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MONOローグ~夢なき子~  作者: 雨薫 うろち
西帝国動乱編
55/363

54.軍狼

 「軍狼はですね。目の前に敵がいる限り勝手にあちこち散ったりしないから、戦力を集中しても大丈夫ですよ。寧ろ無理な包囲殲滅より正面きって戦った方が戦いやすいかもしれません。ただ注意しないといけないのはあの二頭の狼型ですね。赤と青の一回り大きな狼が見えると思うんですけど、あいつ等は独自の指揮権があるので、回り込んだりと厄介な相手です。そこにどう対応するかですね」


 「そんな事より、ルークもついてきちゃったんですね」


 「ええ!それはもう!いきなり【士官】になって【黒の防壁】守備なんて大変でしょうからアドバイザーですよ!【弓兵】は率いますから安心してください。一応コレでもそこらの兵よりは<戦陣術>のバリエーションもありますし!」


 「それは頼もしいです。それで、軍狼には弱点とかあるんですか?」


 「いや特別な弱点はありませんし、平均的な能力です。一応あのボス個体を倒せば統制を失って森に帰っていきます」


 ふむ、それなら硬い陣形を組んで、ボスまで突破する戦いになるのかな?


 回りこむ相手には【偵察兵】20人に任せて、残り80人は一丸になって敵の中を突っ切るか。


 こっちが密集して力を溜めるほどに、相手は戦闘に参加できない余剰戦力が出来る筈。


 要は当たる面を減らして、実際に対面する人数はこちらが多い状態をキープできれば有利に戦える筈。


 「よし!じゃあ隊列を組みます!最前列は自分を含めた【重装兵】が受け持ち適宜入れ替わりながら兎に角粘ってください。そして左右及び後ろに【歩兵】を囲むように配置。壁としては薄くなりますので、お互いのフォローに気をつけて下さい。そして内側に【弓兵】及び【衛生兵】となります」


 「それで、作戦は?」


 「方陣を使用して真っ直ぐボスまで突っ込み、討伐します。【偵察兵】は回り込む戦力に対応してください」


 「なるほど、ボスを倒す事に主眼を置いてガンガン攻め込むと……。脳筋作戦ですね」


 「乱戦なら寧ろ、敵も何かすれば仲間を巻き込むことになりますし、一方的にはめられない様にするには好都合かと」


 思いつきで立てた作戦だけどなんか皆納得してくれたみたいなので、早速隊列を組むと、


 丁度程よい間合いに軍狼達も布陣。って言ってもバラバラに白い犬型魔物がこっちを向いて唸っているだけだけど。


 とりあえず様子見なのか赤と青の狼型とボス個体と見られる一際大きい黒の狼は最後方で待機。


 「それでは、軍狼討伐開始『行きます!』」


戦陣術 激励


 まずは自軍の士気を引き上げ戦闘準備と思いきや、相手からも黒のボスから遠吠えが聞こえ、向こうも準備万端ということだろう。


 一斉に襲い掛かってくる白い犬型。まるで雪の表面がずれたかのような錯覚に陥るが、こちらもすぐに対応せねばと、


戦陣術 方陣


 足の速さは落ちるが攻防上昇する陣術で正面の白い犬型に当たる。


 前線は【重装兵】が盾を並べ、衝突の瞬間を耐え……。


戦陣術 斉射


 ルークの<戦陣術>で、正面の敵の足が止まり、若干敵に混乱が生じた。


 自分より判断が的確なルークが率いた方がいいんじゃなかろうか?


