40.新装備を求めて
ダンジョン攻略で集中的に魔物を倒し続け、大量の毛皮と時折宝箱から金貨や牙やらが出たが、どうせ自分達で使わない物だからと全部売り払ったのでいくらか懐が温かい。
まあ元々装備でも新調しない限りは使う当ても無く【兵舎】に預けてるだけなんだけどさ。
問題はダンジョン2階攻略。
2階から出てくるのは黒地毛の上から灰白色をのせたような毛色の狐だが、状態異常の使い手の上、ダンジョン内の条件が変わって困ってる。
まずは、病毒って言う状態異常が面倒くさい。体全体に悪寒が走ってまともに動けなくなるが、無理に動こうとすれば動けなくもない。
狐自体は倒せるのだが、必ず戦闘後に回復しないと流石に辛いっていう絶妙にいやらしいバランスが治療キットの消耗を加速させ、さらにフィールドに雪が積もっている。
ただでさえ重さで埋ってしまってどうしようかと、装備を変更しようかと言う所に積雪フィールドを用意される。
狭い通路に雪が膝近くまで埋もれてしまう雪。自分以外は足首程度までしか埋らないようだが、それでも動きが遅くなる事は否めない。
そこに狡賢い狐と言う例えの通り後衛二人から攻撃を仕掛けていくので、更に消耗が激しい。
消耗が激しいなら回復薬をいっぱい買えばいいじゃない!懐温かいんだから!とも思ったが、
「いや、ソタロー……収支の合わない攻略をするメリットって何だ?」
「え?分かんないけどダンジョンで魔物倒して来いって言われてるし……」
「まあ修行になるならいいが、狐は強いと言うより戦闘スタイルがはまってないって感じだからな。成長的にもそこまでおいしい相手じゃ無さそうだぞ」
「まあ……そうか」
「それにここのダンジョンはアンデルセンやビエーラが攻略しちゃってるんだぜ」
「まああの人達は先行プレイヤーだし、そりゃ強いとは思うけど」
「それに話によると、この後もひたすら毛皮しか出ないんだぞ!このダンジョン」
「何ならいいのさ?」
「そりゃ【鉱国】みたいに鉱石とかだと嬉しいけどよ」
「でも石の塊みたいな敵ばかりで、鈍器使いじゃないと攻略が難しいんじゃなかったっけ?」
「まあ、そういう意味じゃ重剣使いのソタローは相性悪くないかもしれないがよ。じゃあ懐の温かい内にやる事があるだろ?」
「???」
「装備更新だよ!クラーヴンさんに頼んだよな!忘れてないよな」
「覚えてるけど、案を練るって言ってたじゃん。それにクラーヴンさんだけ、さん付けなの?」
「そりゃよ。アンデルセンとかビエーラは遠い存在って感じじゃん。手の届かない有名プレイヤー。クラーヴンさんは街の鍛冶屋って感じじゃん」
「確かに自分も隊長は隊長って言ってるかも」
「うん、それは役職だからまたちょっと違う気もするがな」
「まあでも、相性の悪い敵が出たわけだし、一旦【古都】に帰ってもいいか」
「急に話が戻るしよ……。まあそういう事だ。クリア者が出ても当分はダンジョンはあり続けるみたいだし、もう少し金になりそうなダンジョン探してくるぜ」
「なるほど、ガンモの装備はお金かかってるもんね」
「まあ特殊金属装備は性能はいいがとにかく耐久が低いし仕方ねぇよ。これも先行プレイヤーに追いつくためと思って、金稼ぐぜ~!」
「分かった。じゃあ一旦ダンジョン攻略パーティは解散で、それぞれレベルアップ目指そう」
と言う事で【古都】に戻り一応【兵舎】にも顔を出したら、自分のダンジョンでの戦いぶりをどうやったのか知られていて、任務報酬もたんまり入った。
たんまりと言っても、チリも積もればのたんまりだけどね。
そしてゴドレンの店に行けば、すっかり落ち着いていたので素直に店に入り。
「こんにちは~」
「ん?いらっしゃい」
「あの鎧の件ですけど……」
「ああ!何だかんだいじって鉄は重いって言う結論に達してたな」
「えっ?!じゃあ、やっぱり支給品みたいなチェインメイルが一番いいって事ですかね?」
「そりゃ【帝国】【重装兵】の標準装備に採用されるにはそれなりの理由があるだろうよ。でも雪に沈みにくくする工夫ってのはあるぜ」
「なるほど!それで何が必要になりますか?」
「話が早いな。全体重量が重くて多少沈むのは仕方ないから靴を軽い物に替えて、多少沈んでも足を抜きやすくするだけでも、かなり違う」
「足回りの軽量化ですか」
「さらに全体の軽量化に伴ってかなり鉄板部分が減るから、攻撃の受け方に気をつける必要が出るだろうな」
「戦闘技術の向上ですね」
「ああ、そう言えば戦闘手段は剣と盾だけか?」
「いえ<蹴り>とか<体当>とかも使います」
「ほー敵を突き放して戦うタイプなのか、体が重いんだから密着した方が逃げられにくいだろうに……、まあいいか。膝蹴りとかも使うのか?」
「え?<蹴り>って膝でも出来るんですか?」
「出来るぞ」
「その辺りも含めて【訓練】してきます」
「おう!それがいいな。並行して沈みにくい靴を作るのに向いた素材があるから狩ってくるといい」
「え?なんでしょうか?」
「重量のあるでかい魔物が何で雪の中でも沈まずに動けると思う?」
「パワーがあるから?もしくは四本足だから」
「そうだな。それにプラスして足が大きくて加重面積が広いほど沈み込みにくいし、毛が長いってのにも意味がある」
「ふむふむ……、つまり雪深いところに住んでる魔物の毛皮があればより良いと!」
「そういう事だ。まあ頑張れよ」
そして、ゴドレンの店を出てふと思う。なんかいつもと様子が違ったかな?