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MONOローグ~夢なき子~  作者: 雨薫 うろち
西帝国動乱編
289/363

288.温泉遠征

 装備はクラーヴンさんに預けている為、久しぶりの支給装備でお出かけだ。


 ブーツにコートに手袋に雪鳥蜥蜴の胴当て、雪鳥蜥蜴の冑、金属と木を組み合わせた丸盾、鉄のロングソードと【兵士】達が背負う基本道具セットが詰まったリュック。


 何か懐かしくなるというか、初心に返るというか……。


 今までより圧倒的に性能の低い装備の筈なのに、妙にしっくりくるし、自分自身の力や出来る事を等身大で感じる事が出来て、地に足がついた気持ちになる。


 重剣一発で魔物の頭を潰す事はできないだろう。


 代わりに剣筋を通して、丁寧に引き割りきっちりダメージを与える。正に【訓練】の構え!振れ!をやり直す。


 敵の攻撃を力づくで盾で殴り返して、ひっくり返す事は出来ないだろう。


 しかし、当たり所を合わせて盾に負担をかけずに受け止めかわし、その上で攻撃の向きをずらしてやる事は出来る。


 自重で沈まない分<蹴り>が出しやすく、攻撃の隙を作らないように積極的に使っていけば、貰うダメージ量が相対的に減る。


 脳筋の称号を得たとは言え、やはり基本は大事だ。無駄なダメージを減らし、適切にダメージを積み上げる事が、どれだけ重要か?


 装備に頼れない状況にあえて身を置く事で、あらゆる動作、反応が整っていく。


 今回はある意味自分にとって先輩に当る4人とのパーティ行軍。


 【歩兵】スペーヒさん、【弓兵】ルークさん、【偵察兵】ルースィさん、【衛生兵】カピヨンさん。


 皆最低中隊長以上の役職にあるヒト達なので、パーティ陣形は使っていない。


 それでも、このヒト達は相当に強いので、そこらの通常魔物程度では警戒させる事すら出来ない。


 向うのは【帝国】北辺の本当に何もない不毛の地なのだが、温泉なんて本当に湧いているのだろうか?


 通り沿いに少しばかり大きめな蠍が、雪に埋もれて隠れている。


 油断している訳ではないが、体の状態調整の為にちょっと戦ってみたい。


 4人をチラッと見ると、皆頷いてくれるので、盛り上がる雪に近づいていくとユニオン級の蠍が出てきた。


 まだ【熟練兵】として北砦に配属された時に事を思い出すが、いくら装備があの頃と一緒でも、あの時とはステータスとスキル熟練度が違う。


 蠍が鋏で身を守るようにしながらタックルしてくるので、こちらも盾を構えて、


武技 盾衝


 ユニオンとぶつかり合い、体重差で雪の中を転がされる。


 ただ、蠍も上半身が仰け反り、蠍の腹部にルークの矢が突き刺さった。


 蠍が体勢を立て直す間もなく、カピヨンさんの鈍器の一撃が足を一本つぶし、スペーヒさんの槍が甲殻の隙間を突く。


 蠍の尻尾が自分の頭上から襲い掛かってきたので、盾で打点をずらすように受け、蠍の目に剣で斬りつける。


 いつの間にかルースィさんが蠍の頭の上に乗り、大型ナイフで頭上部を突きまくっていた。


 暴れる蠍だが、ルースィさんは気にした様子もなくさそりの上部でバランスを取って攻撃を続ける。


 蠍を囲みこんで、ひたすら攻撃を続ける内に、ひっくり返って動かなくなってしまった。


 「何か久しぶりに戦いましたけど、ちょっと物足りないですね」


 「でも、ソタローには丁度いいんじゃないですか?動きが少し良くなってましたよ!やっぱり基本に戻って丁寧に動く【訓練】がソタローには必要だったって事ですよ!力づくで大暴れして、敵を圧し返す戦いを続けてきたツケです。ここは一つ調整だと思って、丁寧に正確に敵の弱点を突く戦いをやってみましょう」


 言われる通り、戦闘になると余計な力みが消えて、ここ!と思う場所に剣を振るう事が出来る。


 筋肉は必要だが、余計な力みはいらない。


 力を振るうという事は力むという事には非ず。


 どこまでも腕や剣が飛んでいくかのように、軽やかに振るえばスピードが乗る。


 そして自分の筋肉なら、スピードが乗った剣の跳ね返りも、余裕でコントロールの範疇だ。


 そう、筋肉を信じて力を抜ききる。どんなに力を抜いても自分の筋肉はあらゆる衝撃を吸収してくれる筈だ。


 自分が生み出せるパワーは自分の筋肉が全て受け止めてくれる!


 そう!筋肉がパワーじゃない!生み出されるパワーから身を守ってくれるのが筋肉だ!


 「突き……抜けろ……」


 偶々襲い掛かってきた雪鳥蜥蜴の喉を軽く剣先で突き破り、一振りすればそのまま横倒しに……。


 「掴んできましたねソタロー!目的地はもうすぐです」


 カピヨンさんが言う通り、渓谷の川を渡り、対岸の崖の上り口から坂を上がれば北辺の地。


 相変わらずただ雪が積もるだけの、不毛の地。


 赤竜の化身が封印されていた場所を目指して進む。


 今回は別に戦う事が目的じゃないし、少しばかり気が楽だ。白い地、透明な木々達、灰色の空。


 漂う霧?


 こんな何もない場所で霧が出たら、危険か?と警戒していたら、何かちょっと独特の匂いが漂ってきた。


 「あれ?もしかして、温泉が近い?」


 言った時には、湯気が濛々と吹き上がる地点が視界に入り、黙って全員で近づく。


 そこには紛れも無くお湯で出来た池が出来ていて、多分これが温泉なのだろうと言わずとも分るが、じゃあ誰がどうやってこの温泉を調べるのか……。

 

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[一言] みんなで温泉にダイブ?
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