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MONOローグ~夢なき子~  作者: 雨薫 うろち
西帝国動乱編
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5.鼠狩り

 大きさに圧倒され、何となく恐竜としか表現できないし、どこをどう特徴を捉えたらいいのかもよく分からない。


 ただ何となく、大きな頭部の鼻の上、角にも見える大きな突起に何かが集まる様なエフェクトが見えた。


 ピィィィィイ!!!!


 直後に耳が壊れるかのような高周波の笛の音が鳴り響き、


 思わずぐらつく体を後ろにいた【兵士】が支えてくれて尻餅つくのを免れた。


 しかし、同時に妙に全身が粟立ち、ゾクゾクと緊張感が高まり、腹から何かがこみ上げてくるような錯覚を覚える。


 指揮官の掛け声と共に突撃する守備隊。


 そして、自分達は大河からもぞもぞと溢れてくる何かを確認し目を凝らす。


 河鼠だ……。


 恐竜と比べたらあまりにもひ弱で小さな魔物だが、全く安心できない。何しろ数が尋常じゃない。


 大量の白いヌートリアと灰色のカピバラが、大河から水が溢れ出すように雪の上を侵食していく。


 本当に膝程度の高さしかないヌートリア達の間に、まるでそれを率いるように腰程のサイズのカピバラ。


 そこに、何色かのエフェクトが飛ぶ。白いエフェクトが多いのはなんだろう?


 術である事は分かるが、まだ色との関係は分からない。いずれ【座学】で教わる事もあるかな?


 鼠も気になるが、恐竜の方も気になる。


 今は半回転して尻尾で守備兵を薙ぎ払っているが、大きな盾を持つ者が吹き飛ばされずに留まって、後列を守るべく耐えてる様子。


 すぐに鼠に視線を戻すが、何しろ鼠達は小さいので正直遅いのでもうちょっと恐竜を見てみたい。


 もう一度恐竜に注意を戻せば、後列からの矢が鼻上の笛部分に集中していて、とても嫌がっているようだ。


 そして、こちらの雑多に集められた側の近接武器を持つ者達の戦闘が始まった。


 自分もヌートリアはどれくらいの強さか分かるが、なにしろカピバラの方がよく分からないので、まだ様子見に回り、


 なんなら怪我人が出ればスキル<手当て>を駆使して回復係になるつもりで、周囲を観察する。


 しかし、敵は数は多くとも最弱の魔物ばかり、何箇所か噛み付かれて嫌がってるヒトはいるが、なんなら蹴りで倒してるヒトも少なくない。


 そうか蹴りのスキルなんてのもあるんだな~。


 などと思っていたら、一匹抜けてきたヌートリア。


 折角なのでコツを掴んだばかりの剣の振りで頭を一撃加える。


 ロングソードになったおかげで、多少は打撃力が増えたようだが、効果は今一つって所か?


 あっさりいつも通り足首に噛みつかれたので、首に剣先を突きたてるように刺し殺す。


 それでも、今までよりかなり攻撃力が増しになったようだ。あっさり倒せたので、更に抜けてきたヌートリアで、薙ぎ払いを試す。


 ロングソードを持っている右手を左頬にくっつけるように斜めに振りかぶり、後は遠心力を剣の先に集めるように、


 スンッてイメージで振る!


 バスッとかガツンと振ろうとすると力が入って、寧ろ剣を振る速度は落ちてしまう。


 それなら剣の重さに任せてヌートリアの顔を横薙ぎに払えば、一撃で吹き飛び死んでしまった。


 それならと幾らでも湧いてくる白いヌートリアで剣の振りの実験。命を弄ぶ行為だが、ゲームだから。


 ヒトに対して敵勢の魔物を必要があって狩ってるだけだから、害獣駆除ということで自分を納得させる。


 何しろヌートリアは低い位置にいるので、掬い上げる様な振りの方が当てやすい。


 外せば噛まれるので上からの突き刺しで止めを刺す。


 遠心力……遠心力……力は要らない、重さだけ……。


 ヌートリアに集中してたら、いつの間にか少し高い視線に鼠がいて、一瞬体がこわばる。


 その瞬間を見越されたのか、頭突きをするように体当たりをしてくるカピバラ。


 しかし、ただの反射、何を考えてたわけでもなく集中状態から体が勝手に動き、


 カピバラの頭頂部から打点をずらして、側頭部を盾で殴るようにガード。


 ほとんど攻撃みたいな受け方だったが、カピバラはその打撃を嫌って動きが止まる。


 そのまま掬い上げるように剣の真ん中でカピバラの首を捉え、切っ先が皮膚に食い込んだ感触と同時に一気に引く。


 「きゅぅぅぅ……」


 急に可愛い声で鳴くカピバラに集中が切れ、カピバラの陰から出てきたヌートリアに噛みつかれてしまう。


 すぐに剣で突き刺しトドメをさしたが、再びのカピバラ体当たりに、


 ドキッとして再び体がこわばった所にカピバラを突き刺す槍が目の前を通り抜けた。


 「おい!大丈夫かソタロー!」


 「ありがとうガンモ!」


 「別にいいって、気合入れて前線で暴れすぎたから、ちょっと回復休憩だ。ソタローも頑張れよ!」


 ガンモの言葉にすぐに自分の状態も確認すると、結構生命力が減っていた。


 左手の現実時間と一緒に表示されている自分の生命力と精神力、それと状態異常。


 自分でも気が付いていなかったが、いつの間にか異常のマークがついてる。体を簡略化したような図柄だが、なんだろう?


 まあ、そんな重篤な異変は感じないし、もしかしたら仲間内のバフとかかな?これも【座学】で早く教わりたい所だな。


 取り敢えず、ゲームを始めた日にチュートリアルで貰った〔初心者用回復液〕を鞄から取り出して飲む。


 鞄の中身を出してる間に攻撃されないかちょっと不安だったが、周りのNPC【兵士】達が察してくれたのか守ってくれたので無事回復できた。


 その後も、ひたすら飽きるまで鼠を狩り続けていると、


 突然ズドンと大きな音をたてて、恐竜が横倒しになりピクリとも動かなくなった。


 そこで鼠達も正気を取り戻したように大河の方に走って逃げて行き、一気に河辺は静かになった。


 それまで戦ってた者達の荒い息遣いだけ聞こえ、


 ふとNPCなのに荒い呼吸をするものなんだな?と疑問が頭をよぎった所で、


 大歓声が戦闘の終わりを告げる。

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― 新着の感想 ―
[一言] 萎縮かなぁ? 疲労かなぁ? まぁ、見える恐竜の側でねずみ退治はしたくないよね~
[気になる点] もしかして士気低下? [一言] この世界のNPCすげーw
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