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MONOローグ~夢なき子~  作者: 雨薫 うろち
西帝国動乱編
35/363

34.チータデリーニ

 「いや~ちゃんとヒトを派遣してくれるとは……あまり期待してなかったから休み取っちまったぜ」


 「すみません。なんか行き違いですかね?」


 「いやいや気にすんな。正式な派遣要請できる規模の被害じゃなかったからよ。自分で何とかするしかないかと思ってな」


 「えっと、普段は牧場じゃなく別のお仕事をされてるって事ですよね?」


 「ああ、お前さんと同じ【兵士】だ。所属は【黒の防壁】だな。黒の森から溢れる魔物に対応する仕事だ」


 「すみません。まだ日が浅くて【古都】周辺しか分からないのですが、黒の森ですか?」


 「おう、そうか!一応【帝国】じゃ手強い魔物がうろついてる場所って事になるな。まあ他にも危ない場所はあるんだが、黒の森ってのは【旧都】に比較的近いんでな。都に被害があると不味いだろ」


 「じゃあ、重要な仕事じゃないですか!休み取ったりして大丈夫なんですか?」


 「そりゃ、交代要員くらいいるだろうよ。俺も実家が牧場(ここ)だろ?時には人手が必要な事もあるしよ。嫁さんも預かって貰ってるし、何かあった時くらい休んでも問題ないだろ」


 「そうですか……ところで話は変わりますが魔物っていうのは目星がついてるんですか?」


 「いや!何しろ年中それこそ休む間もなく雪が降ってるから朝には痕跡は全部消えちまうし、夜中に誰かに監視に立ってくれなんて言えないだろうよ。危険な魔物だったら、どうすんだ」


 「それはそうですね。でも普通、夜中は厩舎か何かにいるアリェカロをどうやって襲うんです?それこそ厩舎に痕跡が残りそうですけど」


 「そうだな。その厩舎なんだが壁をぶち抜かれてな。完全に人間技じゃねぇって話になったんだわ。それこそ<精霊術>でも使ったら痕跡が残るからな」

 

 「厩舎の壁がぶち抜かれるって……他のアリェカロは大丈夫だったんですか?」


 「ああ、幸い寒さにも強いし、元々丈夫な子達だ。なんなら生半可な人間が襲い掛かっても返り討ちにするくらいにはな」


 「そうすると……、壁がぶち抜かれて、その物音で……???」


 「時系列に説明するとだな。夜中に大きな物音がしたんだと、ただでさえ雪は音を吸うのにやけに大きい音だったんで、すぐに逃げられる準備をしつつ、弟が一人で厩舎を確認に行ったんだと」


 「え?危険じゃないですか?」


 「ああ、危険だ。でも雪の重さで厩舎の屋根が抜けただけかもしれないだろ。そして様子を見に行くと壁がぶち抜かれて、アリェカロが一匹だけいなかった。夜中に深追いするのもそれこそ危ないんで、諦めたんだと、そして偶に同じ手口のアリェカロ泥棒が出るようになった」


 「偶にですか」


 「おう、それこそ毎日なら軍なり【狩人】なりに依頼するしかないが、偶になんだとよ」


 「なんかそれこそ、ヒトがこそこそ上手い事やっているように感じますね」


 「まあな~。それで、お前さんはどの程度戦えるんだ?」


 「一応【古都】周辺の魔物は日頃から倒して回ってますが、どの程度って言われると基準が分からないです」

 

 「なるほどな。ちなみに戦闘スタイルは?」


 「重装備に中盾と片手剣です」


 「ちょっとフルセットで見せてみな」


 との事なので、フルプレートを装着し剣と盾を持って立つ。


 「こんな感じですけど……」


 「なるほどな雰囲気はあるわ。でもその装備だと雪に沈むだろ」


 「はい、それでさっきアリェカロに助けてもらいました」


 「はは!なるほどな。プレート装備自体【帝国】じゃ珍しいが、まず装甲の量を減らして他は

チェインで補強位がいいだろう。どこ打たれても大丈夫な装備じゃ雪国は歩けない。どこを打たせるか自分でコントロールできるように【訓練】した方がいいな」


 「どこを打たせるか……」


 「まあその辺は教官と相談しろ。後は重量装備にするなら靴をもう少し工夫するんだな。まあ今回の泥棒討伐は厩舎内を任せるぞ。狭いかもしれんが、その重量装備で敵を外に追い出す役を任せる」


 「分かりました。ぶつかり合う【訓練】ならここの所ずっとカピヨンさんにはたき飛ばされてましたから」


 「なんだカピヨンとも知り合いなのか!あいつは見た目も能力も一つ頭抜けた男だからな。こいつは思った以上に期待できそうだな」


 そんなこんなアリェカロ泥棒討伐の話を進め、


 相手は偶にしか出現しないという点から、長期戦になる可能性が高いと当面は泊めてもらえる事になり、


 夜間厩舎で【警備】に立つ事になった。


 後は自分のログイン時間のタイミングで敵が来てくれるのかどうか。クエストなんだから都合よく来て欲しいな~。


 そして話もきりのいいところで、


 「ご飯よ~二人とも話してないでリビングに来なさい!」

 「アンタもアリェカロのご飯ばっかりじゃなくて自分のご飯の時間よ!」


 と奥さん達の声。


 「えっと、自分もいいんですか?」


 「まあ、金も何も払えん仕事だし、飯と宿くらいは保障するぜ」


 そして二人並んでリビングに向かう途中、ふと大事な事を忘れていたのを思い出した。


 「自分はソタローと申します【古都】の【下士官】で今度20人率いるように言われたばかりです」


 「そうかそうか!俺はチータデリーニ!【黒の防壁】の【士官】で中隊長だ。万年、砦守備の田舎者だがな」


 「ええ!完全に上官じゃないですか!」


 「まあ、率いる人数が違うだけだからあまり気にするなよ」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] はたして人なのか魔物なのか [一言] 重装備すぎると雪には埋もれるのね 特殊金属…w
[一言] ずぼっ は、さすがに雪国だと駄目なんだね~
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