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MONOローグ~夢なき子~  作者: 雨薫 うろち
西帝国動乱編
284/363

283.またもや逃走

 「NI・GE・TA?」


 「ああ、何か今回の邪神の化身戦で活躍できなかった奴らなんかが急に押しかけてきてな。隊長のイライラワードを連呼して、やだなーやだなーって思ってたら、隊長もちょっと大人になったのか、はたまた逃亡生活で逃げ癖がついたのか、あっという間に何処かに行っちまった」


 元々、邪神の化身に負けると神側であるプレイヤーに不利な世界に、勝てば有利な世界になるという話は聞いていた。


 そして運営から大型アップデートの予告が出た事で、本格的にこのゲーム始まって以来の大きな変更が加えられる事が現実となり、世界変遷級ボスの重要性を実感したばかりだ。


 それは自分だけじゃなかったのだろうが、なんでまた隊長を詰める様な事をしたのか……。


 アンデルセンさんの、やだなーやだなーじゃないけど、あの人の事だし下手したら全員斬るとか言い出しかねないのに。


 「まあ、他人を斬って根深い問題にならなくて良かったですよ。でもアンデルセンさんはよく大丈夫でしたね?実質今回No.2だった訳じゃないですか」


 「俺はほら知り合いも多いし、上手い事とりなして貰ったから、大丈夫だ。なんで次に大変なのはソタローだと思って、こうして忠告しに来たんだ」


 「忠告しに来たんだって言われても、どうしろと?」


 「アップデートさえされちまえば、皆それぞれに動き出して忙しくなるだろうし、それまで身を隠すのがベストだ」


 身を隠すって、それこそ隊長じゃないんだから自分にそんな隠蔽能力とか逃走能力なんてない。


 つまり、はじめこそ逃げたと聞いて隊長が何やってるのだろうと思ったが、逃げるのがベストだったって話だった。


 「ど、どこに隠れよう」


 「もし、アレなら嵐の岬(うち)来るか?うちなら見知った奴らも多いし……」


 「ちょっと待ちな!ソタローの第二の拠点って言ったら【闘都】だろ!ならコローナファミリア(うち)に来たらいい!」


 どこで嗅ぎつけてくるのか、ガイヤさんまで現れ誘ってきた。


 「いや、いつもいつもガイヤがソタローを独占するのはズルイだろ」


 「何言ってんだい!ソタローは【帝国】プレイヤーなんだから【海国】は暑すぎるだろ!」


 「だったら偶にはソタローも六華(私達)の狩りに参加するの。いつもNPCとクエストばかりしてたら、隊長になっちゃうの」


 ビエーラさんまで……。


 「待てい!ソタローは俺達と闘技に参加して、正式に正義の司令官としてデビューするんだ!」


 「それは可哀想だろ」

 「ソタローには鉄壁の不屈って言うリングネームが既にあるっての」

 「ソタローは皆の指揮官なんだから独占は駄目なの」


 ヒーローが出てくるなり、一斉に却下されてて助かった。


 いずれにしても自分は、いい人たちに囲まれてるし、何とか数日しのぐのは問題なさそうだ。


 「まあ待て、ソタローはどうしたいんだ?仮に追われないとして、何する予定だった?」


 「一応【古都】に戻って報告しつつ今回の報酬を決めて、あと奥義について聞こうと思ってました」


 「へ~ソタローもついに奥義に辿り着いたかい!それなら奥義が優先だね!」


 「奥義なの?隊長もそんな事言ってた気がするけど、そんなに凄いの?」


 「奥義って何だ?」


 ガイヤさんは奥義について知っているか、もしくは既に取得済み。ビエーラさんは奥義の事を聞いたことある程度、ヒーローは全然知らない。


 「奥義ってのは師についてる近接戦闘職連中が稀に教えて貰えるらしいが、別に大技とかそういうのじゃないんだろ?」


 「そうさね。言ってみれば体の使い方や心の置き所みたいな曖昧な概念なんだけど、理解できれば次元が上がる」


 ガイヤさんの言葉を聴いた瞬間、何故か背筋が粟立つ。


 何でだろうか?これを取得すれば確実に一段自分が強くなるという確信?ピクピクと反応する全身の筋肉。


 この感じは……自分は既に知ってるという事か?ただそれを奥義として自覚して無いから、開放し切れない?


 己の中に没入する感覚、何か思い出せそう……。


 「(なあ?ソタローが何かピクピクしてるけど、大丈夫か)」

 「(やめておきな、無粋だよ。何か掴めそうな時ってのはこういうもんさ)」

 「(本気で集中してるの。そういう時は己の姿を忘れてしまうのも仕方ないの)」

 「(か、覚醒するのか!正義の心が!)」

 

 「き……筋肉を信じる?」


 「やっぱり大丈夫か!ソタロー!」


 「さすがは脳筋の称号を得ただけあるね。自分の奥義を自覚して完全に理解し使いこなせれば、迷いは無くなるよ」


 「ソタローらしいの。結局筋肉なの」


 「司令の筋肉が覚醒してるのは今に始まった事じゃない」


 どういう評価なのかよく分らないが、何かストンと腑に落ちてきて、どこか浮ついた焦りの様なものが消えた。


 「決めました。自分はこのまま真っ直ぐ【古都】に帰って報告します。もし何かあっても筋肉で解決します」


 「う、うん。うちのボスとかは筋肉嫌いじゃないと思うぜ」


 「じゃあ、報告が終わったら闘技だね。脳筋と戦いたい上級【闘士】も待ち構えているさね」


 「確かに筋肉は大事なの。もっと鍛えるの」


 「筋肉タイプの司令か~新しいな!」


 そして、単身近くの都まで向かい、そのままポータルで【古都】へ帰還。


 途中話しかけてこようとした人はいたが、結局何事も起きなかった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 筋肉で考えるソタロー(笑) そうして、未成年に酒を飲ませようとする成人 駄目な奴しかいない……………
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