 まあ、そんな事を言ってる場合じゃないので、勢いの止まった前列と勢いのついた後列がもみくちゃになっている白い犬型達の蹂躙を開始。


 目の前の魔物に向かって剣を振ると妙に剣が軽い。そして気持ちの高揚が止められない。


 一薙ぎするだけで、白い犬型が散り散りに吹き飛び、動かない。


 あれか、スキルの所為だ。自分のスキルは敵が多いほど筋力と士気に補正がかかるから……。


 まあ、敵は100体いるのだし、油断せずにガンガン斬り飛ばそう。一体でも多く狩ればそれだけ仲間の負担が減る。


 四足で重心の低い犬型達を蹴り上げ、斬り飛ばし、盾で殴り飛ばす。


 そして自分が魔物を狩るたびに隊の士気もガンガン上昇していく。しかしそうなると暴走が怖い。


 ここらでもう一回術を使おうかとも思うが、自分は精神力をあまり鍛えてないので、ちょっと不安もある。


戦陣術 一斉攻撃

戦陣術 援護

戦陣術 救護


 ……何も言わなくても術使って調整してくれるNPCが優秀すぎて心強い。


 しかも今の術で一気に周囲の敵が散ったので、そのまま真っ直ぐ攻め上がる。


 気がついたら生命力もジワジワ持続回復状態になってるし、白い犬型は敵じゃないし、破竹の勢いとはこの事だろうか。


 余裕ができた所で、戦況を<分析>するといつの間にか青の狼型が別働隊を率いて、回り込んでいるが、


 それは作戦通り【偵察兵】達が相手をしてくれている。


 そして後方にいた赤の狼型を先頭に陣形を組み直している魔物達。


 赤い狼型が一吠えしたところで再び突撃を仕掛けてきたので、


 「ここは耐えます。『行きます!』」


戦陣術 激励

戦陣術 壁陣


 前衛の【重装兵】達に防御力特化の術をかけ兎に角耐える時間。


 赤狼型の衝撃は凄まじかったが何とか自分がこらえ、ルーク達の援護射撃でどんどん敵を削り倒す。


 圧力が減ったところで、赤討伐を開始。


 自分が正面から重剣で頭をかち割り、敵も同時に前足で攻撃してきたがそれは肩当でガード。


 更に一歩踏み込み赤の喉に剣を突きたて、逃げられないように盾を持つ腕で前足を抱え込む。


 自分は投げや掴みのスキルは持っていないのでダメージは出ないが逃げられなければいいので、筋力で組んだまま剣で抉り倒す。


 動かなくなった所で横倒しに赤を捨てる。


 後は黒いボス個体とちょろっと残った白い犬型だけ。


 黒いボス個体が犬型を吹き飛ばしながら走り寄ってくるが、巨体に関わらず雪の上を滑るように走るのは、スキルの所為か、足の構造なのか?


 赤い鬣が特徴の黒い狼がこのままの勢いで突っ込んできたら、こちらも陣形を保てないだろう。


 ならば、


策戦 声東撃西


 突っ込んでくる寸前に、どこか遠くを見ながら足が止まってしまう軍狼。


 この策戦は全く関係ない場所に気配を感じるだけの策戦だが、魔物相手だと一瞬動きを止めるのに使える。


 そして足の止まった軍狼に一斉攻撃。


 頭の位置が高いので、まずは足を崩す。体中の筋肉を使い細い脚の脛を重剣で殴打。


 『ギャゥゥゥン!』


 と軍狼が叫ぶが容赦してはいられない。


 しかし、容赦しないのは向こうも同じ、前足を中心に回転し尻尾で兵達を吹き飛ばし、


 更に空中バク転し、ちょっと距離を取ったかと思ったら真っ直ぐ突撃してきた。


 盾を構え、耐えようと思ったが、残念ながら自分も吹き飛ばされる。


 すぐに立ち上がるのと、軍狼が振り返るのが同時。


 前足の薙ぎ払いを盾で受け、一瞬動きが止まってしまったが、


 すぐさま地面に付いている方の足に剣を突きたて、刺し貫く。


 自分が時間を稼いでいる内に兵達も戻り再び攻撃再開。


 自分は徹底的に片足を殴り続け、ついに足を折るように伏せてしまった軍狼を更に畳み掛けるように攻撃。


 ぐっと後ろ足に力を入れた軍狼が後ろ足だけで立ち、そしてそのまま上体を地面に叩きつけると発生する風圧と巻き上がる雪で再び兵達が吹き飛ばされてしまう。


 重量のある自分だけが、そこまで大きく飛ばされる事はなかったが、


 目の前で大きく息を吸い込む軍狼に、何故か一気に冷や汗が出た気がした。


 そしてそのまま直感に従い、軍狼の顔を剣で思い切り殴りつけ、何かを吐き出すのを妨害。


 口をガパッと開き、そのまま倒れた軍狼の首裏に大きな魔石?が露出したので、剣でぶん殴る。


 その衝撃に反応したのか、ビクッと体を起こす軍狼の壊れてる前足を再び斬り払い伏せさせ、


 魔石を破壊。


 そのまま動かなくなった軍狼と、頭の中に流れるファンファーレ。


 軍狼(マヴロ・リュコス)が討伐されましたMVPを発表します。


 クエスト発見者

 ラストアタック

 最多撃破

 MVP


 なんか4個ももらえるらしいんだけど、こんな物なのか?


 まずはメダル?勲章かな?


 [中隊長(ケントリオ)の称号]


その他は装備っぽいな

 

 [軍狼の長靴素材]

 [軍狼の筒衣]

 [軍狼の冑素材]


 うん、素材って何?って思ったけど、どうやらコレをベースに金属防具を作れるみたい。


 そして、筒衣ってのは見た目今着てるサーコートと何にも変わらない。


 なんならどっちも毛足の長い黒だし、同じ物にも見えるくらい。


 ふと、こちらに近づいてくるルークが視界に入る。


 「ソタロー!良くやりましたね!いや~これは中々の戦果ですよ。本当にアレだけの相手をよく圧倒しましたね。いきなりの中隊戦で大戦果とは見上げたものです。ところでさっき色々手に入れていたみたいですけど、他の素材はどうします?今皆で犬型とか狼型の<解体>してますけど」


 「自分は十分な物が手に入ったので、皆で分けてください」

 

 「いやいや、そうは行きませんよ。皆最前で戦ってるソタローを見てるんだから、ソタローが何も受け取らなかったら遠慮しちゃいますよ」


 「そういうものですか?ちなみにルークは何が欲しいんですか?」


 「自分は前に矢筒を青い狼の物にしたので、今回は靴用にいくらか毛皮を貰おうかと思ってます」


 「そうですか、それは似合いそうですね。自分はちょっと流石に疲れたので、休みます。分配はお任せします」


 「ああ、それはそうですよね!任されました!」


 それだけ、会話して自分はログアウト。戦闘が終わった瞬間になんかどっと疲れた。

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― 新着の感想 ―
[一言] ちゃっかりルーク お目付役もこなす、実は実力者のルーク ついつい、性別を忘れちゃうルーク(←それはお前だけだろう) これから砦まで、また、えっちらおっちら行軍するんだねソ…
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