28.ダンジョンはまだ早い
「作戦を考えよう」
「まあ、そりゃそうだな。まずはお互いの手札を晒すか」
「異議なーし。隠すほどの特殊な手札なんて無いもん」
「俺は<火精術>だけだぜ?後は術ブーストする様なスキルと装備構成。なんも特殊なものじゃないぜ」
「自分も見ての通り重装備とそれを装備するスキルかな。多少【兵士】クエストで必要な物も取得はしてるけど基本的な物ばかりだと思う。強いて言うなら<戦陣術>かな」
「センジン術?なんだそりゃ?」
「ああ、集団戦用の集団バフ用術スキルかな」
「でもそれがあれば、全員一斉バフを掛けられるわけか」
「まあね、でも士気系のスキルが無いと、気持ちが高ぶって暴走するよ?自分は前そうなった」
「なんか聞いてばかりで悪いんだが、士気って何だ?」
「戦闘が始まると徐々に高まっていくみたいなんだけど、敵と味方で差がありすぎると状態異常になったりするんだって、その士気を媒介に術を使用してバフをかけるのが<戦陣術>って聞いてる」
「聞いてるって……使えるんじゃないのか?」
「取得はしたけど使う機会が無い」
「一考の余地はあるか。逆にソタローの聞きたい事って何かあるか?こっちばっかり聞いてても悪いしな」
「逆に<戦陣術>以外の術を知らないんだよね」
「なるほどな。一番基本的なのは<精霊術>だな」
「ちょっとだけ聞いた事ある。なんか属性術でしょ?」
「そう言うこったな。世界には精霊って言うのがいて色々司っている訳だ。そしてその精霊の力を借りる術らしい。まあゲームやった事ある奴なら一番想像しやすい魔法って事だな」
「じゃあ<火精術>に付いて説明すると、火の術だな。攻撃に使えばダメージ量が高くて追加効果は火傷によるスリップダメージ。武器に火を付加したり、玉にしてぶつけたり、矢状にしてぶつけたり」
「その形が変わる事に意味はあるの?」
「攻撃範囲とか着弾までのスピードとか、当たった時のダメージの発生の仕方とかかな。ちなみに味方の補助術もあって、身体能力上昇だな」
「じゃあこの中で足の早い人にその補助術を使えば、少しはイタチに追いつきやすくなるかな」
「ガンモに使ったが、結局追いつくのは無理だったな」
「そう言えば、武器術もあるって聞いてるけど、二人は持ってないの?」
「駄目だな。道場は攻略にもあるにはあるんだが、現状門前払いだ。基本をもっと積んでから来いってな。ステータスが足りないのかね?一部の【王国】プレイヤーは入門できてるんだがな……」
「そっかシラッキーが弓術とか使えれば、もっとダメージが出るか持って思ったけど……」
「悪い……遠距離攻撃使いの俺が鍵なのは分かってるんだけど」
「いや、責める気は無いよ。簡単に都合よく行く事なんて無いし、何か考えよう」
………。
何にも思いつかない。なんとか足止めが出来れば、いいんだけど。それが思いつかない。
「駄目だな!ちょっと修行しようぜ。多分俺達みたいな新人プレイヤーで太刀打ち出来る相手じゃなかったって事だ」
「修行か……、具体的にどうするの?」
「まず一個思ったのが、ソタローはやっぱり装備の割りに回復の回数が多いだろ。もしかして生命力補正アビリティとか持ってないんじゃないか?」
「いやいやいや、タンクなんだから生命力とか最優先だろ。流石にソタローだって……」
自分のスキル構成を考えて、顔が青くなっていくのを感じる。
「まぁまぁまぁまぁ!俺達まだこのゲームはじめて数ヶ月よ。ちょっと位手落ちはあるさ」
「そうだよ。生命力だったらスキルじゃなくてもアクセサリーとかでも補正できるし、まずはそっちから試したらどうだ?」
「それ、どこに売ってますか!」
「まあ装飾系になるから【鉱国】か【砂国】だな。だが宝石は高くつくが、先立つ物はあるのか?」
「この前の大会の賭け金がいくらか」
「ああ、大穴だったし、それなりの額になったんだろう?じゃあアクセサリーで補正しよう。それで万事解決じゃん」
「それだと一時しのぎにしかならないだろ。そうだな……多分<鎧>と<重鎧>は合成しちまったんじゃないか?」
「よく分かるね。正解」
「まあそこは基本スキルだから、何となく分かるだろ。あまりスキル構成詮索するのが良くないが、もし<軽甲>とか使う予定無いなら生命力のアビリティを取得して、早めに育てて合成するのがいいかもな」
「なるほどね。使わないスキルを使うアビリティ用にしちゃうのか。そうすれば多少合成間違っても後からなんとでもなる」
「そういうこと、後は【狩人】の俺は罠系をちょっと探ってくる。それで足止めできれば少しは違うだろ」
「じゃあ、俺は【馬国】に帰って弓術探してくるか、何しろ俺のダメージ量で話が変わってきそうだし」
「俺は……<火精術>以外の補助術に付いて調べてくるか【砂国】に行けば色々あるって話だしな」
「よし、目標が決まったところで、それぞれに修行。このダンジョンがいつまであるのかはインフォメーションがないが、目標はあのイタチを倒す事。その後の事は倒せてから考えるって事で!」