53.【黒の防壁】へ
自分の勘違いで偶に【黒の防壁】を【黒の砦】と書いている箇所があるかもしれません。
正しくは【黒の防壁】という名前の砦です。
「おう!お前ら!」
「あっやべっ!サボってないですよ兵長!」
「そうそう、【帝国】の歴史についてルークに教えてもらってただけだし」
珍しく【兵舎】じゃなく、広場まで現れた兵長に速攻言い訳する仲良し二人組み。
「そんな事じゃねぇんだよ。寧ろまだ出て無くてよかったぜ」
「何か緊急事態ですか?」
「おう、チータデリーニを故郷に帰してやらなくちゃならなくなった。急いで【黒の防壁】につめてくれ」
「了解!」
「うん、ソタローは話が早くていいな。じゃあ今から【士官】だからそのまま【黒の防壁】の指揮を頼むぞ」
「いやそれはおかしいですよね!いきなり昇級した挙句、100人規模の要塞でしたっけ?そこの指揮を執れって無理にもほどがある」
「大丈夫だ。何とかなる!」
「寧ろチータデリーニさんは何で帰る事に?また熊が出たならそっちを自分が対処しますよ?」
「いや、あいつのうちの子が生まれそうなんだ」
「え?そりゃ自分じゃどうにもならないですね……」
「畜産系のスキルは取得してないもんな。今は丁度アリェカロの出産シーズンで実家が牧場の家は大変なんだ。お前が行って頑張って来い」
「子って、アリェカロですか!そりゃ畜産は出来ませんけども!でも【黒の防壁】って【旧都】を守る要所じゃないですか」
「まあ大丈夫だろう。そもそもお前さんを【士官】にするのが遅かったと思ってるんだ。周辺の部隊級ボスは狩れるんだし、そろそろ上に行く段階だと話はまとまっていたんだが、師をつけてやれなくて、お前さん自身の戦闘能力の成長が遅れちまったからな。今なら申し分ない!暴れてこい!」
なんて事だ。まあ他にやるヒトがいないなら自分が行くしかないんだろうけど。
<焚気><塞剣士>
<圧迫><軍術士><行軍>
<探険者><体操士>
控え
<簡易調理><手入れ><統法><武技士><治療士>
集団戦やるには<分析>があるだけでだいぶ違うし<探検者>は必須。さらに<行軍>が無いと隊列変更できないからこんな感じかな。
武技が使えないのは中々辛い所だが、やるしかないか。
<戦陣術>・・・戦術 激励
戦術 戦線維持
戦術 奮闘
陣術 壁陣
陣術 方陣
<策戦>・・・ 声東撃西
とまあ、術や策戦のセットはこんな感じ。
大急ぎで【黒の防壁】に向かえば、まだチータデリーニさんは待機してた。
「お久しぶりです。交代要員で来ました」
「おっ!ソタローが交代かそれなら【黒の防壁】も安心だな。活躍は聞いてるぞ。まあ気張らなくていいからな。他にも一応交代要員はいるから出来る範囲で頑張ってくれ」
「え?他の交代要員の方はどちらに?挨拶しておかなきゃ」
「ああ、大丈夫大丈夫。交代まで休んでるから気にするな。一応うちに詰めてる兵種を説明しておくぞ」
重装兵・歩兵・弓兵・偵察兵・軽騎兵・衛生兵がこの砦に詰めてる兵種で、この中で好きな数選べるらしい。
ちなみにこの砦は100人で守る事が基本らしいので100人の割り振りを考える。
【重装兵】はまず自分がいるから19人かな。
問題は【偵察兵】か、なんでも多く入れるほど敵の早期発見に繋がって先手を取れるとか。
しかし、正面戦闘は苦手だろう。野戦ならどこかに隠れて伏兵とかって事も出来るのだろうが、難しい所だ。
さらには【軽騎兵】だが、馬が一人分に換算されるので、機動力はありがたいが使いどころが難しい。
よし【歩兵】30人、【弓兵】20人、【偵察兵】20人、【衛生兵】10人で行こう。
【軽騎兵】は他のお休み中のヒトに上手く運用してもらうという事で!
「難しい顔して考えてるが、ここの連中は戦いなれてるし本当に大丈夫だぞ。それよりも【管理】の方が厄介だから頑張れよ」
「頑張れよって、何が厄介なんですか?」
「そりゃ要塞運営するのに、収支つけたりとか装備や糧食の供給依頼したりとか」
「多分普段任務でやってる事だと思うので、寧ろそっちの方は大丈夫ですけど。<分析>スキル持っていれば、必要な物なんて大体分かるじゃないですか」
「……そうか……そっちが得意なら何も問題ないな!じゃあ俺行くわ。頑張れよ~」
それだけ言い残して飄々と家に帰ってしまうチータデリーニさん。
あの熊をも絞め殺す体で、雪の中をひょいひょい飛ぶように走って帰る姿は、見てて頭がおかしくなりそう。
とりあえず、現状の要塞内の装備と兵糧を確認。
十分な数があり、兵達も特に疲れているということも無い。
次の手配も済んでるし、何もやる事が無い。
とりあえずご飯でも作って英気を養いますかね~。
と、調理場に向かい鍋や包丁を用意。今ある食材で何が作れるか考えていた所に、
「ソタロー隊長!大変です!」
「え?何かありましたか?」
「【黒の森】から魔物があふれ出しました!」
「え?魔物が溢れ……溢れって一体じゃないですね。どんな相手ですか?」
「魔物の群れ100体に狼型2体、ボス個体1頭です」
「分かりましたすぐに対処しますので、その魔物と交戦経験がある人を呼んでください」
相手は狼型のようだが、どんな戦闘になるか全く想像がつかない。
何しろいきなりの100人指揮なんだから当たり前。
先ほど組んだ自分の隊の兵達を砦門前に集め、戦い方を決めるとしよう。