56.新術取得
そして中隊を率いれる様になったのはいいが、じゃあレギオンボスがしょっちゅう現れるのかと問われれば、そんなことは無い。
しかし、大規模【輸送】するには自分の重装備がネックになってくる。
となると結局20人規模で【古都】周辺任務。
とは言え希望すれば【黒の防壁】で任務に付いて100人を運用する勉強も出来るらしいので、不満は全く無い状態。
じゃあ、なんであえて【古都】に留まっているかというと【訓練】したいから。
【黒の防壁】で魔物を狩っていたので、多分また強くはなっていると思うのだが【訓練】してない所為か調子が出ない。
「師匠!お久しぶりです。すみません折角来てもらっているのに……」
「気にするな!分かっているよ君がこの国と民を思い、かの【黒の防壁】で戦ってきた事はね!そしてまた一段と強くなったようだね。まさかもう100人を率いる立場になるとは恐れ入ったよ」
「いえ、偶々兵長の策略で強制的にそうなっただけですから、それよりも調子が出ないので、やはり師匠の教えが必要で」
「な!なんて謙虚で尚且つ師匠思いの弟子だ!思わずときめいてしまったよ!いいだろう……全身全霊を賭けて君を一角の【重装兵】にしようじゃないか、フルプレートといえば平原の騎士の物だと思っている者も多いようだが、この装甲が凍りつき足が埋る雪国のフルプレート重装甲の戦闘能力のみではない、不屈の精神!そう!【帝国】兵の恐ろしさとは逆境に立ち向かい強大な敵に喰らいつく心の強さだと、それを君の体に植え付け、いつかは世界すら守る鉄の壁と……」
「具体的に何をしましょうか?」
「そうだね、術を取得しようじゃないか」
「<戦陣術>なら持ってますけど?」
「いや、そうじゃない!君個人の戦闘術だ。僕が教えられるのは【教国】の鎧術をベースにして【帝国】風に僕がアレンジしたものになるがね」
「えっと【教国】ってなんか都一個の国で、でも国民は世界中の【教会】にいるとか言う」
「その【教国】で間違いない。かの国の【兵士】はフルプレートを身につけ、体を張って攻撃を受け止め<法術>で回復を繰り返し心の折れることを知らない猛者揃い。昔修行の為に出向させて貰ったのだがとても勉強になったものさ」
「猛者揃い?なんかキラキラした造形の方が多いって聞きましたが?」
「うん……皆心はとても熱いのだが僕同様筋肉が付きにくいらしい。ヒトによってはもっと暑苦しく汗臭くなりたいって他国に出るヒトも少なくないって聞いたよ。僕なんかは【帝国】出身で割りと冷静なものだから、向こうでは氷の貴公子なんて呼ばれたりしてね……」
【教国】怖すぎ……ホアンさんで冷静って……絶対おかしい国じゃん……あれ?アンデルセンさんも<法術>使えるんじゃなかったっけ?あの人もおかしい人か!うわー……。
「あの【教国】は置いておくとしてですね。その戦闘術ってなんでしょう?」
「そうだね、平たく言えば必っっっ殺技だね!」
「必殺技ですか。鎧で相手を必殺するんですか?」
「そうだね、相手の心を必殺する技と言ってもいいかもしれないね!」
「ええ……精神破壊とかはちょっとなんか不穏な感じがして嫌なんですが」
「うん……精神破壊という単語がでてくるソタローの中にこそ狂気が潜んでいるようだ。だが安心したまえ、実力で相手を屈服させるという事だ。ある意味お互いが余計な怪我を負わせずとも戦いが済むなら素晴らしい事じゃないか?」
「まあ、それはそう……なんですか?」
「うん、そうだよ。安心したまえ!その名も<鋼鎧術>だ。何しろ【帝国】は鉄の名産地だからね。僕流にアレンジした結果こういう術が出来た」
「出来たって……、まあいいですけど、どんな術なんですか?」
「そうだね一番基本的な術は攻撃を防いだりダメージを軽減するモノだけど、要はただでさえ重くて動きの制限されるフルプレートでも自在に戦えるようにする術だね」
「ただでさえ防御力の堅いフルプレートで更に動きやすくしちゃうんですか?」
「そうだね。その代わりに精神力を消費する訳だ。まあ当然の対価って事かな。ノーリスクノーコストって訳にはいかないね」
「じゃあ、それを教えていただいてもいいですか?」
「それでは悲しいお知らせです」
「ええええ!何ですか急に!さっきまでアレほど積極的に勧めて置きながら悲しいお知らせって……」
「うん、ノーコストノーリスクって訳には行かないって言ったじゃない?<鋼鎧術>を取得するには<戦技>を消費しちゃうんだ」
「そうなんですか、一応理由を聞いても?」
「そういう物としか……。僕も術を開発したら消費してて……、見識のある人に聞いてみたら、強力な術やスキルは時として他のスキルを代償にしたりする事もあるらしい」
「じゃあ 武技 衝突 も、もう使えないって事ですか?」
「ああ、それは似た武技に入れ替わるから大丈夫。寧ろ威力上がるから安心して」
「じゃあ、将来的に取得できるかもしれない武技が一部取得できないものが有るかもって事ですか」
「そうだね。でも今後もフルプレート装備なら、別にそこまで重篤な状態にはならないとは思う」
うーん、どうするかちょっと悩みどころだけど。でも全てを極めるなんてどうせ出来ないもんな。いいか、ここは勢いで取得しちゃおう!
「分かりました!<鋼鎧術>取得します!」
「それでこそ我が弟子!僕が見込んだだけの事はある!共に邪神の手の者から人々を守る鉄の壁となろうじゃないか!」
「そう言えば【帝国】の割りに氷とか雪とかが付くわけじゃないんですね」
「ん~それだと<精霊術>っぽいじゃないか!」
???そういうものなのかな?