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MONOローグ~夢なき子~  作者: 雨薫 うろち
西帝国動乱編
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43.モリーの薬屋

 「カンジキ履きな!」


 ダンジョン攻略のために病毒の薬を買いに行ったついでに、ちょっと雪深い場所で沈まない方法を聞いたらいきなりコレだった。


 「カンジキ便利ですよね。ただ自分は<蹴り>も使うのでカンジキだとちょっと不便なんですよね」


 「雪上歩行系のスキルか術を取得するしかないね。<歩法>は取得したのかい?」


 「いや持ってないです」


 「そいつを取得して後はあんたの師匠なりに聞くんだね。あたしは一般的なことしか分からないよ」


 「分かりましたありがとうございます。それじゃ……」


 「そんな事よりもだよ。あんたのその腰に付いてるもの」


 「え?剣ですか?」


 「じゃ無くて腰の後ろに付いてる袋だよ!」

 

 「ああ、軍の支給治療キットですよ」


 「だろうね!何でそんな大層な物使えるのにさっさと店に来なかったんだい!」


 「え?どういう事です?」


 「この店の名前は?」


 「モリーの薬屋?」


 「そうだよ!そんな薬類持ち歩くなら一番最初に来るべき場所じゃないかい?」


 「いや、薬類とか高いしそんな……」


 「何言ってんだい!信頼と実績のモリーの薬屋だよ!予算に合わせて用意もすれば使い方までちゃんと教える親切心で何代もやってるんだよ」


 「モリーさんって言う名前は世襲制だったんですか?」


 「違うよ!うちの女系は皆薬関係のスキルを持ってて、何がしか薬に関わる仕事をしてるんだよ!やっぱり女手一つで生きてて最後に物を言うのは手に職持ってるかどうかだからね!」


 「なるほど、それは凄くしっかりした考え方だと思います。それは世襲で強制的に?」


 「何言ってるんだい!薬の知識なんていう煩雑な物を強制で覚えられるかい!親や伯母さん達の姿を見て、こうなりたいと思えるから一端の薬屋になれるんだろう」


 は~、ゲームのAIとは思えない立派な考え方だ。これはきっとインプットされた物じゃない。どうやったら、こんなしっかりと自分の生きる道を決める事ができるんだろうか……。


 「ああ、じゃあぜひ自分にも治療キットを見繕ってもらえますか?」


 「当然だよ!それが仕事だからね。ん~まだスキルは取得して日が浅いんだろうね~」


 「何で分かるんですか?」


 「ん?使いかけの薬の残量を見れば、用法用量が適当なのが手に取るように分かるよ」


 「それは、すみません」


 「慣れないうちは仕方ないね。逆にある程度でもちゃんと治療出来るように作られてるのが、軍用だからね。初心者用って言ってもいいかね」


 「じゃあ、当分このまま練習した方がよさそうですね」


 「いや、危険な薬じゃなければ多少量を間違ってても大丈夫だろう。今見繕ってやるよ」


 そう言って、奥からごそごそと薬を出してきて紙袋に突っ込んでいき、そのまま両手で抱えるような大袋を作り、渡してくる。


 「随分と多いですね」


 「まあ予備もあるから腰の鞄から出せる範囲で詰めな。敵に合わせて必要な薬を入れ替えるんだよ横着せずにね。後、鞄はちゃんと作ってもらうんだよ。それは支給品をまとめて入れてそのまま貸し出してる物だから、ちゃんと【兵舎】に返しな」


 「ああ、なるほど。鞄も必要なんですね。それでおいくらになりますか?」


 「まあ【兵士】金が無いってのは有名だからね。普段からお国の為に働いている【兵士】からむしるわけにもいかんし、良心価格にしておくから安心しな。お金は【兵舎】を通して受け取っておくから。何なら必需品の購入品だしいくらか向こうで負担してくれるかもしれないよ」


 「え?軍の仕事で必要な物品て負担とかあるんですか?」


 「当たり前だろ?装備を作ってもらう時とか紹介状を出してもらってないのかい?給金が高いわけでもないのに、仕事で使う物品に補助も無いなんて、暗黒時代かなんかかい?」


 「まさかそんなシステムがあったなんて……ちゃんと兵長に相談してきます」


 「そうだね。【古都】の兵長は何だかんだ面倒見がいいからね。【古都】がいくらど田舎と言っても一応は【帝国】の大規模拠点の一つ。ある意味じゃ【帝国】東部全域の地方司令でもある兵長が一兵卒の為に一々仕事割り振って、適正を見て、分からない事があればちゃんと教えてくれるなんてそうそう無いよ」


 「……???兵長って【帝国】東部の司令だったんですか?」


 「そりゃ【帝都】からの指示を待てないような状況なら、独自の判断で軍を動かして対処するくらいの権限はある筈だよ」


 「なんか【兵士】の人達って階級高くても全然偉そうに見えないからよく分からないです」


 「そんなものだよ。でも甘く見ちゃ駄目だよ。本人達は全く気にしてないどころか気がついてもいないけど、他所の国じゃ【帝国】兵は上に行くほどヒトの域を越えてるって言われてるんだからね」


 「ああ、チータデリーニさんとか熊に抱きついて腕力だけで倒してたし……」


 「はは!そんなの序の口だね。砦を一つ任されるってだけあって実力も人格も十分だろうがね。それでも100人を率いる程度。そこまではまだヒトの域だよ。それこそあんたがこれから相談しに行く兵長だって、それ以上なんだからね……くれぐれも気をつけな」


 「気をつけなって、そんな失礼な事とか言わないですよ……」

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