38.ダンジョンリトライ
装備の件はクラーヴンさんがちょっと考えるとの事なので、当面は重い装備のまま。
自由に好きな所には行けないな~と思っていたところで、シラッキーとニャーコンも合流。
そうなれば自然とダンジョン攻略でお互いの成果を見せようって事になる訳で、
久しぶりのダンジョン前宿営地。
皆諦めたのかすっかり閑古鳥が鳴いているが、相変わらずNPC達は待機して商売してくれているので、安心して逗留できる。
しかし、まだ全く誰もいないというわけでもない。
「おっ!ソタロー君じゃん!ダンジョン攻略か?」
「アンデルセンさん!自分達はまだイタチ?のボスを倒すのが目標ですけど」
「ああ、時間制限もあるし中々面倒な相手だよな~。遠距離攻撃でいかに足止めできるかがポイントになるみたいだぞ」
「そうなんですか。やっぱりアンデルセンさん達はクリアが目標ですか?」
「まあな。ちょっと前まで俺は【海国】のダンジョンに籠ってたんだが、最後の部屋の攻略法が分かったんでな。こっちの手伝いに来たわけだ」
「え?折角攻略法分かったのに、向こうはクリアしなかったんですか?」
「ああ~まあ言っちゃってもいいか。生産職を最後の部屋まで連れて行かなくちゃならないんだよ。戦闘職じゃない者を最後まで守って連れて行くってのが、難易度高くてな。でもまあ素材集めだけなら、戦闘の強いパーティを組めばいいんだろうがな」
「そろそろ行くの。ソタロー君も頑張って!なんなら私達と行く?」
「いや、自分は自分でパーティ組んでますので!」
「そうなの?こっちの【海国】の子よりよっぽど頑張ってるように見えるけど、仕方ないの」
そう言って、アンデルセンさんとビエーラさんのパーティはダンジョンに入っていく。
「何だ知り合いか?」
「うん【古都】で集まってお茶会してる変わった人達」
「へ~僻地でお茶会なんて確かに変わってるな」
「いい人達なんだけどね。レギオンボス討伐に誘ってくれたりとか」
「え……?ソタローはレギオンボス倒した事あるのかよ?」
「いや、参加させてもらっただけ、後方支援の人の盾代わりになったり、回復したりとかそれ位」
「それでもいいじゃねぇか~。まあいずれ俺達も主導でレギオンボス攻略とか出来るようになりたいな」
「まあ、まずはダンジョン1階ボスからだね」
そして4人でダンジョンに入り、イタチ?達を倒してボスゾーンに真っ直ぐ向かう。
「そういや、この階の魔物はイタチじゃなくて貂らしいぞ」
「何その生き物?」
「イタチ科の生き物みたいだけどな」
そんなこんな、ボス部屋に突入。
相変わらず子供の落書きのような弓を手に現れる黒貂が、先頭にいる自分に向かって矢を射てくるので、盾裏から<観眼>で黒貂の姿を確認しつつ、矢が当たる瞬間に感覚が加速し、コレ以上ないタイミングで盾で矢を捌く。
一発射って、後ろ向きに滑りながら次の矢を番える黒貂に、シラッキーが矢を放つが、すぐに方向転換する黒貂に、追い討ちの矢を更に射掛けていく。
「術は手に入らなかったが、俺の使う弓は連射が効くから牽制は任せておけよ」
そういいつつも次から次へと矢を放つシラッキー、確かに黒貂が次の矢を放つタイミングを失っている。
シラッキーは【馬国】で何か掴んで来たのだろう。おかげで自分達はどんどん黒貂を追い詰めていく。
「ガンモはさっきから何撒いてるの?」
「これか?撒き菱だな。足裏に刺さって痛いやつだ。数集めるのは骨が折れたが、コレを使えば敵の逃げ場を簡単に奪っていけるからな」
棘棘した実をそこらに投げながら走るガンモ。
自分はひたすら真っ直ぐ黒貂を追い、矢を受ける係。生命力をスキルで補強したおかげか、はたまた攻撃を受けるのに慣れてきた所為か、あまり怯まずに進める。
そして、黒貂を壁に追い詰め、行き場を失った所で、
「行くぜ!ダイスロール!!」
これまで静かに補助に徹した来たニャーコン渾身の叫び!
サイコロを投げて転がしているが、アレが新しい術なのだろうか?
「それで何が出たんだ?」
「来たーーーー!ラッキー7!直観力がアップするでしょう!」
だから?何?
そんな事を思ったのも束の間、シラッキーの矢がバスバス当たり、尽くクリティカル?
黒貂が一発くらうたびに、動きが止まり、大ダメージを受けているようだ。
そこにガンモの槍も加わり一気にこちらに勝負が傾くが、敵も然る者、弓を投げ出しガンモの槍を掴み、そのままガンモを投げ飛ばす。
自分がやっと追いつき剣で斬りつければ、軽々とステップでかわし、更に勢いをつけて殴りかかってきたところを盾で迎撃。
今度は逆の手を振り上げ叩きつけてきたので、あえて懐に入りこみ、
武技 衝突
軽く黒貂をノックバックさせ、動かない一瞬の隙に一太刀あびせ、更に頭を剣で割る。
怯んで動きが止まった黒貂を全員で出来る限りの攻撃を当てつづけ、何とか倒し、部屋の真ん中を振り向けば宝箱が一個。
シラッキーが、罠はずしと鍵はずしのスキルを手に入れていたので、見守っていると……。
箱から緑のガスが噴出し、シラッキーが仰向けに倒れて動かないので近寄れば、麻痺と毒が発生して、なんかピクピクしてるので、
すぐさま自分が治療キットを使い、まずはダメージのある毒を治し、次に麻痺を治す。
いつの間にか宝箱は消えてしまったが、まだスキルが足りなかったのだろう。
「なんとかなったな」
「でもいっぱいいっぱいだったね」
「でもいい練習になったし皆でまた倒しに来よう」
人気の無いダンジョンが当分今メンバーが集まった時の修行ゾーンと化す。