46.雪狐攻略からの
毛足の長い純白の毛皮に身を包む、巨大な獣。
雪の白さに溶け込むどころか寧ろ雪よりも白く、その存在感を示してくる。
狐?犬っぽくも見えるけど、でもモコモコの狐か?
まあ、狐といえば狐って感じ。
「いつ見ても立派な北極狐なの」
「確かに北極狐だね~。本来なら小柄の生き物の筈だけど、あそこまで大きいとなんか神聖な物を感じるね」
「え?これから攻撃しなきゃいけないのに、神聖とか言われると」
「ただの白い毛玉なの。遠慮なくぶん殴るの!自然は厳しい生存競争!それを現代人は忘れてしまっているの!」
「そうだね。もし電気も水道も止まってしまったら、山の中に入って鹿でも何でも狩猟して食べなきゃ生きていけないんだからね」
割と品の良さそうな夫婦だと思ってたのに、意外とワイルド&覚悟の仕方が極端。
早速、素早く距離を詰め、突進してくる北極狐だが、まあボスサイズ。
正面から盾で鼻先を殴りつけるように動きを止める。
「ナイスなの!」
そう言って北極狐の目に矢が突き立つ。
嫌がるように仰け反る北極狐だが、そこにカヴァリーさんの追撃。
一瞬の間に連撃を重ねダメージを蓄積させていく。
手数で押すタイプなんだろうけど、相手に反撃する隙を一切与えない高速剣術に目が眩む。
エフェクトが乗ってないって事は術でもなんでもない。素でやってるって事だ。化け物じゃん。
このままじゃいけないと、強引に一撃北極狐の頭を割る。
動き出そうとした所を顎下から盾でかち上げ阻害し、横殴りに顔面を一発。
カヴァリーさんの高速剣術には到底追いつかないが、とにかく一発一発全力で当て、動き出しを妨害。
だが一発一発の重さならビエーラさん。長距離でも軌道がぶれないようにする為なのだろうか、重そうな矢を滅茶苦茶硬そうなバネで射出。
明らかに長い矢が根元まで突き刺さる凶悪性能。人に突き刺さったら体が引き千切れちゃいそう。
あれ?ビエーラさんって筋肉とか言ってたけど、もしかして筋力プレイヤーか?
だって明らかに重量過多のボウガンを担いで、長い矢を射出する絶対重いバネ。
火薬射出では無さそうだもんな。術?にしてはエフェクトも出てない。
つまり筋力で解決してるって事だ。こっちも化け物だった。
あれ?じゃあ重量が軽くて沈まないんじゃないのか?
よく装備を見れば全身白を基調とした女性らしい格好だ。ポイントポイントが毛皮になっている。
勿論足元もだ。
だから、足回りの装備次第って言ってたのか!!実はこの人も重量&筋肉タイプだ!
でも女性に重さを聞くなんて野暮な事はできないので、この事実は心にしまっておこう!
そんなくだらない事に気を取られている内に北極狐を倒してしまった。
「全然活躍できなかった」
「いやいや、いい狙いだったと思うよ。タンクの仕事は仲間に被害を出さない事」
「そうなの、相手の動きを妨害する事に専念してたのは悪い事じゃないの。火力はアタッカーに任せておけばいいの」
「そうですか?まあ相手の攻撃に反応して加速が発動するからタイミング合わせるのは得意な方かもしれないですけど」
「へ~!実はカウンター使いなのか!」
「一発が重いカウンター使い!それはロマンなの!」
「いやでも自分の剣の重さでカウンターを合わせるの結構難しいですよ。コレからもっと重い重剣にしようと思ってるし……」
と、自分の言葉は右から左に抜けて、二人は自分の戦闘スタイルに付いて相談し始めちゃった。
しかしまあ今回の目的は果たしたのであっさり【古都】へと帰還。
もうちょっと色々見てみようとかそういうことは無いらしい。目的に対して最短距離、終わればすぐ次の行動。
何とも淡白で切り替えの早い人達だ。
「じゃあ、後は頑張るの」
「はい!色々お世話になりました」
「自分達の事は気にせず頑張って強くなってね」
そう言って、夫婦仲良くどこかへ立ち去ってしまったので、自分はゴドレンの店に向かう。
「こんにちは!毛皮手に入れてきました!」
「毛皮?」
「はい!装備の足周り用の毛皮です!」
そう言って、雪狐の毛皮を出すと、
「ああ!そう言う事か!分かった分かった。コレならいい物が作れるだろうから、依頼しておくぜ」
「依頼?」
「そりゃ俺は鍛冶屋なんだから革製品は外注だろ」
「あ!なるほど!全部クラーヴンさんが作ってるのかと思ってました」
「いや、!だが信頼と実績のある所に出すから安心しな!それで相談なんだがな」
「丁度自分も相談がありました」
「おっ?なんだ?俺は皮が必要ってことなんだけどな」
「そうでしたか!自分は治療キット用の鞄を作って欲しくて」
「治療キットってのはその腰の鞄の事か?見せてみろ」
治療キットを丸ごと渡し、
「コレなんですけど支給品なので返却して、自分用の物を持ち歩こうかと思って」
「うんうん、コレも革さえあれば作れるぞ。じゃあ服に出来るようなサイズ大き目の皮と鞄用に出来そうな皮を……いや、鞄はこっちの狐の皮の余りでも出来るか……」
「その服に出来そうな皮っていうのは?」
「ああ、前に話してた装備軽量化なんだがな。鉄板で守られてない部分ってのが出来るだろ。だから鎧の上からサーコートを着る形にすれば弱点を狙われづらくなるって寸法だ」
「鎧の上から?服って着れるんですか?」
「そりゃ上から着る用の服だからな。なんなら外套は鎧の上から着てただろ?」
「ああ!確かに!支給装備にも外套ってありますね!フルプレートになってから着てなかったので忘れてました」
皮……皮か~。何かいい物ないかなと鞄をあされば、出てきたのは眠熊の毛皮。
「ああ、いいじゃないか!少しワイルドになるが、イメージは出来た」
「じゃあ、お願いします!」
クラーヴンさんの店は良心価格だし、大丈夫だろう。