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MONOローグ~夢なき子~  作者: 雨薫 うろち
西帝国動乱編
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39.帝国お茶会

 イベントで現れたダンジョン。


 【帝国】のダンジョンの名前は『色欲』だが毛皮しか落ちない。


 しかし次のイベントに関わるという噂に、ビエーラの火力を魔物を倒す軸に据えて何とかかんとか攻略を進め、今は最奥で休憩。


 「やっと最終部屋なの」


 「流石にきつかったな~。生産職を守りながらこのダンジョン抜けられる奴が何人いるってんだ」


 「アンタ達が弱いだけなの」


 「グフッ……本当きついな。うちの前衛連中だって最近じゃ真面目に【訓練】頑張ってるぜ?」


 「つまり今迄頑張ってこなかったってことなの。やっぱりソタロー君と旦那様に頼めば良かったの」


 「仕方ないだろ。カヴァリーの旦那は【騎兵】だしソタロー君はまだ数ヶ月の新人だぞ?」


 「確かもうパーティは指揮出来た筈なの。タンク役としても【海国】プレイヤーの軽装の比じゃないし十分なの」


 「でも動きの早い最初の黒貂とかさ……」


 「足が遅いのは仕方ないの装備の問題なんだから。寧ろ私とコージァを守ってれば、後は私があの程度の黒貂を仕留めればいいだけなの」


 「まあな。そこに実は馬に乗らなくても軽めの装備で、足も速いサーベル使いの旦那だろ?」


 「シェーベルを降りても普通に嵐の岬の前衛と戦える位の戦闘力はあるの」


 「分かってるよ。隊長といい旦那といい【帝国】の軽装片手剣使いは何であんな強いんだか。隊長と違って紙一重で避ける技術もあるしよ」


 「戦闘スタイルは違うけど結構似てると思うの。何だかんだ言ってもスリルを楽しんでるの。一発貰ったらそれだけで生命力が削られる緊張感の中粘れるだけ粘るのに、疲れるとあっさり逃げるの」


 「勝てるうちに勝っておいて、引く時にさっと引いて、総取りだもんな。ずるいが賢い戦い方だぜ」


 「戦闘スタイルの違いは多分性格なの。旦那様はコツコツ一つの事やるけど、隊長はなんでもやるから」


 「ああ、分かる気がする。クエストしか受けないって言っても、いくつかあるクエストの中から気分で選ぶのが隊長。目的を設定してそこに向けてひたすら続けるのが旦那だわ」


 「さて、休憩はコレくらいにして最後の部屋に入るの」


 一応前衛を任せている嵐の岬(うち)の近接職に扉を開かせれば何の抵抗も無い。


 生産職を連れていないとピクリとも動かない扉なのだが、やはり革職人のコージァを連れてきて正解だったようだ。


 まあこのダンジョンのドロップアイテムは全部毛皮だから、革職人連れてこないって言う選択肢はなかったがな。


 最終部屋は生産に関わる何か。


 【海国】のダンジョンでも最終部屋手前までしか行けなかったが、ふと天啓と言うか隊長の声が聞こえた気がして、扉の文字を読めば<宝飾>に関わるスキルが必要だと分かり、


 俺が抜けて、代わりに生産職をパーティに入れて再突入している事だろう。


 しかし戦闘職が一人抜けるってのは中々負担がデカイ。


 大抵のやつはフルパーティで動いてるだろうし、戦闘職が急に生産をはじめて、更にスキル枠を生産系で圧迫した状態で潜るのもしんどいだろう。


 丁度それくらいの難易度に設定されているみたいだが、ちゃんと【訓練】してない奴らにはきついだろうな。


 それでも、早々にクリアされちまった【馬国】のダンジョンは不気味だ。なんでも肉しか落ちなくて不人気の筈だったんだが、このダンジョン踏破が次のイベントに関わるらしいし、胸騒ぎがする。


 ちなみに踏破されたダンジョンはホームページに乗っているが、誰が踏破したかまでは書かれてない。


 ただ三銃士とか言うパーティ名だけが明かされている状態だ。


 さて最終部屋だが『色欲』か……。


 氷と雪のダンジョンに似つかわしい、総氷張りの空間。全ての調度品が気泡の無い透き通る氷で整えられている。


 部屋奥中央の一段高い場所は、謁見用に作られた玉座の様に見えるが、それもまた氷張り。


 そこに足を組んで座る女性はガウンのような薄着で何とも妖艶……というか幼稚園生としか見えない幼女?


 だろうね~。こういうゲームよ。


 「よく来た。私がこのダンジョンの主、アスモちゃんである!この私を満足させればこのダンジョンのクリアを認めてやろう」


 そう言いながら足を組みかえるが、幼女が床にもつかない足をちょろっと変えたからと言って色気も何もない。色欲とは?


 「フフ……私の魅力に声も出ないか?」


 「子供なの」

 

 「うるさい!邪神様にこの様に作られたのだから仕方ないだろ!ここでは私に合った服を用意できればクリアにしてやると言ってるのだ!」


 「似合うも何もその格好じゃ寒くないの?」


 「寒いわ!この格好のままどれだけ待ったと思ってる!何で邪神様も椅子まで氷で作ったのだ!」


 「その辺の事情は分からんがよ。毛皮で温かい服作ればクリアなんだから、さっさとやっちまおうぜ」


 「もうコージァが勝手に作業始めてるの」


 「早……いつの間に」


 「なんかあの幼女見てすぐにインスピレーションが湧いたみたいで、勝手にここの機材使って何か作り始めちゃったの」


 「勝手にって」


 「コージァも大概なの。諦めるの」


 大概な奴しかいないって本当に【帝国】ってのは……。やっぱりまともな俺がしっかりしなきゃな。


 そして、コージァの作業中暇なので、アスモちゃんも一緒に皆でババ抜きをして時間を潰し、


 出来あがった服は、着ぐるみ?


 よくある子供服の着ぐるみにしか見えない。


 白の毛皮に黒で模様が付け足され、まるで白い虎。

 

 しかし子供向けに可愛くデザインされていて、フードについた耳が何とも愛らしい。


 「わー可愛い……うん!気に入った!コレをやろう」


 そう言って全員に透明な宝石をくれた。


 宝石に詳しくはないが悪い物じゃないだろう。


 そして玉座が動き奥壁に通路が現れたので、その奥に向かうと、暗い空間に黒い板が一枚だけ立っている。


 扉が勝手に閉まり、板から人工的な声で、


 『パーティ名を登録してください』


 とだけ言われたが、このゲームでは珍しいギミックだな。


 それにしてもパーティ名か、ホームページにも晒されるわけだし、おいそれと情報を垂れ流すのも……。


 だからと言ってあまり変な名前にしてもな……。


 「『帝国お茶会』なの」


 「おーい!もう少し考えようぜ~!」


 「こういうのはあまり捻らずにさっと決めた方がいいの」


 『帝国お茶会で登録されました。それぞれのイベント用ダンジョン最初のクリア者は次回イベントの参加権を得る事となります。詳しい内容は後日となります』


 うん、やっぱり次のイベントに関わるって言うか、実質予選って事かよ!

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― 新着の感想 ―
[一言] 白い虎さんの着ぐるみ 次の挑戦者は白い虎さんの着ぐるみを着た、アスモちゃんと対峙する羽目になり、着ぐるみコレクションが増えるのであった……………ww アスモちゃん曰く 寒く…
[一言] 全年齢向け色欲…もしもしポリスメン?ここの運営にヤベーのが居ます。
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