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MONOローグ~夢なき子~  作者: 雨薫 うろち
西帝国動乱編
297/363

296.【兵士】は改革に前向きらしい

 何も納得できないまま、取り合えず【輸送】任務に出てしまった。


 正直ちょっとゆっくり考えたかったのだが、


 「考え事は歩きながらした方が、陰に向わないし、健康的だぞ?」


 と言う兵長からの言葉で、ついそのまま任務を受けてしまった。


 何でも知ってそうなのに、そんな事をおくびにも出さずに任務を受けさせる兵長のやり口には敵わない。


 「なぁ、ソタロー!筋肉が重いのはいつものことだが、指揮官の足がそんな重いと、周りも不安になっちまうぜ?」


 「ああ、ごめんチャーニン。ちょっと考え事をしててさ」


 「そうだよチャーニン!ソタローはもうこの国を代表する身分なんだから、考えなきゃいけない事もいっぱい有るんだから、邪魔しちゃ駄目だよ!」


 「だ、代表!!!」


 「え?おう、どうしたんだ?そりゃ大隊長なんて言ったら、本来【将官】並みの権力者だし、当たり前だろ?なんでこんな普通の【輸送】任務なんか受けるんだか」


 「戦うばかりが軍の仕事じゃないし、別にいいじゃん。カトラビ街なんて【帝国】北部の辺境地の一つなんだし、そういう場所に【輸送】するのも仕事の内じゃん」


 「うん【帝国】北部のチーリィ川沿いにある盆地の街だっけ?」


 「そうだな。かつて都市国家群だった頃には、難攻不落の天然の要塞都市だったらしいぞ。何しろ北部とは言え東西に別けた時には【帝国】の中央に位置するから、そこを落とさずにはいられないけど、落とすのには大層な犠牲を払ったって話だ」


 「本当にチャーニンは戦争の話だけは詳しいよね。【兵士】が性に合ってるって羨ましいよ本当に」


 「まあな~。男に生まれたからにはシンプルに強くありたいって思うのは普通じゃないか?まあソタローには逆立ちしても勝てそうにないけどさ」


 「ふむ、うちの幹部って皆農家出身だけど、もしこの国が工業重視の国になるから農家やめろって言われたらどう思うのかな?」


 「ああ!国務尚書の産業改革案の事を考えてたんですね!やっぱりソタロー位になるとそういう国の舵取りにも関わってくるんですね!自分としては絵の勉強を続けさせてもらえるのなら、何にも問題ないですね!寧ろ今より豊かになるって言うし、絵の需要が高まれば尚ありがたいですね」


 「俺は別にどっちでもいいな。多分改革しようがしまいが、魔物がいなくなる事はないんだから軍がなくなることもないだろうしさ」


 と、スルージャとチャーニンは何気に改革案の事ちゃんと知ってて、概ね肯定的らしい。


 「他の三人はどうなの?皆も農家出身だよね」


 「その改革案は確認しましたけど、氷麦は【帝国】特産品の一つとして保護されるらしいですし、その輸出方法の一つとしてパン製造も上げられてた事から、パン職人に転向する道筋も用意されると聞いてるので、場合によってはそのルートに乗ろうかと」


 ムジークの夢はパン職人だし、確かに特に損は無いのか。


 「自分は軍の年季が明けたら【狩人】志望ですし、特に何も変わらないと思います。守るのが農家になるのか工場になるのか、いずれにせよ軍の手の回らない地域で魔物狩りしながらのんびり過ごしますよ」


 クラークはチャーニン同様どっちでもいいと……。


 「ミールは確か、農学者志望だし、農業がこの国の中心じゃなくなると困るか……」


 「いえ、全く困りません。農業自体がなくなるわけじゃないですし、寧ろ農業を専門的な職業としてくれた方が勉強のし甲斐があります。素人でも種を蒔けばいいという物じゃないんです。作業効率を見直して、一人当たりの作付面積を広げる。何なら会社などを通して、今の食べていく為の家族性農業から産業としての農業へ変化してもいいと思います。【帝国】の独立の気風を土地所有と混同している現状は確かに国を貧しくさせてますし、特産となる農産物の開発ももっと盛んになるべきです。工業は安定的な質の物を大量生産する方向に進むらしいですが、逆に農業の方はこの極端な寒冷地に適した農産物を作る事で差別化をはかり、ブランド化していく方向もありじゃないでしょうか?そもそも……」


 ミールは賛成派らしい。何かまだ話してるけど、ちょっとよく分らないから放っておこう。


 こうなると、現場【兵士】や農家のヒトも別に産業改革案に対して、そこまで悪い感情を持っているわけじゃ無さそうだ。


 そうなると、やっぱり皇帝が保守的過ぎるのが問題なのか?どういうヒトなのかさっぱり分らないけど……。


 「でも、その案って皇帝陛下が却下したんじゃなかったっけ?」


 「ああ、食料自給率と戦力保持の問題だよな。いくら邪神の化身を倒したばかりで当分は平和な期間が続くだろうと予想出来ても、そこに何の保証もないからな」


 チャーニンとスルージャが、自分の知りたい情報をちゃっかり知ってるっていう。


 「でも戦力については、ある程度ニューターを当てにする事が出来るから、問題ないって聞いたんだけど?」


 「まぁ、確かに邪天使討伐に関しては前線を張っていたのがニューターだし、その通りだとは思うけど、国への帰属意識の低さが問題なんじゃなかったか?」


 「ああ!そうそう!個人やニューター同士の繋がりに身を置く人が多いから、ソタローなんかは結構特殊なタイプなのかもね」


 なるほど、確かにゲーム側つまり国から仕事は請けていても、帰属意識はクラン単位だったりとかするもんな。


 例えば『うち』って言い方をした時に、クランを現す人が大半だ。確かに軍に所属する戦力と言う意味ではネックかもしれない。

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― 新着の感想 ―
[一言] まっすぐ行ってぶっ飛ばすと決めた隊長と面倒な悩みを抱えさせられた主人公。やる前から勝負は見えとるわなぁ。
[一言]  普通なら、『知ったことか、勝手にやれ』で済ませていいところ、悩んで結論を出そうというだけでも真面目ないい人っぽい。でも、戦犯なんだからその責任についてもしっかりと取ってほしいですね。そこを…
[一言] まぁ、本来、プレイヤーは、ゲームに来てるから、国に勤めに来てるわけじゃないからね~(゜ー゜)(。_。)ウンウン
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