取得出来ますか?」
「ああ<蹴り>だったら汎用戦闘スキルだから取得できるぞ。アビリティはどうする?」
そう言いながらいつものでっかい本をカウンターに広げる。
「そのアビリティがいつも悩みどころなんですよね」
「じゃあ、蹴撃にしておけ」
「特に断る理由は無いんですけど、一応理由を聞いておいても?」
「両手に剣と盾を装備して、細かい蹴り技の連撃何ぞ使わんだろう?だったら思い切ってダメージや相手を怯ませる効果のある蹴りを一発食らわす方が理に適ってるだろう」
「そうですね、じゃあアビリティは蹴撃にします」
<蹴り>
蹴撃・・・ダメージ上昇、デバフ効果上昇
よし、コレで一つの目的は果たした。
今日はもう1個やりたい事がある。それはお金が入ったので、自分の装備品を作る事。
同期のガンモには遅れをとってるし、それはお使いクエストばっかりやっている所為なのは分かっているが、少しでもパワーアップしておきたい。
どこか安くていい武器を売ってる所はあるだろうか?
ちょっと【古都】をぶらつき、店を見て回っていると見知った顔が……、
「おっ!ソタロー君じゃん!何だ店なんか見て、クエストじゃ大して儲からないだろうに、あれか?気分転換のウインドウショッピング」
「いえ、この前緊急召集があっていくらかお金に余裕が出来たんですよ。折角だから武器でも買おうかと思って」
「それならクラーヴンの所に行けばいいじゃないか」
「クラーヴン?」
「鉄のゴドレンの店で修行してる鍛冶プレイヤーだよ。俺は術士だしあまりよく分からないが、質はいいらしいぜ。隊長も御用達だしな」
「そうなんですか。自分みたいな初心者でも作ってもらえますかね」
「大丈夫だろ。いつも修行と称して包丁とか鍋作ってる奴だし」
「え?剣は作ってもらえますかね?」
「だから、隊長の剣を作ってるのはクラーヴンなんだから大丈夫だって」
と言う事なので、鉄のゴドレンの店へ。場所は【巡回】任務で見た事があるから問題ない。
「いらっしゃい」
「こんにちは、アンデルセンさんの紹介できたんですけど」
「聞いてるぜ、ソタロー君だったか?隊長の後追ってるんだって?」
「いや、ゲームを始めたきっかけが、隊長だったってだけで……」
「そうかそうか、あいつは変わり者だし真似しても碌な事ないからな。まともなプレイヤーが増えて良かったぜ」
「え?やっぱり真似してたら駄目なんですか?じゃあクエストとか……」
「ああ、クエストについてはどうだろうな?俺も頼まれるままクエストばっかりやってるし、悪いとは思わないが」
「そうですか。ところでお金がいくらか入ったので剣を作りたいんですけど、高いですかね?」
「いや、別にうちは鉄しか使わんし、そこまで高価な物じゃないぞ。それで石とかは持ってるのか?」
「石ですか?」
「ああ、宝石や魔石だな。剣の性能や使い手のステータスに影響が出るんだが……」
「持ってないですね。やはり高い物ですかね?」
「ああ、そっちは初心者からすると値が張るかもな。まあでもゲームはじめて間もないんだし、普通の鋼の剣でいいか。それで剣鞘とかはどうする?」
「え?剣鞘?」
「ああ、剣帯と剣鞘が無いと折角の剣の携帯性が意味なくなるだろう?それとも抜き身で持ち歩く気だったのか?」
「いえ、そうですよね。剣帯か……」
「ああ、魔物の革とかあればなんとでもなるが?」
「河鼠でも?」
「それは服にするのはいいが、剣鞘にはちょっと向かないか。そうだな……雪鳥蜥蜴は分かるか?」
「いえ、ちょっと……すみません」
「いや知らんものは仕方ない。一応【古都】を北に出れば現れる魔物なんだが、初心者でも狩れる魔物の筈だ。ただ河鼠よりはサイズが大きいし、生命力量も多いって話だぞ」
「その雪鳥蜥蜴の皮を集めてくれば剣帯や剣鞘も作っていただけると?」
「そういう事だな。【兵士】の支給装備にも使われる素材だし、基本中の基本だからな。ちょっと頑張ってみろよ。そうすれば材料費が浮いてかなり安く仕上がるぞ」
ふむ、剣確保は何とかなりそうだけど、雪鳥蜥蜴の素材集めか。
<解体>を持ってない自分にとしてはガンモ位しか使い手に心当たりが無い。
一旦店を出るが、今の時間ガンモが何をやっているかなど分からない、まずはクエストでも終わらせておこうかと一歩踏み出した所で、
「おう、知り合いに連絡取れたからちょっと店で待ってろよ」
店からクラーヴンさんが出てきて、呼び止められた。
そのまま店に引き込まれて、紅茶と茶菓子を出されて待っていると、来客が一人。